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転生神子(てんせいじんご)  作者: siro


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サマーダンスパーティー24H 合流


「これはどういうこと?!」

 会場にやっと戻ったサーシャ達は、その場の異様な雰囲気に最悪な状況を否が応でも知ることになった。怯える生徒と、どうしたら良いのか分からず固まって話し込む生徒。

 サーシャは近くの生徒を捕まえて問いただせば、第二王子がやらかした顛末に顔を覆った。真実は小説より奇なりと言えるほど馬鹿げた事が実行されたことを知れただけだった。


「やられた」

「やられましたね。ここまでアホとは」

 サーシャとルースは警戒しつつも、今後どうするか頭を悩ませた。王宮は現在最悪な状況と言えるだろう。こんなに騒ぎになっているというのに、王へと連絡が行っている様子はない。

 この場にはもう第二王子と側近の取り巻きはいなくなっている、王子の宮に入られてしまったら寺院の権限で捕まえるのは難しいだろう。

 エカテリーナの侍女は半泣きで、第二王子派の人々に取り押さえられそうになっていたところをエリオットが助けられただけでも良しと言ったところだろうか。

「エリオット、チェインが戻り次第。一旦ひきましょう」

 サーシャがそう声をかけるも、侍女からことの顛末を聞いたらしいエリオットは怒り心頭だ。

「あのば……王子は、ここまで無能とは……婚約は王と公爵家で取り交わされた契約だというのに!」

 エリオットもあまりの事態に声を荒げてしまうほどだ。その様子に周りの生徒たちもビクリと反応するほどだ。

 だがこれ以上は、今のところ手の施しようがない。会場に残る異様な気配に気づいていたが、ここで不必要に不安がらせるほうが悪手だ。何より異教徒として告発されたということは、そうなるための下準備を向こうがしたと言う事。

 逆に侍女であるスーリャも危ないのだ。サーシャとエリオット、そして騎士であるルースがいるおかげで第二王子派の者達は手が出せない状況だ。その頃になってやっと、まともな教師陣が戻ってきて、生徒たちを誘導し始めたのでサーシャ達は控え室に移動した。

「ロメリア大丈夫?」

「お帰りなさい! 大丈夫もなにも騒ぎの最中何故か扉が開かなくなりました! なにが起きたんです?」

「はぁ……なるほどね。第二王子がやらかしたわ」

「わぁおう」


 震える侍女を落ち着かせていると、やっとチェインが戻ってきた。

「ただいまっと、最悪な事態になっちゃってるねー」

「えぇ」

「遅いですよ」

「外も大騒ぎだったんだよ、で。話はここでする?」

「いいえ、家に移動しましょう。さぁ、あなたも立てる?」

 サーシャは真っ青な顔になってしまっている侍女のスーリャの手を握って立たせた。

「あ、あの。サーシャ様。お、お嬢様はどうなるのでしょうか。彼が連れてってしまって……」

「彼?」

「アルベルトです。従者の」

「あぁ……彼ね……」

 サーシャは最後に見たアルベルトの顔を思い出していた。ほんの少し感じた違和感、主人に恋い焦がれておかしくなっていたのかと思ったが、会場に残る嫌な気配は外へと続いていた。

「とりあえず、各方面に知らせないといけないわね」

 サーシャの言葉に不安を募らせたスーリャにエリオットがすかさず声をかけた。

「えぇ、エカテリーナ嬢もこちらで保護させるべく公爵家にも連絡します。だから安心なさい」

 そういって震えるスーリャを抱き上げて歩き始めてしまった。スーリャは流れるようにエスコートされ、しかも美麗と名高いエリオットに抱き上げられたのだ、赤面せずにはいられなかった。

「血色がよくなりましたね。よかった」

「は、はい。あ、ありがとうございます!」


「おうおう」

 サーシャも一瞬自分の思考に入り込んでしまったのは悪かったが、まるでさらって行くように行く姿に思わず半眼してしまう。そして何故かエリオットが呟いた。

「これだから貴族はかっこつけやがって」

「エリオット、嫉妬しないのー。行きましょう」

 今まで黙っていたロメリアがエリオットの脇を小突きながらエリオットの後に続いた。

「そうね。行きましょうか」



 自分たちの住まいにたどり着けば、スーリャを休憩スペースで休ませ、誰が来ても大丈夫なようにダリに護衛を頼み、サーシャ達は忙しく動き始めた。建物全体に守りの法術、各方面への手紙と出していく。

 休憩スペースではダリが見た目とは反して、丁寧にお茶の準備をするのを不思議そうにスーリャは眺めていた。ダリの無骨な手から丁寧に蒸して出した寺院特製のお茶。それを飲んだスーリャはほっとしたのも束の間、慌ててトイレへと駆け込んだ。

「一応と思って、濃い目に作ったが……。侍女の嬢ちゃんもどこかでクッキー食ってるな。お、いいところにロメリア。みんなにもお茶飲むように伝えてくれ」

 わたわたと、法術の本を抱えて通り過ぎようとしたロメリアは机の上に置かれたお茶の香りで気づいた。

「はいはーいって、スーリャさん、毒盛られてたの?」

「みたいだな」

 二人の会話を部屋に戻ってきたスーリャがきいて立ち尽くしてしまった。

「ど、毒? わ、私毒をもられてたんですか?!」

「うん。寺院特製のお茶は、浄化作用があってね、体内の毒を押し出す効果があるのよ。いっぱい飲んでジャンジャン出してね!」

 ロメリアがそう言いながら、半分に減ったお茶を満杯に満たしてスーリャに手渡した。

「ど、毒を押し出す」

「そうよ。貴方も狙われてたって事なんだからね。ちゃんと体を整えないと、大事なお嬢様が戻ってきた時にお世話できないでしょ」

「は、はい」

 ぽんぽんと肩をロメリアに叩かれて、スーリャは覚悟を決めてお茶を飲み干した。体の中からじわじわと広がる暖かさと、そして刺激される腸。

「う……」

「我慢しないで行ってらっしゃーい」

 ロメリアの言葉と同時にスーリャはまたトイレへと駆け込んだ。それと入れ違いに入ってきたのはサーシャだった。

「ふぃーつかれたー。若干綻びがあったわーやっぱり攻撃されてたわね」

「全然気付かなかったぞ」

「まぁねーはーねむーい」

 サーシャはぐったりと机にもたれた。窓の外は、うっすらと明るくなってきていた。

「うわー徹夜だわー」

「寝かせてやりたいが、まだ報告しあってないだろ。お、お嬢ちゃん顔色良くなったな、少し眠ったほうがいい」

「で、ですが」

「そうよ。寝れるうちに寝ときなさーい」

 サーシャは起き上がって、部屋の角にあるソファを広げた。実はベッドに変形できるものだったのだ。

「はいはい、ねたねたー」

 そう言って無理やり横にさせると、子守唄を歌った。

「わ、わたくしも……」

 あっという間にサーシャの子守唄に誘われてスーリャは眠りについた。


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