自暴自棄
ドン!
デバイスの打ち合いの衝撃音が低く響いている。
何度か打ち合った後、仕掛けたのはポーラだった。
「はああ!!」
叩きつけるように振り降ろしたデバイスをクレアはデバイスで受ける。
「はは!なんだいこのデバイスは!刃が無いじゃないか!」
目の前で防ぐ斧型のデバイスに殺傷性が無いとクレアは高を括る。
「お前は使えるデバイスの判断も出来ないのか!」
弾き返すと、クレアはデバイスを振り降ろす。
今度はポーラが受け、攻守が逆転する。
「確かにデバイスの殺傷力なんて高が知れている。でもナマクラなんか使えるか!」
今度はクレアのデバイスの刃がポーラに迫る。
「あんたはそうやって……一方からしか見ない!」
ポーラは叫びながらも押し返した。
その叫びはクレアの上体を大きく反らせるほど力強かった。
「くっ!」
大きな隙が生まれる。ポーラはそれを逃さない。
「はあああ!!」
力一杯、デバイスで薙ぎ払う。
しかしクレアも意地でデバイスを振り降ろす。
先に振れたのはクレアだった。
振り降ろしたデバイスは当たらなかったが床に刺さり、柄がポーラのデバイスを防ぐ盾となった。
クレアは一瞬勝ち誇った。
(これがお前との差だ!)
常に上に立っていたクレアの方がポーラよりも戦況をより良い状況に持って行ける。
隙が生まれても、即座に有利に立て直すことが出来る。
これが、クレアとポーラの差だと思っていた。
「バルディッシュ!!カートリッジ、ロード!!」
ポーラの叫び声に合わせてデバイスが光る。
(黄金色の……閃……!?)
互いのデバイスがぶつかり合う。止められると思っていた物が……
簡単に柄を切断すると、黄金色の閃光はクレアを襲った。
ポーラの黄金色の雷とデバイスの物理的な攻撃。
いくらバリアジャケットで守られているとはいえ、受けたら危険だ。
さらにクレアを驚かせる変化があった。
(刃が!?)
さっきまで無かった刃が付いているのだ。
その驚きは避けるクレアの動きを一瞬鈍らせた。
「ああああ゛あ゛!!」
クレアの絶叫はポーラの黄金色の雷の発破でかき消された。
「はぁ……はぁ……」
ポーラの荒い呼吸とデバイスの放熱処理の音だけが残る。
デバイス自身が持つカートリッジの魔力に加えて、自分の魔力も纏で加えた。
ポーラにとって本当の渾身の一撃だった。
(クレアは?)
吹っ飛んだ相手を探す。
部屋の壁が壊れ、土煙のようなものが出ていて目視しづらい。
探そうにも強い疲労感で体が言う事を聞かなかった。
「あり……えない……」
ふと声が聞こえた。クレアの声だ。
膝をつきながらも、立っていた。
デバイスによって切られたバリアジャケットからは血が滲み出ている。
さらに発破の影響か所々穴が空き、肌が露出。眼鏡も片方がヒビで見づらくなっている。
「なん……なの……何なのよそのデバイスは!」
「……新しい仲間から貰ったものよ」
「……ははっ……あんたお得意の……」
「そんなことしてない!」
「……」
「あの子は……あの子は……そんなこと望んでない」
「……あんたがどう思おうが知ったことじゃない。相手がどう受け取るかなのよ」
やはり話し合いは難しそうだ。
「……だからあんたには仲間が出来ないのよ」
「弱い仲間なんて必要ないわ」
「弱い仲間でもいい。互いに助け合える方がいい関係になれるわ」
「そんな傷の舐め合いで強くなんか……」
「その結果がこれよ!」
ポーラは両手を広げ、この場の状況を見せる。
「その結果、私はあんたに勝てた!」
「負けてない!」
「負けたのよ!」
ふとクレアの瞳から涙がこぼれる。
「負けてない!……お前なんかに負けたら……マスターにもなれず、ファイゼン君も取られ……
お前に勝てる強さも失ったら……私には何も残らないじゃないか……」
「……これから……また強くなればいいじゃない」
「……」
「あんたが切り捨てた仲間ってやつをもう一度作り直して、そこからまた強くなればいいじゃない」
「……もう……遅い……」
「ああ、もう遅いんだ」
新たな声がした。二人しかいないはずのこの場所に、いつの間にかそいつはいた。
「バ、バーネット……」
「クレア、負けたのか」
「負けて……うっ……」
ダメージが大きく、立ち上がれなかった。
「……バーネット・ティーユー……過去に大量虐殺を行った……指名手配犯……」
「ああ、それでいい」
「?」
違和感がある物言いだ。
「そして、もう終わりにするんだ」
バーネットが両手を広げると、空中に画面が現れた。
画面の映像には青く輝く惑星と人工的な壁が映し出された。
「あれは……チューブライン?」
惑星から人工的な壁が出ている光景が見れる場所は限られる。
その最初の候補は今いるアークから見える光景だ。
「ポーラ!今話せる?」
セレスからの念話が届いた。
「どうしたの?」
「アーク内の映像が勝手に映し出されてるの。もしかしてポーラの場所も……」
「ええ、どうやら目の前にいるバーネットが流してるのね」
「目の前に!?」
話しているうちにバーネットが次の行動に移る。
「アークにいる全員に告ぐ!」
画面を経由してバーネットの声がアーク内に響く。
「アークの自爆機能を作動した!」
「「!?」」
「あと数分の人生、共に仲良くしようじゃないか!!」




