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その『悪役令嬢』は幸せを恋い願う  作者: 玉響なつめ


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第34話 大人しく去ってくれて良かったとは思うものの

「アベリアン殿下が……?」


 私は思わず目を瞬かせました。


 確かに、ワーデンシュタイン公爵領は王都からそこまで離れた土地ではありません。

 ですが学生で、使える私費も少ない殿下がわざわざやってくるとは何事でしょうか。


 もちろん、先触れも約束もありません。


(……お父様が外出中なのを狙ってなのかしら?)


 私に会いたいと名指ししているという点で、思わず眉間に皺がよるのを感じてしまいましたが……とにかく、どうするべきか。

 本来でしたらいくら王族の方とはいえ約束もありませんし、先日の件もあってできる限り接触は避ける方がお互いのためであることは明白です。


「お約束のない方は断って構わないと旦那様から申し付けられていますが、相手は王族です。いかがいたしましょうか」


 侍女が困っているのも、その点なのでしょう。

 お父様は私のことを考えて、醜聞が落ち着くまでは基本的に約束を取り付けた相手以外とはやりとりしないでいいようにしてくださっているのですが……。


 あの一件以来、少々無礼な客人が増えたとお父様は笑ってらっしゃいましたので……おそらくワーデンシュタイン公爵家を軽んじる方が増えてしまったのかもしれません。

 とはいえ、家人が頑張ってほとんどの相手を追い返してくれていたのだと思うと、私としては申し訳ない気持ちでいっぱいです。


「レオン」


「俺が応対してきましょうか」


「……いいえ。おそらく殿下は私が出て行くまで粘ることでしょう。これ以上騒がれて妙な噂が立っても困るから、門扉まで私が行きます。……でも、ついてきて」


「わかった」


 一人で相対する気はありません。

 できれば穏便にお帰り願いたいですが……そうは行かないからこそ、殿下もわざわざこちらへ足を運んできたのでしょうね。


 もしかすれば、事前に約束を取り付けるために幾度か手紙をよこしていたのかしれませんが……私が見る前にお父様が片付けていたということもあり得るでしょう。


 私は手早く着替えて外に出ました。

 待たされている間に痺れを切らせて帰ってくれたら……なんてことも考えましたが、殿下はイライラしている様子は見えても特に騒ぐ様子もなく、こちらに視線を向けました。

 彼もまた、少しやつれているでしょうか。

 元々整った顔立ちをしていらしたから、少しやつれた程度では陰りがそこまで見えるわけではないけれど……。


(アトキンス嬢を見習って褒めるとするならば、愁いを帯びた様子というやつなのかしら?)


 いえ、やはり彼女の褒め方とは少し違うわね……難しいわ!

 そんなことを考えながら、私は門を開けるか問うような視線を向ける門番に向かってそのままでいるように手で示し、その場でお辞儀(カーテシー)をしました。


「アベリアン殿下、お久しゅうございます。本日のご用向きは一体どのようなものでしょうか」


「……お前に会いに来たのだ、ロレッタ」


「まあ、さようでしたか。大変申し訳ございませんが、当主である父より約束のない人間は館に入れぬよう言いつかっておりまして……たとえそれが殿下であろうと、私には父との約束を破る理由にはなりません。また、私どもの関係はすでに白紙に戻っており、どうぞ私の名を呼び捨てにはしないようお願い申し上げます」


「……ロレッタ……嬢」


「ありがとうございます、殿下」


 殿下は不満そうですが、一応私の話を聞くだけの理性はあるようです。

 疲れているからとにかく入れろとごねられるかと正直思っていたので、思いの外落ち着いている殿下のお姿には驚きです。


「……ロレッタ嬢、どうしても話がしたい」


「申し訳ございませんが、正式に父と約束を取り付けてから出直していただけませんでしょうか。私と殿下は、互いに納得の上婚約を白紙に戻してはおりますが……あまり互いに顔を合わせても良い関係ではございません。今は、まだ」


 そう、今はまだ。

 あの話題は下火になったとはいえ、どこで再燃するかわかったものではないのです。


 それは殿下もわかっておいでなのでしょう。

 私の言葉に、眉間に皺を寄せて厳しい表情を浮かべておいでです。


「……わかった。では出直すから、ワーデンシュタイン公に俺が来たことを伝えてくれないか。後日、また手紙を出させてもらう」


「かしこまりました」


 これ以上は殿下にとっても晒し者になっているようで耐えられなかったのでしょう。

 私としては幼い頃からの婚約関係にあった方がそのような姿になっていることが、悲しくも思えましたが……一切その感情は表に出すことはありませんでした。


 殿下は馬車に乗り込むと、すぐにその場を去って行かれたので私はホッと安堵のため息を一つ零してレオンを見ました。


「お父様は、わざと殿下からの面会申し込みを拒否していると思う?」


「そうだろうね」


「……まあ、一応伝えるだけ伝えましょうか」


 もし私の考えている通りなら、殿下はいつまで経ってもお父様に面会することはできないのだろうなあと思うのでした。


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