休息?
夜は邪教との潜伏先の調査をルースが行い。サーシャとエリオットは法術を書き込んだ護符作成に勤しんだ。
護符は祈りを捧げながら描くので、神職につくほどの祈りの強さがないと万人向けの護符は作れない。恋人や家族に向けて、祈りを込めて描けば護符を作れる一般人もいるが、やはり思いの強さは人によって変わってしまうのだ。
次の日は平常授業を行い、エリオットは時間が取れたラディエル教授に話を聞いたりと学園の問題臨時教師の情報を集めていた。
どうやら紹介者は理事会の人間らしく、この臨時教師を知っている人は少数だった事と、この国の寺院に所属していないことが判明した。寺院についてはダイが駆けずり回って確認済みだ。
そして肝心の紹介者との連絡は取れず、問題の臨時教師も呼び出しに応じずという始末。しかも授業が被っていることが多く捕まえる事もできなかった。
「ねぇ、これって舐められてる?」
サーシャが不機嫌そうに外へ通じる馬車道を眺めていた。そこには一台の馬車が駆けている。もちろん、件の臨時教師がのっているのだが、その教師は学園の外の貴族の屋敷から通っているとかで、授業が終わるとさっさと帰ってしまうのだ。
あの馬車を止めることは可能だが、この国の貴族の派閥を突っつく事になり得ない為まだ手出しできなかった。
「我々寺院の人間を馬鹿にしているとしか思えませんね……信仰心の薄い派閥らしいとは聞いてましたが此処までとは」
エリオットも流石にイラつきを隠せなかった。寺院の呼び出しを無視する者なんて今までいなかったから尚更だった。実はエリオットの実家は他国とはいえ、有名な大貴族なのだ。何も言わなくても向こうから繋がりを求めに挨拶に来るくらいだ。そのため呼びかけに応じない等敵対派閥でない限り無かった。
「エリオットの名を使ってもダメってことは、相当強気ね〜。ねぇねぇ、最終手段してもいいかなぁ?」
不機嫌そうなエリオットの顔を楽しげにサーシャは見つめながら、手に持っていた杖をくるくる回しせば、エリオットは悪い笑みを浮かべて頷いた。
「そうですね、補講は今週末でしたね。我々も自由行動といたしましょうか。たまには息抜きは必要です」
「じゃーコテンパにやりますね」
やらなければいけない雑務はたくさんあるが、たまには息抜きも必要だ。サーシャもニッコリと笑顔で答えた。
「えぇ、流石に私も止めません。それに、あの法衣どうやって手に入れたのか気になりますね」
「あ!確かに! 普通は着れないのに……もしかしたら、家格の低い貴族の寺院関係者から奪ってきたのかも」
「ありえますね」
法衣は個人個人に与えられた者で他人に貸してはいけない特別なモノ、だからこそ着ているだけで寺院関係者だと信じてしまうのだ。
そして決まった服屋以外は作成してはいけないと決められている。もしも破ればその服屋、お針子共々処刑されるのだ。実際に過去数件起きているからこそ、この規律はサーシャが知っている限り守られている。
「おぉ、怖いねぇ〜」
今日の二人の護衛をしているダリはやる気なさそうに壁に寄りかかりながら二人の会話を聴いていた。ここ数年は、ここまで影響力のありそうな場所での神職を偽装する人間がいなかった。
護衛がつくのはそのような偽物が一度増えた際に、本当の神職のものが恨みで狙われたというのもある。そして何より神使いが持っている杖を狙って襲われることがあるのだが。
「一応刑事部のやつらにも連絡いれるかねー」
「当たり前ですよ」
「そうですよダリ。サボってましたね!」
「うげぇお」
廊下を歩いてる人を眺めていたダリの耳をエリオットが掴み、脇腹をサーシャの杖で突かれへんな声をあげた。
「悪巧みは終わったのかよ、お二人さん」
ダリが聞けば、二人とも頷いた。
「終わったわ。それより他に怪しい人はいたかしら?」
二人の姿は目立つ。ダリも今は寺院の護衛兵としての胸当てを身につけている。黒い制服の中に白い甲冑と白い法衣は遠くからでも目立つ存在だ。しかもサーシャの髪の毛は淡い色のせいで真っ白に見える。
「教師はいないが、生徒が数人怪しいなぁ」
「生徒ですか……まぁ、こんだけ集めてたらそうですよねぇー」
サーシャは周りを見渡しながら目があった生徒に手を振った。振られた生徒も楽しげに手を振り返してくれている。
「何気に下級生に人気ですよね。サーシャは」
「背がちいせぇからじゃね?」
「失礼ですね!」




