ギルド長との邂逅
めっちゃ時間が空いてしまってすみません!! どうか私を見限らないでこれからも暖かく見守っていただけたらありがたい! というわけで今回もゆっくり読んでってください!
「なんだね、そんなにうるさく囃し立てて」
「いえ、ギルド長、悠長にしてる場合じゃないんですよ!」
「そんなことを言われてもだな……この間もビギナー冒険者の子供がかすり傷を負っただけで私を必死に呼びにきたのは一体どこの誰だね?」
「そ、それは……と、とにかく今回は本当の本当に大変なんですよ! は、早く来てくだひゃい!」
「あ、噛んだ」
「もう! ゲニウスさんまで! もう何も話したくないのであなたが勝手に説明してください!」
「お、君が何か関わっているのかい? ちょうどいい、こういうのは当事者が説明したほうが早いからね。私の名はエリアス・アトニウスだ。では頼むよ」
(何っ!?)
エリアス・アトニウスといえば、かつてこの大陸で最強と謳われた伝説の騎士団長ではないか。そんな人がなぜここに、そしてなぜ今も生きているのか? 俺はそんな疑念を抱きながら経緯を説明した。
「ふむふむ、なるほどそんなことがあったのかい。ではB級、いや、A級の冒険者を5人ほど派遣していますぐ向かわせよう。……君、僕がどうしてここにいるのかとでも思っているのかい? ほう……君はかなり博識なのだな。僕の名前は確か数百年ほど前の文献までにしか載っていなかったはずだが」
他のギルド職員に指示を出しつつ、俺にそんなことを囁いてきた。まずいな。数百年も前の文献は普通の図書館には置いていない。俺がどう言った境遇にあるかもすぐにバレるかもしれないな。
「それでいてかなり物事を冷静に判断できるときた。ふむ、面白い。ちょっと待てよ」
『聞こえるかい?』
!? 何だ!? 今頭の中に直接声が聞こえたような……
『そうそう。大当たりだよ。今僕は君の頭に直接話している。この力は少々欠陥があってね。こちらから一方的に話しかけることしかできない。だが私は思考を読むこともできるのでそれはあまり問題はないがね。ちなみに僕がなぜかつて伝説の騎士団長として騒がれていたかわかるかい? そう、この力を使って素晴らしい連携をすることができたからだよ。ちなみに僕はエルフではあるがかなり特殊でね、寿命は長いんだ』
何だかすごいことをこの一瞬でいくつも言われた気がする……しかしこちらはかなり今のやりとりで情報を抜き取られてしまった。この人にはこれ以上弱みを握られたくないな……
『それならちょうどいい。こちらも君についてもう少し情報が欲しかったところだ。そのゲニウスという名前も偽名だろう? この情報を他に漏らしてほしくなければ今夜街の外で少し手合わせをしてほしい。拒否権は君にないはずだ。では0時ほどで頼むよ』
そう俺の頭の中で好き勝手に喋りつつ、エリアスは去ってしまった。……なんだか面倒くさいことになりそうだ。
「あのー、薬草の採取のクエストなんですけどー」
「あ、了解です。では薬草をお出しください」
「どうぞ」
どさっ
「……えっ?」
「はい?」
「………………はぁ!? な、なんですかこの量は!?」
「え、いや普通に取ってきただけですけど……」
「いや、普通って……(落ち着け! 私はギルド職員よ!)了承しました。クエストクリアおめでとうございます。こちら、測ってみたところクエスト48.5回分ありましたので、ひい、ふう、みい、ええと銀貨97枚です。お納めください」
「ありがとうございます」
おお、初めてのクエストにしては結構大きな額をもらえた。これでしばらくは安泰だな。
「あとすみません。アークドラゴンの討伐報酬と、素材の買取代です。金貨5枚お納めください」
「!?」
……何だ!? 自分で面倒ごとはごめんだとか言いながら自分から突っ込んでいっているではないか!? あとこれはマリンの倒したものだから今度買い物にでも付き合ってやるかな。
「むっ、いまフェノメから幸運の波動を感じた」
「ははっ、じゃあ帰りに買い物でも行くか」
「早く服がほしい」
「そうだな。あと美味い食べ物でも少し買っていこう」
「うんっ!」
突然マリンの顔に咲いた満面の笑みという名の美しい花に、俺は思わず目を逸らさずにはいられなかった。いつも真顔のこいつがこんなにも可愛い顔をするとは。笑顔は女性の1番の化粧とは、よく言ったものだ。
「可愛い」
「!?」
俺の隣には、顔を真っ赤にして下げているマリンが。……怒っているのだろうか? 乙女心というものはよくわからないものだ。そんなことを思いながらも、マリンは大量の食べ物を買っている。……いくら金に余裕があるとはいえ、そんなペースで使っていっていてはすぐ無くなるぞ? 俺は微笑みながらマリンにそう思っていた。時間は流れ、洋服屋に着いた。
「ねぇ、フェノ……じゃなくてゲニウス、私どの服がいいと思う?」
そう言いながら4パターンの服の組み合わせを見せてきた。さあ来たぞ、女性と買い物に来る時の1番の試練が。ここで俺が
「どれもいいと思うけどな」
とか言って仕舞えば、かなりの期間マリンから恨みを買うであろう。ここは慎重に考えなければ。
「うーん、まず一着目は肌の美しい白と燃えるような赤が対比されていて、それでいて控えめな色のズボンが上半身のプロポーションの良さをさらに強調していて凄くいい。二着目は一着目に対して比較的穏やかな緑色を上半身にチョイスしたのに対し、スカートを少し濃いめの色にしたことによって上半身がより細く見え、ヒップを主にしていてこれまたいい。三着目は上半身と下半身がどちらも濃いめの色だがマリンブルーの髪色に合った緑と黄色はマリ……ウィチェリーの良さを全体的に出していていい。四着目はこれまた三着目に対してどちらも薄めの色だが、首につけているチョーカーの存在がまたチャーミングで儚い美しさを醸していていいと思うぞ!」
「……」
……はっ! つい熱く語りすぎてしまった! まずい、しかも結局選択してないからさらにだ、これはかなり怒っているのではないか……
「……ぶ」
「?」
「全部買って!」
「ああ、もちろんだ!」
そんな中マリンは少し羞恥心に顔を赤らめつつ、嬉しさ半面、フェノメに全部の服を買わせ、満足げな顔でレジに向かったとさ。
「フェノメの服も私が決める!」
「お、いいのか? 実はファッションには無頓着でな。決めてもらえるなら嬉しいぞ」
「ふふーん。全部私好みにして上げる!」
「もうそれでいい!」
少々方向はちがうが、まあ侯爵家の令嬢に選んでもらえるのはかなりありがたいことだ。
こうしてフェノメの服も四着買い、無事に俺たちはショッピングを終えることが出来たのだった。
「げっ! 今日だけで金貨1枚使っちまった!」
「ん……フェノメが私のヒモになればいいの」
「それは世間体がちょっと……」
「大丈夫。……堂々としてれば何とかなるの」
「そういう問題じゃない気が……」
あっ、そういえば今夜はエリアスと戦うんだった。こいつにいうと絶対ついてくるからなんとかして抜け出さないとな。
「じゃあ、そろそろ宿に帰るか」
「ん、なんか急によそよそしくなった……何か隠してる」
「い、い、いや? ……そ、そういうことはないぞ?」
「(ふふっ、嘘つくの下手すぎ)……わかった。早く帰る」
「あ、ああ」
……バレてないよな? 前世でも何故か嘘をつこうとするたびにすぐバレてしまっていたのだが、今回は大丈夫だろう。何せ転生したんだしな!
……しばらくするうちに宿につき、
「じゃあ寝るか」
「ん、おやすみ」
……どうにかマリンは寝てくれたようだ。よし、では行ってくるか! 物音を立てないようにしないとなぁ……というか、街の外って、今思ったけどアバウトすぎないか!? まあなんとかなるか。
……しばらくして街の外に着いたが、人の気配が全くない。まさかあんなことを言いながら嘘だったとかないよな!? そうして待っているものの人の来る気配が読めなかったので、帰ろうと思っていたその時、
「やあ、お待たせお待たせ」
「!?」
何だ!? 一際気配がしなかったぞ!? いくら魔力探知をしていなく、少し気を抜いていたとはいえ、背後に回られるようなことがあるのか!?
「ははっ! 驚いているのかい? これでも少しは隠密行動には自信があってね。まあ……君が本気を出していればバレていたとは思うが」
「い、いやいや、そんなことはないだろう」
「そうかい?」
こいつ……いや、あまり動揺してはいけないだろう。何せこいつは心を読めるらしいからな。ハッタリにしても嘘をつく理由がない。まあ、なんにせよこれ以上心を乱すのは得策ではないようだ。
「さすがだね! 君はやっぱり頭は良いと思ってたんだ! まあつまらない話はこれくらいにしといて……戦うかい?」
!? こいつの縫っている雰囲気が突然変わった!? やはり伝説の騎士団長と呼ばれるだけはあるようだ。こちらもある程度本気を出さないといけないかもな。
「そうだ、君は武器を持っていないようだ。だから両方木剣でやろうか! では行かせてもらおう。シャッッ!」
「ハッ!」
ごぉんっっ!! 木剣同士とは思えないような音がなり響く。急すぎるだろ! 構えぐらい取らせてくれないのかよ!? しかもかなり動きが速い。これは苦労させられそうだ。
「戦闘中に考えごとかい? 随分となめられているようだねっ!」
「ふっ!」
これもなかなか速い。しかし俺の剣術レベルは15まで上がっているので難なく対応できる。
「ふぅん? かなり余裕があるようだ。面白い! それでは身体強化も使わせてもらおう! こう見えても僕は魔力の操作が得意でね! 少しでも君を楽しませることができると思うよ!」
かなり動きが速くなった! しかも先程の剣戟の時よりもさらに動きが滑らかになっている! これはまずい。こちらも魔力を練らせてもらおうか。
「ハァァッッ!!」
「はは……君は随分と人間離れしているようだ。 これ以上本気を出されてしまったら僕に勝ち目はない。 ここで決めさせてもらうよっ! くらえっ! 風神の舞っ!」
そのとき、突然俺を中心として半径5mほどの魔力による竜巻のようなものが起こり、無数の斬撃が放たれた。一つ一つの斬撃は一見初級の風魔法ウィンドカッターのようであるが、込められている魔力が桁違いである。その時、『これはメラゾーマではない。メラだ。』と言う言葉が突然俺の頭にフラッシュバックされた。こんな時に俺は何を考えているんだ? 取り敢えず目の前の敵を倒さなければな!
そうして俺は足に魔力を集中させた。この間マリンとアークドラゴンを倒した時、経験値が流れ込んできてレベルが上がった。そこそこ魔力が上がったからどれほどになるかになるか楽しみだ。
「ほっ!」
「むっ、どこへ行った! 僕の風神の舞はどこまでも追尾するぞ!」
「ほう、なかなか面白い技だ。だが標的についていかなければ意味をなさないぞ」
「なに!?」
「ここだ」
「げっ!」
そうして背後から手動を首に叩き込んだ。魔力の増加がかなり著しく、少々調整に慣れる時間が必要だったが何とか倒せた。しかしなかなかの相手だった。久しぶりに少し本気を出してしまったな……と、ここで1番重大な問題を思い出した。そう、どうやってマリンにバレずに戻るかである。しかもこのギルド長も何とかしないといけない。あーもう、どうしよう! よし、ギルド長はめんどくさいからこんままでいい! あとは行き当たりばったりで何とかするしかない! 帰って寝るぞ!
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