そのクッキーは?
チェインが持ち帰ってきたクッキーをダリとエリオットが調べたところ特殊な芋が使われていることがわかった。
「コリャーいわゆる、マナをおかしくするグエル芋だな。タックスイナ国では昔暗殺に使われてたっつう代物だ」
そう言いながら、粉々になったクッキーの一部を口にしながらダリが言った。
「ちょっと! 食べて平気なの?!」
「あぁ、俺ぐらいのマナなら平気だよ。それに王子たちがくって死んでないなら、致死量は使われてない」
「ん?それならどうしてマナをおかしくするのが暗殺? どういうこと?」
チェインが不思議そうにクッキーの破片をつまみながら聞けば、エリオットが納得したように頷いた。
「なるほど。事故に見せかけるためですか。確かにマナ暴走して枯渇すれば死にますからね」
「「うぇ」」
その言葉にチェインとロメリアは嫌そうな顔をした。
「ですが、この芋は治療にも使われますよ。マナが極端に弱い場合。活性化させるためにも使われますと書いてあります」
エリオットは図鑑の一節を見せながら言えば、ダリは頭を掻きながら苦い顔をした。
「あー。でも俺が知ってる医療行為だと、これはかなり瀬戸際の相手にだけだ。まぁ、痛みを和らげるためとか、死にゆく人と話したいっていう奴にしかつかわねぇよ。最後の活力って感じだな」
「なるほど。そうなると栽培は続けられ、流通経路もありますね」
サーシャの言葉にダリは頷いた。
「だが、これが国外に出てるなんていうのは知らないな。そもそも加工が手間取るんだよ。まずは切り刻んでに煮込んでから粉末にして、そのあと灰と混ぜて濾過する。そうしないと食えた代物じゃないんだ。芋のまんま食べようとすると、ニゲーし口の中を激痛が走ってのたうちまわるらしい。下手すると死ぬ」
ダリの言葉にみんな嫌な顔をした。
「そうですね。でも、クッキーの中に入っている成分はこれだけではありません。みてください」
エリオットは試験官を見せながら言った。特殊な液体に入った試験官はそれぞれ色が変わっていた。
「幻覚、興奮の反応があります。少量ですが思考低下もありそうですね」
「傀儡にするにはもってこいって感じかしら」
「そうだろうなー、このクッキー1つくらいじゃちょっと気分が良くなった程度だろうが、日頃摂取していたら蓄積されるだろうし、徐々に周りのいいようになるかもな」
「まぁ、あとは本人の性格でしょうね」
ダリとエリオットの言葉にサーシャたちは第二王子を思い出した。
「あー……噂通りのぼっちゃんタイプだよなー」
「うんうん。あれって元からじゃないかな?」
チェインとロメリアがここ数日みた王子の印象を言えば、サーシャも頷いた。
「確かに、あれは婚約者に劣等感を抱いている感じでしたね」
「エカテリーナ嬢が優秀ですからね。真面目な子です」
「エリオットが好きなタイプですよねー」
「サーシャ、語弊を招くような発言はやめてください」
ニヤニヤしながら言ったサーシャにエリオットが目ざとく注意した。
「へー……確かに真面目くんなエリオットとは気が合いそう」
「チェイン、やめなよ」
無言でチェインとエリオットが睨む中、サーシャはふと先ほど報告したときの内容を思い出した。
「ねぇ、チェイン。別のやつようって言ってた人がいたんですよね?」
「ん? あぁ、そういえば言ってたな」
「ということは王子以外も食している人間がいるってことですよね?」
サーシャの疑問に周りも考えるが、ほかに目立った生徒はいない。何より問題行動を起こす生徒がいたかと考えると、派閥があるためどれに該当するかもわかりづらい状況だった。
「見つけるのは難しそうですね。留学生全員を尾行するにも手数が少ない」
エリオットのつぶやきにサーシャも頷くしかなかった。
「そうですね。とりあえず王と第一王子に近づくのを直近の目標にしましょうか」
「えぇ。その方がいいでしょう。第二王子は要注意として監視対象にした方がいいですが」
「じゃー俺がそれやるわ」
チェインが手をあげて答えるとロメリアも手を上げて聞いてきた。
「はい、エカテリーナさんはどうするんですか? この感じだと第二王子にとって邪魔な存在なのってエカテリーナさんでは?」
「彼女には優秀な従者がいるから大丈夫でしょう」
ロメリアの質問にエリオットは答えると納得したように手を叩いた。
「あーあの熱烈な視線を向けてる従者! あれって小説みたいな禁断の愛っぽいですよね! 破談になったら二人はくっつくとか?!」
「「ロメリア……」」
いきなり乙女モード全開で語り始めたロメリアに周りは小さなため息とともに笑ってしまった。




