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ジャイアントキリング

「はあ?ジャイアントキリングのやり方を教えて欲しいですって?」


ソニアは呆れた顔で溜息を吐いた。


「あのねぇ、ジャイアントキリングなんて教えて簡単に出来るわけないじゃない」


「でもソニアさんはいくつも実績があるじゃないですか。何かしらの方法があるはずです」


「無いわ、そんなもの」


「他人に教えたくない物なのはわかっています。でもお願いします!教えてください!」


ルーは初めて土下座をした。


「ちょっと!そんなことしないでよ!」


「お願いします!」


ルーの必死にお願いした。


「……はあ、これは教えるまで帰らないってことよね?」


「はい!」


「なんでそんなことしたいの?ランクのため?家のため?」


「……違います」


「じゃあ何のため?」


「……追いつきたい人がいるんです」


「追いつきたい人?」


「一人は強敵からあたしを守る為に必死に戦ってくれる姉のような友人の為に。

そしてもう一人は、無類の強さを持ちながらも、仲間の為に頑張る彼の為に」


ソニアはルーの交友関係を把握していたので誰だかすぐにわかった。


(アグリッターとトウヤくんね。アグリッターは追いつけるかもしれないけど、

トウヤくんは異常過ぎるから難しいんじゃないかなあ)


言うべきかと思ったがソニアは心の中に止めた。


「ならその人達と一緒に修行すればいいじゃない」


「それじゃダメなんです。あたしはもっと早く強くなりたいんです」


「それであたしのやり方を真似しようって言うの?」


「……ソニアさんの戦いは有名なので、そのコツを知れば強くなれると………」


「不合格!」


ソニアはそっぽを向く。頑張った結果なのだから簡単に真似出来ると思われたくない。


「え!?ええ!?ごめんなさい!教えてください!!お願いします!!!」


ルーはまた頭を下げて必死にお願いする。


「…と言いたいところだけど、私的な目的じゃないから許してあげる」


ソニアはウインクで答える。


「え?それじゃあ……」


少し涙目になりながらもルーは安堵した。


「でもね、本当にコツなんてないのよ」


「そ、それじゃあ、どうして……」


「いい?信じる信じないはあなたの自由。だけどこれから言う事はしっかり聞きなさい」


「はい!」


「あと、どんなに泥臭いやり方でも、気に入らないやり方でも我慢するのよ」




○○○○○○○○○○○○○○○




(何が起きた!?)


渾身の一撃をお見舞いしようとしたら、何かが顎にぶつかり突き上げられた。


手でも足でも、あの女の体が届く位置ではない。


マンバはルーを確認した。しかしルーは既に構えていた。


(まずい!)


ルーの腕から球状の弾が連続で飛び出す。


反応が遅れた一発目は額に当たり吹っ飛んだ。


しかしその他は距離が取れたので避けることが出来た。


なんとか地に足をつけ立った瞬間、眩暈がして跪いた。


「くっ!」


顎に一発、さらに額に一発。衝撃で脳が揺れ、視界が歪んで見えた。


(なんてザマだ!こんな小娘に!!)


ルーはマンバに狙いを定め、構える。


「ソニア流ジャイアントキリングの鉄則。その一、相手をよく観察しろ」


ルーは守りに集中することでマンバの動き方、攻撃方法、癖などを観察した。


「その二、相手は動きが予想しやすいように動かせ!」


怒らせるように挑発し、怒りによって単調な行動をとるように仕向けた。


「その三、攻撃は相手の虚を突け!」


ルーはシールドだけ使い、砲撃は見せなかった。


そうすることで相手にどのような砲撃を使うかわからないようにした。


「その四、攻撃したら一気にたたみ掛けろ!」


虚の一撃の他に追加でもう一撃与えることが出来た。


「そして最後にその五、作戦の成功を諦めずに信じろ!」


諦めたらそこで終わり。成功することを信じ、実行した結果、今がある。


「リンシェンの言う事は信じてなかったけど、尊敬する先輩と同じ言葉なら信じれるわ」


諦めたら成功はしない。さっきリンシェンが言っていた言葉にもあった。


「今度はあたしが!ミナを守るわ!」


そう言うとルーの砲撃が連続で飛び出す。


「くっ!」


まだふらつくが足は動く。マンバは移動し砲撃躱す。


(あれがあの小娘の能力。ただの砲撃か)


スピードはなかなかに速い。だが十分躱せる速さだ。


連射性能もまずます。だが何より使い方が下手過ぎる。


(そんな直線的なやり方は躱してくれと言っているようなものだ)


マンバは躱しながらルーとの距離を詰める。


「不意打ちで調子乗ってんじゃねえぞ!」


再びルーに襲い掛かる。


ガン!!


「がはっ!」


魔力を攻撃する腕に集めた瞬間、魔力の守りが薄くなった箇所である後頭部を狙った攻撃が当たる。


マンバはまたよろけて倒れてしまう。


顔を上げ後ろを確認すると、あり得ない光景があった。


「なんだ!?これは!?」


球状の弾が大量に浮かんでいた。


「小娘の砲撃か!?」


「あたしの魔法は“弾む弾幕砲(バウンズキャノン)”。放った砲撃が跳ね返ってくるのよ!」


ルーが合図を送るように手を振ると、浮かんでいた砲撃は一斉にマンバの元へ飛んでいった。


「うおおおおお!!」


体勢を崩したマンバに大量の砲撃が命中する。


当たった砲撃は消えず、壁に当たりマンバの元へ跳ね返る。


量があり過ぎてたこ殴り状態だ。


ある程度その状態を維持した後、ルーは砲撃を消した。


全身を殴られたような状態になったマンバはその場で倒れた。


「はあ!はぁ!はぁ……ふぅ」


ルーもかなり息が上がっている。


かなり魔力を消費したのだろう。


数百の砲撃を放ち維持する、跳ね返った砲撃がマンバの方へ飛ぶように操作。


マンバの状態から砲撃にはある程度の硬さがあっただろう。


放出、操作、強化の3タイプを得意とするルーらしい攻撃だった。


「ルー……」


いつも守っていたルーが、自分では勝てないと思っていた相手を倒した。


しかもかなり格上の相手を倒す大金星を手に入れた。


「ミナ……やったよ」


倒れそうになったルーに駆け寄り、体を支える。


「いつの間に、こんなことが出来るようになったんだ?」


「えへへ、ソニアさんに教えてもらったの。もう、守られてばかりじゃないよ」


「すまない、私が不甲斐ないばっかりに……」


「ようやく、あたしも力になれるよ」


「うん、でも次は自力で帰れるようにしような」


「うっ…バカ」


思わず笑いが込み上げてきた。


その場で倒れて帰れないのはまだ勝ちと言えない。


でも今回はそれくらいでも合格と言えるだろう。


あとは局と通信できる場所まで移動してルーを転送。


局の支援班に預ければ完了だ。


ここまで成長したルーに負けてられない。


(私も最初から諦めずに戦おう。そうしないとルーに守られてばかりになってしまう)


そう誓ったミナの目の前に現れたのは絶望だった。


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