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転生神子(てんせいじんご)  作者: siro


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「あ! 精霊!!」

 エリオットは目の端に映った精霊に興奮し、サーシャとの会話をぶったぎり手を伸ばした。

「え、エリオットさーん?? ちょっと? え、無視ですか?? 疲れすぎて壊れてますね?」

 サーシャの呼びかけにも反応せず手に乗った精霊に釘付けだ。

「美しい!! わー可愛いですね!!」

 キラキラと輝く精霊がエリオットに近づき心配そうな雰囲気で周りを飛び始めた。

「話の途中なんですけどーエリオットさーんってダメだこりゃ」

 ニコニコと精霊を手に乗せて水ですか? 風ですか? わー木の精霊でしたか! っと興奮して精霊と話し始めてしまった。


 サーシャは仕方ないっと思いながら横に座った。

 エリオットのマナがここまで減るのをサーシャも初めて見る。いつもはマナの多さで近づけない精霊たちが近づけるほどだ、マナは精霊にとって食事だ。エリオットのマナを食べていた精霊にとっては大問題だ、心配にもなるのだ。

 逆に、あの銃は危険だとサーシャは思いなおした。悪魔を退治する調査の中で思い出したエリオットの特殊な銃。マナの大量消費で悪魔を退けられればいいが、それもできなかった。


 サーシャの目には悪魔の腕に傷つけたくらいにしか見えなかった。それも不意打ちだったからこそできた。もしも自分たちの目の前に現れ対峙したら、倒せる自信はない。

「マナしか効かないとか。厳しいですね」

 サーシャもあの時、法術でも攻撃できるかと思いやってみたのだが、どういうことか防御は可能だったが、攻撃は霧散したのだった。

「どうやって倒したんですかねー過去の神使いは」

 マナの大量消費が必要であれば、確かに記録としては残せない内容だ。それでも神使いは残すはず。それでも残っていないということは、別の方法で退けたはずだ。

 振り出しに戻ってしまいため息が溢れた。多分下っ端ならばエリオットの銃で倒せるが、悪魔本体となるとエリオットが危険すぎる。防御はサーシャが行うことができるが、防御一点というのは心もとなかった。

 それに攻撃が当たったということは、向こうも此方が悪魔を倒しに向かっているのに気づいたはず。今までは邪教徒を増やすことに専念している様子だったが、これからどうなるかわからないのだ。

 なるべく早く悪魔を排除したいが、いまだに悪魔がどうやって接触しているのか分からない状態。囚人たちの取り調べの報告書を読んでも啓示があったとしかないのだ。


「拠点は全て潰したと思いましたが、まだこの国を覆う穢れは消えていない」

 まだ悪魔の力が働いているのであれば、どこかに穴があるはずだとサーシャは思った。やはり、王族と合間見えないといけない様子に頭が痛くなり、額を押さえた。

 自然の中であれば、精霊を呼びおかしな場所や獣たちの様子を聞く事ができるのだが、人が多く住む場所は精霊もあまりいなかったり、寺院の敷地内から出たくないという精霊が多いのだ。

「……」

 ふわりと頬を撫でられた感触に顔を上げると、風の精霊がサーシャの頬を撫でていた。

「ありがとう」

 そう答えると、にっこりと微笑んで肩に乗った。優しい木々のさえずりと鳥たちの歌声を届け、人々の活気付く音を小さく届けてくれた。


『マナのおにいさんを酷使しないでね』

 そう精霊が囁くのが聞こえ、サーシャは頷いて答えた。

『もちろん』

『よかった。流転の女神様が弱ってしまうから絶対だめよ?』

『えぇ、そうだったわ』

 精霊の忠告にサーシャはすっかり忘れていた事を思い出した。マナは精霊たちの食事でもある、そして人の生命力だが、同時にマナの多いものが信仰心熱く祈れば祈るほど流転の女神自身の神力が増すのだ。

 だからこそ、無駄に消費させる事を寺院は嫌がるのだ。この世界は若く、力も弱い。神代の時と違い今はたった一人の神によって廻されているのだ。

「他の方法も考えないと。はぁ、困りましたねぇ」


 エリオットの顔色が良くなった頃に、タイミングよく迎えの神官がきた。そのまま今日は帰宅することにしたサーシャたちは馬車に乗り学園へと戻った。


「そうそう、サーシャ。私考えていたんですが」

 馬車の中ご機嫌な様子でエリオットは外を見ながら言った。


「今日はあまり無理しないほうがいいですよ。大量にマナを消費したんですから」

「えぇ、そうですが。王宮に侵入……間違えました。行ったほうが良いかと思うんですね」

 にっこりと微笑みながらいうエリオットにサーシャは苦笑しながら言った。

「その心は?」

「ずばり、私たちがおおっぴらに探れていない場所は王宮しか残っていないからです」

「確かにそうですが。今まで謁見が許されていなかったでしょ? 私たちのお手紙は握りつぶされてるみたいですし。そう簡単にいけませんよ」

 エカテリーナからの情報もあったので、一応エリオットが王宮へと手紙を出しているのだが、とても丁寧な忙しくて会う時間が設けられない、という内容の代筆の手紙しか返ってこなかったのだ。

「それがですね、今年の学園の夏のダンスパーティーは王宮で開かれるんですよ」

「へー」

「なので、その時に潜り込みましょう」

 軽くいうが、ダンスパーティーの時に出席するのは必ずエリオットになる。代表を務める立場でもあるし、何より女子生徒たちが踊りたがる相手でもある。そうなると、手が空いてるのはサーシャと護衛騎士だ。

「……わかったわよ。頑張るわ。隠密は苦手なのよねー」

「よろしくお願いしますね」

「はいはい」


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