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炎に焼かれて

「いじっぱりだねぇ」「素直じゃないねぇ」


ハイヤ兄弟の水と薬による拷問にリーシャは耐え続けた。


(こいつらの手口は確か拷問した後になぶり殺す猟奇的なやり方なはず。

麻薬で感覚を麻痺させ、拷問しているうちはまだ序の口のはずだ)


厄介なのは薬を霧状にして使うこと。


呼吸する度にいろんな薬が入ってくるのは危険だ。


頭を水の中に沈められながら考える。


(こいつらの能力で辺りは限定的だが霧に包まれている。

視界は数十m、隠れられたら厄介だから傍にいる今が好機だろうな)


そう思っているうちに頭を引き上げられ投げ捨てられた。


「がっはっ!…はぁ……はぁ」


リーシャは苦しさや倦怠感で動けずにいた。


「反応が無いからつまらないな」「今度は骨を折ってあげよう」

「お薬も変えてあげないとね」「幸せで泣いちゃうよ?」


こうやって何人も薬漬けにして殺してきた。


ここで仕留めなければ次は誰が狙われるかわからない。


(仲間を守れないプライドなんてクソくらえ!)


リーシャは覚悟を決め、魔力を発した。


「!!」「!?」


リーシャの(はつ)と同時に体が燃え上がる。


「こいつ、自殺かな?」「つまらないことしてんじゃねぇ!」

「あーあ、最悪」「でも外にはこいつの仲間がいるよ」

「次はどの子で遊ぼうか?」「オレンジ髪は弱そうだったな」

「金髪はこいつと同じで意地っ張りかもね?」「殺し甲斐がありそうだ」


ハイヤ兄弟は喜々として外へ向かおうとする。


「待てよ」


背後から声がしたと思うと体に何かが突き抜けた。


ジューと水が一気に沸騰する音と共に拳が確認出来た。


「「あぎゃああああ!!」」


金切音のような悲鳴が鳴り響く。


「あっ!ぐぅぅ!?」「あづい!あああああ!!」


「ほう……意外だったな。焼かれる感覚はあるのか」


「おまえは!?」「なんで!?燃えたんじゃ!?」


リーシャの体はまだ燃えている。


いや、燃えているように見えるだけだった。


「うちの体は特別だ。そしてこの炎は体の毒素を燃やしているだけだ」


「ならなぜ熱い!」「俺達の体は焼かれたぞ!」


「うちには薬で、お前らには毒ってことだ」


「「!?」」


毒を持って毒を制する。当人には毒でも何でもないものでも、他人には毒になるものもある。


薬と言う似た物を使うハイヤ兄弟には簡単に理解が出来た。


だがそれは……


「貴族だったのか」「ジギタリスの眷属か」


「そんなのと一緒にするな。うちはただの一般人だ」


リーシャはそう言うと殴りかかる。


受けられないと判断したハイヤ兄弟は即座に躱し距離をとる。


薬は焼かれ効果が無い。水も火力が強すぎて蒸発してしまう。


せっかく物理的な攻撃を受け付けない水の体も焼かれては意味が無い。


「水がダメなら!」「岩を砕け!」


霧の向こう側は岩壁だったのだろう。


ハイヤ兄弟は岩を砕き、つぶて状にして投げつけた。


だが少し前に砲撃の嵐を捌いたリーシャには大した足止めにもならなかった。


「「くっ!これなら!!」」


今度は大きな岩を持ち上げ、リーシャに投げつける。


「くだらねぇ」


リーシャは拳を突き出すと、大きな岩は砕け散った。


「火力が…違い過ぎる!」「殴るしか脳の無いチビじゃなかったのかよ!」


早々に切り札を破られたハイヤ兄弟は焦りと諦めの状態だった。


「ははっ!昔クレアに言われたな。殴るしか出来ないのか、チビ脳筋ってな」


「誰か!助けてくれ!」「クレア!聞いてたことと違うぞ!!」


「終わりだ。鋼鉄の公爵(スティルダッチェス)!」


そうリーシャが叫ぶとデバイスの一部、輪の部分が回転し、魔力が高まる。


「待て!殺さないでくれ!!」「俺達は実験体にされたんだ!」


ハイヤ兄弟は必死に叫ぶ。


「お前ら、そうやって助けを求めた人をどれだけ殺した!!」


「「!?」」


「これ以上犠牲者を出さないために、お前らは確実に死ななきゃならねぇんだ!!」


リーシャは飛び込み、ハイヤ兄弟に襲いかかる。


「やめろぉぉ!!」「いやだぁぁ!!」


振りぬいた拳は確実に相手を捕えていた。




目の前の光景に驚いた。


ハイヤ兄弟の片方が、もう片方を庇うように立ち、リーシャの拳を止めた。


「兄ちゃん!?」


立ち塞がったのは兄の方のようだ。


ブクブクと沸騰する水の体は、徐々に小さくなっていく。


「兄ちゃん!何で守ってくれたんだよ!」


かろうじて残っている顔と思われる部分も崩れていく。


「!?」


今、笑ったか?リーシャにはそのように見えた。


「兄ちゃん!」


水蒸気となった体は消えていった。


(兄として弟を守ったのか?)


残虐非道で人を玩具のようにしていたやつにも兄弟の情があったようだ。


「兄…うっ!?」


急に弟が苦しみだした。


「どうした!?」


思わす心配してしまう。


「ああ!あああ!!ああああああ!!!」


何かに引き込まれるような感じになると、一気に爆風が起こった。


「これは!暴走!?」


あの時のトウヤに似ている。だけどなぜ?


暴走は大きすぎる魔力が制御出来なくなる状態だ。


だけどさっきまで平気だったのに……いや、変わったことがある。


ハイヤ兄の死。元々二人の体は人体実験で一つに繋がれていた。


もし魔力を二人で制御していたなら?


体が繋がっていたのでありえる。なら片方が死んだら?


二人分の魔力を一人で制御しなければなくなる。


つまり暴走の原因である、大きすぎる魔力を制御できなくなる可能性は高い。


「早く倒さねぇと!」


弟を殴ろうとした途端、爆発のようなものが起こった。


「くっ!……しまった!!」


暴走状態となったハイヤ弟は霧状に変化した。


「まずい!外にはセレス達が!」


薬使いが使っていた霧。どんな効果があるか解かったものじゃない。


リーシャは炎で焼くことが出来るが、セレスとティアは出来ない。


もしかしたら口にしたら、死を招く薬かもしれない。


「逃げろぉ!!」


外に伝わるかわからないが全力で叫ぶと同時に外へ飛び出した。


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