間話① ウルファスとホワイティ
6話の後半のウルファス視点を書いてみました。
レオンダイトがキーン婆さんと執務室で話している時別の場所ではこんな事が起こっていた。
【ウルファス・レアンドロ視点】
兄上に応接間に案内した白狼の親子を客間に案内せよと命じられてからというよりその前からウルファスはルンルン気分だった。
ウルファスはホワイティを初めてみた時に一目惚れしたのである。
そういう感情になった事は今まで一度もなかった。
兄上が奥方様と出会った時に心がトキめいたと言っていたのがまさかこの歳でわかるなんて、だがホワイティは兄上と血の契約を結んでしまっているらしい。
血が近くなってしまうがこの気持ちの高鳴り、トキメキは止められそうも無い。
「あぁ、俺は一体どうしたら良いんだ」
そんなことを呟きながらホワイティ親子のいる応接間に向かう。
応接間の扉をノックし中の反応を待つ。
「はい、どうぞ」
その可愛らしい声を聞くだけでウルファスは有頂天になる。
「ホワイティ様・アリッサ様、兄上より今日のところは客間にてゆっくりお休みになるようにとのことでございます。ご案内いたしますのでついてきてもらっても構いませんか」
「えっルーカス?」
「ルーカス?あっこれは失礼いたしました。俺はレオン兄上の弟でウルファス・レアンドロと申します。ここで宰相の仕事をしています」
「貴方のそのお姿はひょっとして狼族の方なのかしら」
「えぇ俺の母が狼族の1つである黒狼で、レオン兄上のお父上である吸血鬼の父との間に産まれた。混血吸血鬼です」
「まぁ、そうなのね。貴方があまりにも亡くなった主人に似ていたので、主人が生きていて黒狼に同化していたのではと驚いてしまいましたわ」
ホワイティは俯いて涙をポロポロと零していた。
ウルファスはホワイティの隣に座り、泣いているホワイティを胸に抱き寄せ
「辛いことを思い出させてしまい申し訳ございません。俺が貴方の大好きだった旦那様の代わりになるのでしたらいくらでも俺の胸で泣いてください」
そう言いホワイティが落ち着くまで胸を貸していた。
「ウルファス様、胸を貸していただきありがとうございます。その胸板も主人に良く似ています。本当に目の前に主人が生き返ったのでは無いかと思うほどに」
「貴方が旦那様のことを思っている限り貴方の心の中で旦那様は生き続けますよ。慰めにもならないかもしれませんがきっと生き続けます」
「ウルファス様はとても優しいお方ですね。そんなところも主人にホントそっくりです」
「ウルファスで良いですよ」
「貴方の旦那様より先に俺が出逢っていれば貴方にこんな悲しい思いはさせないのに」と呟いた。
「それはどういう意味?」
あっしまった狼族は耳が良いのだ。
どんなに小さい声でも呟くと聞こえてしまうことを失念していた。
嫌われるかもしれないがこうなったら覚悟を決めて正直に言おう。
「えっと、俺は玄関先で貴方を初めて見た時から恋をしています」
「えっ私に恋を?そんなその言葉はとても嬉しいです。主人にそっくりなウルファスが私のことを好いているなんて、それなら白狼の伝統に挑戦してみませんか?」
「えっ、それはひょっとして白狼と結婚したければ決闘にて打ち負かすというあの噂でしょうか?」
「他の狼族の方にはそう伝わっているのですね。白狼はとても数が少ないので番いでいないことの方が少ないのです。それに多くの狼族に求婚されることが多く、強い種を残すために旦那となった方は一度も他の狼族に負けられないのです。私の主人も幾度となく私を奪おうとする狼族を倒してきました」
「なるほど狼族は負けた相手には2度と挑まない。群れの上下関係を決める時にも行われる事が白狼ではそういうふうになっていたのですね」
「えぇ、なので私を手に入れたければ主人を倒さないと行けないのです」
ホワイティはクスクスと笑った後一言。
「ウルファスはもう主人に勝ってるかもしれませんよ」
「えっそれはどういう」
「主人が言ってたことを思い出したんです。『昔吸血鬼一族とやり合った時にその中にいた自分に似ている狼族の黒狼にボコボコにされたその黒狼はできれば同族を殺めたくは無いここで痛み分けとしひいてくれぬか』と更に『あいつにならホワイティのことを託しても良い』ってこれはひょっとしてウルファスのことでは無いですか?」
ウルファスは記憶を辿るように思い出しながらあっあれは確か純血戦争の際エルフェアリーナ王国側の援軍として現れた狼族の混合軍を迎え撃った際に出逢った1人の狼族の男を思い出した。
「そんなまさかあの時の灰狼が貴方の旦那様だったとは不思議な縁もあるみたいですね」
「うちの主人は、その時は灰狼に同化していたのですね」とホワイティはクスクスと笑い続けて「いえ今にして思えば村にウルファスの兄上であるヴラッド様が現れ私を助けてこの居城に連れてきた。それも含めて全て主人の私とアリッサを守りたいという思いの強さが具現化したのでは無いかとさえ思います。主人の思いに応えるのならこんな私で良ければウルファスの隣にいさせてくださいですかね」
「ホワイティのことを貴方の旦那様の代わりにこれからは俺が守ります。落ち着いたら2人で貴方の旦那様の眠る村に村の人たちの墓を作りホワイティとアリッサのことは俺が守りますと挨拶に行かないと」
ホワイティはそんなウルファスを愛おしそうに眺めて
「主人のことだけでなく村の人のことも考えてくださりありがとうございます。えぇ必ず共にこの出逢いを下さった主人に挨拶に行きましょう。でもその前に私とアリッサのことをウルファスに愛してもらわないとですね」
「俺は身命を賭して、ホワイティを一生愛しホワイティとルーカスの子供であるアリッサのことを守ることを誓います」
それを聞きホワイティはウルファスのルーカスのことを忘れなくて良いそれもひっくるめて丸ごと愛すという気遣いに涙を浮かべながら
「はい、末永くよろしくお願いします」
と言った。
気の抜けた感じでウルファスが「あっすっかり忘れてた。客間に案内しますね。ホワイティ、アリッサ」とアリッサの頭を撫でホワイティの手を引いて客間に向かう。
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