量産機
数は数えていないが、数百はあっただろう。
その中でも大型機は厄介な動きや砲撃を備えていたので足止め、または後退を余儀なくされる。
(近づけない!)
その厄介な機体を造りだす戦艦を破壊したくても、近づけずにいた。
「また水か!」
大型機から水の砲撃が放たれる。
セレスの魔法は火属性だ。水属性の魔法への対処には大きく魔力を消費する。
(切り札を使うべきか?いやこれは戦艦の時まで残した方がいい)
上手く躱して近づき、炎の棘を突き刺して回して内部で爆発を起こす。
そして爆発で発生した炎の渦を小型機に向ける。
しかし小型機は水の膜で破壊から守られた。
「徐々にこちらの弱点となるように進化し始めたか」
「初めから水で攻めてもよかったんだけどね」
「つまらないから遊ぶことにしたんだよ」
クレアから前もって情報を貰って用意した、
こちらもセレス達を相手にするための相手のようだ。
(初めから水で…つまり魔法の属性を変化させることが出来るのか?)
序盤は炎の攻撃は普通に通用していた。
元々水だったのを水以外にしていたということは、変化系か?
しかし、この戦闘機の数の出現と砲撃性能は具現化系と放出系。素早い動きは操作系の能力が伺える。
そして戦いが進むにつれて戦闘機の性能が変化していき堅牢になっている。
これは強化系の戦闘機が現れ始めていると言うことだろう。
時間をかけていたら全能力を網羅したものを相手にするかもしれない。
(しかたない)
相棒の力を借りるべきだ。
「ティア、キリが無いから戦闘機は無視して戦艦を叩きたい」
戦闘機の出現元である戦艦を破壊することで、戦闘の長期化を防ぐ。
「でも多すぎて対処しきれないよ?大丈夫?」
ティアも砲撃を止め、作戦を考える。
「数を絞れないか?」
「うーん、大型だけはまだ量産しきれていないようだから、そこだけ潰してみる?」
確かに小型は性能の向上が凄まじいが、大型はそれに比べて控えめだ。
「なるほど、よく気付いたな」
「まあね」
性能の進化スピードに差がある。これは攻略の糸口になるかもしれない。
「よし、大型を叩いて一気に突破する!手伝ってくれ!」
「わかった!狙いは任せるよ!」
現在の大型は5機。さて、どれが一番叩きやすいか。
相手の攻撃を躱すことに集中しながら、それぞれ確認する。
「ん?よく見たら小型の集まりに差があるわ。
一番後ろのには数機しかいないけど、セレスの周りに集中している」
「え?」
ティアに指摘され、セレスも確認する。
確かに。周りに集められて確認しづらいが、セレスから戦艦側にかけて数が減っているように見える。
「よく気付いたな」
ティアはセレスの後方、森の地形にいたはず。それだけ離れると見え方も変わってくるのだろう。
「少し走って移動したの」
「いつのまに……」
ついさっきまで後方からの砲撃があったので、初期位置から動いていないと思っていた。
「あともう一つ、同じ砲撃を撃った時、破壊できる物とそうでない物があるみたい」
「そうなのか?気にならなかったが……」
セレスは強化・放出系、ティアは放出・操作系。この辺りの差もあるのか?
いや、近距離、遠距離と言うスタイルの問題か?
それとも何かの法則があるのか?
だがじっくり考えている時間は無い。
「よし、後方の物を叩く。進路の確保をお願い」
「了解!」
声と共にティアの砲撃が複数撃たれた。
その砲撃はセレスを中心に円を描くように撃たれている。
その砲撃が壁となりセレスが進む進路となっている。
(よし!)
進路上の小型を幾つか破壊すると一気に奥へ駆け抜ける。
こう見るとよくわかる。
確かに戦艦側に進むにつれて機体の数が少ない。
砲撃を躱しつつ、奥にいた大型機を破壊すると、最奥にいる戦艦に向けて一気に駆けだず。
「ようやく来たねー」
「いつ来るか待ってたよー」
突如声が鳴り響く。
「今戦艦から引きずり出してやる!」
セレスは構えると、デバイスに魔力を送る。
「火纏!剛槌!」
一気に振りかぶり、戦艦に打ちつける。
ガン!
鈍い音が響く。予想よりもずっと堅いシールドに守られている。
「はあ!!」
放出系に切り替え、破壊を試みる。
ドン!
鈍い衝撃音が響く。
堅いシールドでも壊せるように通常よりも多く魔力を使っている。
だが……
ピシッ…
ヒビが入っただけで破壊まではいかなかった。
「惜しかったねー」
「いいとこまでいったねー」
ケラケラと笑いながらセレスの攻撃を称賛する。
まだ余裕があるようだ。
「でもー接近型のお姉さんが戦艦の傍にいると、遠距離型のお姉さん助けられないよねー」
「こうするとどうなるかなー?」
「何を言って……まさか!?」
セレスは後ろを確認する。
飛んでいた機体がセレスを追っていない。
むしろ砲撃の狙いを一カ所に集めていた。
「遠距離のお姉さんは、接近型のお姉さんより弱いよね?」
狙いは最初からティアの方だったようだ。
戦線をある程度維持し、セレスがそこに留まれば、機体の改造で性能を上げて量産しつづける。
セレスが量産を防ぐために戦艦へ向かえば、ティアに集中して一気に攻め立てる。
「戦艦はアークの防壁を参考に守ってるから、強化系でもそう簡単に壊せないよ?」
戦艦のシールドを破壊出来ないとふんで、こちら側の戦力を一つづつ潰していくつもりだったようだ。
「なんども砲撃を撃っていたら、大体の場所は解かっちゃうんだよー」
大型機、小型機、全てがティアが隠れている位置に向いている。
「逃げろ!ティア!!」
セレスは急いで戻ろうとする。
「おっと、逃がさないよー」
不意に新たな大型機が戦艦から現れると、アームのようなものを伸ばしセレスを捕まえる。
「しまっ!?…ティア!!」
「「ばいばーい」」
合図と共に一気に砲撃が放たれる。
そして地面は砲撃の衝撃で大きく抉られた