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転生神子(てんせいじんご)  作者: siro


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新たな神使い2

 チェインは男子学生が集まるサロンに向かった。やはり今日も、議論を交わしているらしい。

 そして今日の議題はマナと法術についてという、寺院を敵にしかねない内容だだった。出入りは自由らしく議論を聞きに来ているだけの生徒もいた。

 チェインも彼らと同じように椅子を壁側に持ってきて、聞くことにした。

「ねぇ、この議題大丈夫なの?」

 小声でチェインは近くにいた青年に聞いてみると、青年は視線を動かさずに答えた。

「さぁ? でも所詮学生達の議論だからね。影響力なんてないだろ?」

「まぁ、そうだけど」

「不味そうな内容になってきたら部屋から抜ければいいんだよ。僕たちはあくまで見学者だ」

「なるほど」

 つまりこの位置はいつでも逃げられる位置ということかとチェインは納得した。


 事前情報通り、マナによる運用を推し進めたい派にはタックスイナの留学生が貴族の青年の後ろに固まっていた。

「なぁ、タックスイナはマナ肯定派だったっけ?」

「ん? 国的には違ったはずだけどなぁ。最近タックスイナの留学生はエスペリーゼ共和国の制度に興味があるらしい。だからそういった貴族の派閥に入ってるんだよ。何しに留学してきたんだって僕は思うけどね」

「へー」

「まぁ、無駄だとおもうけどなぁ。エスペリーゼ共和国は確かに魔道具が多いけど、実際に利用してる人はほとんどいなかったし、マナ運用について肯定的じゃなかった」

「へー。行ったことあるんだ」

「まぁね、マナの運用は危険だってことがよくわかったよ。寺院が制限してる理由はそこだろう。酷使し過ぎた人間を見たことないから、あんなこと言えるんだよ」

 マナを有効活用するべきだと論じている内容について熱く語っているのを聴きながら、青年は鼻で笑いながら言った。法術が弱い人間であればマナを使えば確かに力が強く使えるが、それは一時的な作用だ。マナが枯渇すれば生死に関わるのだ。

 もちろんマナ運用について肯定した生徒に対して反対意見である生徒は、寺院が禁止する理由について述べ始めていた。


「……へーそうなんだ」

 チェインは素知らぬふりをしながら、この青年はかなり詳しいなと興味を抱いた。

「まぁーマナでしかできないものもあるらしいからね」

「詳しいだね」

「あー僕の家は代々兄弟の誰かしらが寺院所属をする決まりでね。だから、調べたんだ」

「なるほど」

 青年は淡々と語りながらも、視線はずっと討論をしている人たちを見つめ続けている。彼にとってこの会話はとても興味深い内容なのだろう。

 まぁ、魔道具の制限についての話から法術にたよらずマナを使う方法と色々出てきているが一進一退。安全な卓上でこそできる議論だとチェインは思った。


 いつまで続くのかと思っていると、ベルがなり終了となった。どうやら時間制限つきのようで、議論の詳細はつかず見学者達の投票で決まった。

 もちろんチェインは、マナ運用の方に手を挙げた。

 隣にいた青年は少し驚いた表情をしつつも、しばし考えて小声で忠告してきた。

「好奇心は猫をも殺す。気をつけたほうがいいよ。あいつらやばいことに手を出してるらしいから、彼らと一緒に飲み食いはしないほうがいい」

「ぇ?」

 チェインが驚くのをよそに、その青年は振り返りもせずに立ち上がって去ってしまった。

「……ふーん。僕と同じかも」

 あれは優秀な間者だろう、チェインはそう思いながら、彼の忠告を胸に刻み、留学生達に近づくことにした。


「おもしろいですね。僕もマナについての可能性をもっと知りたいです」

 チェインは興奮したように言えば、一人が答えた。

「君は初めて見る顔だな」

「はい! 僕もここに初めてきたので、面白い話が聞けると先輩に聞いてきました!」

「へー……どの先輩?」

「マナは増やせるんですか?! 僕マナの量がそんなに多くなくって、皆さんは多いですか? どのくらいあるんですか?! 先ほどの理論だとどのくらいのマナがあれば法術と同等の炎が出せるんですか?!」

 疑り深い生徒の問いを無視して、チェインはまくし立てるように聞いた。まるで空気の読めない青年のように興奮した姿で迫れば、他の生徒達が少し引き気味で止めてきた。

「まってくれ、まだ理論上で試してはいないんだ」

「そう、ここには寺院からきている教師がいるからね」

「どうしてですか? むしろお話されてみてはいかがですか?!」

「ダメだよ。マナの使用は禁止で終わりさ。そもそもこないだの法術の教師も追放されたしね」

「そうだね、王子が信用に値する人物といっていたけど、期待外れだった」

「へー……あの教授は王子とお知り合いだったんですね」

「あぁ、だがマナ量もそんなになかったからな」

「おい、そろそろいくぞ」

「あぁ、そうだった。喋りすぎたな。じゃぁな。俺たち他の課題もあるから」

 そういうと、慌てるように去ってしまった。


「えー!! もっと聞きたいですが!」

「また今度こいよ」

「じゃね」


 走り去っていく彼らを見送って、残念そうにしながらカフェスペースへとチェインは移動した。ちらりと見れば、貴族の生徒がこちらを警戒するようにみている。

(深く探りすぎちゃったかな? でもバレてる様子はないかな)

 そう思いながら、チェインは買ったコーヒーを飲みながら、ここ最近紛れ込んで仲良くなった生徒に声をかけて紛れてから、離脱した。


「〜♩〜♬」

 鼻歌交じりに校内を散策してから寮内に入れば、自習室を覗いたり休憩スペースや、書架スペースをみていく。やはりこう行った場所では何か怪しいことはしておらず、自室に入らないと無理かとチェインは思い直した。

 食堂に顔を出せば、先ほどの留学生のうち二人が何か作ってるところに出くわした。

 慌てて柱の陰に隠れて覗いていると、芋を煮詰めている様子。

(そういえば、飲食に気をつけろってさっき言われてたな。あいつらが作ったものか)


 それらは練られて、小麦粉と混ぜられると型に押し込めらてオーブンにいれらた。交代で火の番をされてしまい、チェインは近づけなかったが。クッキーを冷ます段階になって、彼らを呼びにきた生徒が現れた。

「王子がクッキーはまだかって」

「まだだよ。こんな熱いの持ってったら怒るだろ?」

「前のは残ってないのか?」

「あーあるけど。あいつが持ってるじゃないか?」

「あれは別のやつようだからダメだ」

「はぁ、わかったよ」

 そんなやりとりをすると、諦めてクッキーの上に布をかけて出て行った。

 布の上には”ルースターのクッキー!勝手に食うやつはころす!”と書かれた紙が置かれていた。

「ふーん。あっちあっち!」

 チェインは2枚ほど失敬し、熱いクッキーを布に包んでポケットにしまった。そして何食わぬ顔をしながら、王子達の部屋の前を通れば、笑い声が聞こえてきた。


「あははは。あー本当このクッキーは最高だな!」

「喜んでもらえて嬉しいです」

「はぁ、これを食べるとマナが溢れる」

 王子の言葉にチェインは急いで館に戻ることにした。


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