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蜃気楼

「ティア……」


ティアが隠れていた場所に特大の砲撃を撃ち込まれ、大きな穴が空いていた。


「「つーぎーは?」」


セレスの目の前に砲身が現れる。


「くっ!動けない!」


アームのようなものに掴まれて逃げれない。


そうこうしているうちに砲身にエネルギーが溜まる。


「「しゅーりょー!!」」


「ちくしょう!!」


砲撃が放たれる直前にアームが破壊され、間一髪避けることが出来た。


「「なに!?」」


砲撃のようなものに破壊された気がする。


その砲撃が放たれた方を見ると人影があった。


「はあ!!」


その人影が方針を破壊する。


その人影にセレスは安堵した。


「ティア!」


銃型のデバイスのバレル部分に刃状の物を作りだし、接近戦用のデバイスに変化していた。


「呆けない!!」


ティアがセレスを一喝すると、破壊した砲身部分に向けて砲撃を撃ち込んだ。


「う、うわあ!」


「まずい!打ち落とすんだ!」


セレスの攻撃のときとは様子が違う。


「効いている?私の時はヒビ程度だったのに」


砲身が量産され、ティアに向けて一斉砲撃が放たれる。


「ティア!」


すると、ティアの体は歪んで砲撃がすり抜けていく。


いや、ティアの体が消え、砲撃があらぬ方向に飛んでいく。


「なに!?」


「どうなってるの!?」


砲撃を放った側も困惑しているようだ。


「蜃気楼って知ってる?」


ティアが姿を現した。


蜃気楼。光の異常屈折で実物と離れた位置に姿が見える現象。


たしか寒暖差による空気の密度変化で発生する現象だとセレスは記憶している。


「“妖精の幻影ミラージュ・モルガーナ”、暖気と冷気を放ち、任意の場所に幻影を見せるのよ」


ティアが話している最中に一発の砲撃が放たれるが、ティアの体をすり抜け、あらぬ方向に飛んで行った。


いや、光の異常屈折により、ティアの虚像を境に曲がって見えているのだ。


「じゃ、じゃあ…」


「僕たちは何もない方向に撃ち込んだってことか!?」


「そーゆーこと」


ティアはウインクしながら答える。


ティアは蜃気楼であたかも同じ場所から砲撃を放っているように見せていたのだ。


「セレス!」


素早く念話に切り替える。


「あの戦艦、砲身部分はそんなに堅くないわ。狙うならそこよ。

あれだけの速さで具現化で作り直してるから、強化までは十分に補い切れていないのね」


「なるほど、だからあんなに効いたのか」


セレスは戦艦の外壁、ティアは砲身だったのでこれだけの差が生まれた。


つまり、外壁を砲身に変えた部分は他より脆弱になっている。


そこを狙えば戦艦の破壊も容易いだろう。


「セレスのも作るわ。内部に入れたら一気に破壊して!」


「了解!」


念話を切ると即座に動き出す。


「う、うわあー!」


大量の人影が戦艦の前方を埋め尽くす。


「ど、どれが本物だ!?」


混乱して虚像に乱射する。本体は離れた位置にいるので影響が無い。


むしろ乱発するために砲身を増やしてくれた。


「一気に行くわよ」


そう合図を送ると、砲身を次々破壊していく。


そしてある程度破壊したセレスは内部に潜入し壁に向けてデバイスを突き刺すと右に回した。


「はああ!!」


生み出された炎の渦は瞬く間に艦内を火の海に変えた。


「「うわあああ!!」」


艦内に鳴り響く悲鳴を他所に、セレスは戦艦から脱出した。


そして爆発を起こしながら、戦艦は落ちていった。




しばらくの間、静寂な時が流れる。


「やった…のか?」


最後はむしろ呆気なかった。


「やったようね」


セレスとティアはハイタッチで勝利を(ねぎら)う。


その瞬間、下から一発の砲撃が襲う。


あまり大きくなかったので簡単に躱せた。


「よくも…よくもやってくれたね」


「でもよくわかったよ、敗因は砲身の作り過ぎ。量産のし過ぎで質が間に合ってなかったんだね」


カプセル状の飛行物体に子供が二人。


ゆっくりと上がってきた。


「ようやく出てきたね」


「量も大切だけど、質ももっと大事ってよくわかった?」


セレスとティアは顔を確認する。二人とも手配犯ではないようだ。


しかしこんな子供が自分たちを苦しめてたと思うと、ゾッとする。


もっとしっかり魔法を学んでいたらSランクも簡単に凌駕する魔道士になっていただろう。


「で、まだやる気?これ以上やるなら殺し合いになるよ」


セレスはデバイスを構える。


「もちろん。戦艦は潰されたけど、僕たちはまだ無傷だよ?」


「それに具現化で量産しなければ勝てなかった事実は消えないよ」


確かに、砲身を量産しなかったら勝てたか怪しい。


「ま、そうなるよね」


ティアもデバイスを構える。


その瞬間、離れた場所から爆発音が聞こえた。


「なに?」


離れた位置に煙が上がっている。


「リーシャのとこかな?」


だが次第に煙が大きくなっていく。


「煙……じゃない!霧だ!」


霧が尋常じゃない速さ膨れ上がり、辺りを埋め尽くそうとしている。


そして一気に目の前まで迫ってきた。


「逃げろ!!」


霧の中から火の玉が現れたかと思うと、中から人が現れ、セレスとティアを抱え逃げ出した。


「リーシャ!?」


人影はよく知る人物だった。


「どうなってる!?」


「暴走だ!あの霧は酸の霧!触れると溶けるぞ!」


逃げる。と言ってもここは切り取られた空間。逃げるにも限度がある。


「ハイヤの馬鹿野郎!なんてもの使ってるんだ!!」


これは敵側にも想定外のようだ。


「僕たちも巻き添えにするなんて聞いてないぞ!」


敵味方関係ない攻撃。


人間の体を溶かす霧が空間を埋め尽くすのは時間の問題だった。


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