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その『悪役令嬢』は幸せを恋い願う  作者: 玉響なつめ


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第21話 裁決を待つ

 国王陛下からのお言葉をいただき、私たちはまた少し時間をおいてから会議室に呼ばれることとなりました。

 そちらは当然のことながら大切な国政会議をする部屋なので、十分な広さがあり防音もしっかりしています。


 今回の内容を漏らさないためなのでしょうか?

 いずれにせよ、講堂であれほど大きなことをしてしまったために噂はもうとっくに広まっているのですが。


(まあここでの話は事実を述べ、王家がそれを認めた上で正式な処断についてを話してくださるということなのでしょうけれど)


 陛下が座る予定の場所、その近くにお父様がまず腰掛けました。

 その隣に私、そして私たちの後ろにレオンが立つ形です。


 兵士に連れられて、イザークがやってきましたがお父様は何も仰いませんでした。


「義父上、義姉上……!」


 イザークはずっと王城の一室で軟禁されていたと耳にしています。

 その間、どのように扱われていたのかは聞いておりませんが……少なくとも今もまだ公爵子息なのですからそれ相応に扱われていたと思います。

 ですが、本人には不満だったのでしょうか?

 私たちの姿を認めるや否や、イザークは目を吊り上げました。


「どうして会いに来てくださらないのです! 二人の口添えがあれば僕はすぐにでも家に帰れたはずなのに……!」


「何を言っている」


「……え」


「ロレッタから言われているだろう。中継ぎに過ぎないお前は、近いうちに実家に戻るのだ。どうしてワーデンシュタイン公爵家に戻る必要がある? それだけのことを仕出かした自覚もない者を、何故わたしが引き取りに出向かねばならない」


「そ、れは」


「殿下の意向を叶えたかった? 仲良くなった少女の願いを聞き届けてやりたかった? いずれの理由があるにせよ、お前は下手を打ったのだ。どうしようもなく無能であることを自ら暴露した以上、お前に悪意があろうがなかろうが公爵位を継がせるなど万が一にもあり得ん」


「そ、そんな! 一度の失敗で!?」


「あれがもし領地運営における大局であれば、未熟であったの一言では済まない。周囲に意見を求めるでもなく、己が万能であるかのように振る舞う愚か者に用はない」


 お父様の言葉にイザークはショックを受けたようですが、私も気を引き締めねばならないと横で聞いていて思いました。

 殿下の、アトキンス嬢の想いを叶えたいならばやはり円満な解消や、他の方法を模索することもできたのでしょう。


 イザークの立場ならば、お父様に働きかけることもできたかもしれませんし、私に相談してくれたら……と思わずにはいられません。


(姉として接してきたつもりだし、幼い頃は慕ってくれていたと思っていたのに……どうしてこうなってしまったのかしら)


 騎士に促されるようにしてイザークは私たちの向かい側に着席しました。

 座った場所も異なることが、今の私たちとの関係なのだと如実に表していて……それに対してもイザークはショックを受けているようです。

 青い顔をして、俯いてしまいました。


 続いてメルカド侯爵様とその奥様が入室してくると私たちに深々と頭を下げてから、着席なさいました。

 その後ろにウーゴ様が立っておいでです。

 どうやら夫妻はご子息をそのまま立たせておくつもりのようですが、ウーゴ様はなんだか目が虚ろで……大丈夫でしょうか。


(それになんだか、やつれているようにも見えるわ)


 そしてその横にはモレノ伯爵様がエルマン様を伴い、がばりと大きく頭を下げました。

 エルマン様の顔が……ものすごく腫れていて、正直怖いのですが!

 思わず体を引きそうになってしまいましたがすでに着席しているため、小さく椅子が音を立ててしまいました。

 何事にも動じるなと普段から聞かされておりますが、あれは無理です!

 大丈夫なのでしょうか……!?


(軍人式の説教というのは、ああいったことがままあると耳にしたことがありますが……)


 騎士隊って、とても厳しいのですね。

 常に鍛錬しておられる分、怪我も多い職業ですが……痛みを恐れてもいいから怯えるなという教育があるため、拳が出やすいという話も聞いたことがあります。

 どこまでが本当なのでしょう?


 それからアトキンス男爵夫妻がおいででしたが、もう言葉もなく必死に頭を下げる姿がなんとも言えませんでした。

 ご令嬢の方はどこか不貞腐れた様子で、大分手を焼いておられるようですが……。


 なんでしょう、ただ話を聞くだけ……と思っていましたが、本当にそれで終わるのでしょうか。

 少し不安になってきてしまいました。


「国王陛下、並びに王妃様、第一王子(・・・・)アベリアン殿下がおいでになります」


 ああ、殿下は……もう王太子殿下と呼ばれないのですね。

 そのことに胸が痛みましたが、私は何事もなかったかのように振る舞うしかできませんでした。

 

 室内に騎士の声が響き、私たちは一斉に立ち上がり――ただ、頭を下げて早くこの話し合いが終わればいい、そう願うのでした。

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