表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生神子(てんせいじんご)  作者: siro


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/37

情報収拾


 サーシャは構内散策を続けていた。

 ふらふらと歩いていると生徒たちの噂話がよく聞こえるのだ。どことどこの子息令嬢がこっそり密会しているとか、学園の七不思議やら、教授たちの恋愛模様などなど。


「んー……目新しい話はないかな?」


 そう思いながらふらふらと歩いていると、熱い議論を交わしている男子生徒たちを見つけた。内容は現状の国をどう思うかという所だろう。

 面白いことに、議論している青年たちはすでに二分化されていた。


「おやー?」


 サーシャが知る限り、生徒たちは親の派閥と同じ派閥で争っているように見えた。

 貴族たちには今大きな派閥が二つある、王のもとに治世を治めようとする貴族たちと、エスペリーゼという共和国の議会制度を推し進める貴族の派閥だ。ちなみに寺院が仲良くしてるのはもちろん王側だ。


「その制度には欠点がある、養子縁組をしてしまえばどこの国の人間でも入れてしまう。他国の間諜が議員になった場合中から崩壊してしまうだろ! それでは我が国を守れない!」

「必ずしも崩壊に繋がるとは限らないだろう、それでは新しい風はふかない!国内の人間だからと愛国心が高いわけではないであろう、逆に他国だからこそ我が国の良いところをいっぱい知っていることだってある! このままでは外国との差が開いてしまう」

「不穏分子をそんなに入れられるか!!」

「その時になった時に対策を取ればいいだろう!」

「それでは遅い!」


 おー熱い熱い、と思いながらサーシャは男子生徒の顔を確認していた。男爵と子爵家の人間が多いなか伯爵も混ざっている、その中に平民出身者と留学生がいるが……とあることに気づいた。議会制度を進める貴族の生徒たちにくっつくように、ある留学生の生徒が多いことに……。


「ふむ……気のせいだと思いたいけど、あの国の留学生は今年十人だったはず。そのなかの五人はここにいると……」


 そっとその場から離れ、カフェテリアに向かうと、そこには女子生徒たちが課題をしながらお茶を楽しんでいた、その子達の中にもあの国の留学生の女子生徒が三人混ざっていた。自国の流行を教えながら、こちらは和気藹々としているが、こちらの女子生徒たちも議会制度を推し進めている貴族だ。


「ふむ……八人……」


 逆に一般生徒と交流をしているのは王政を支持している貴族と他国の留学生だ。サーシャはカフェテリアでクレープを買うと食べながら庭園へと向かった。


「ん〜クリームが甘くて最高ですね」


 庭園では軽いゲームスポーツを楽しんでいる生徒たちがいる。ざっと見た感じ、特に怪しい生徒も見られないので、職員がいる棟へとむかった。途中、エカテリーナの従者と侍女が私服で外に向かうのが見えた。

「二人でおつかいねー。何か危ないことでもするのかしら?」

 令嬢の護衛である従者まで付き添わせるということは、襲われないためともいえる。つまり侍女が持っているものは大切なものということだ。さしずめ、今日の出来事の手紙だろうかと勝手に思いながら、サーシャは建物内に入った。


 職員室に入れば、数人の教授が書類を書くためにいるだけで他に人はいなかった。

 サーシャは静かに棚がそびえ立つエリアに向かった。生徒名簿が入っている棚の前に立ち周り確認するも誰もいない。

 一応サーシャは法術を唱えて防音と少しだけ目くらましをしてから名簿を見ていった。


 そして、タックスイナの留学生名簿を見れば、今年から受け入れを開始をしたようで、やはり去年も一昨年も留学生名簿には入っていない。飛ばして数年前も見てみたがなかった。

「ふむ」


 留学生関連の書類には、この国の生徒を推し進めた人物の名が載っていた。それは、去年就任した理事官の一人。その名はズーエン。

 サーシャたちを嫌っているのを隠しきれていない理事官。つい先日の偽法術教師問題の関連人物だ。

「これは面倒そう」


 ズーエンはサウジ侯爵家の五男、爵位はついでいないが元の血筋は王家に連なる一族だ。といっても血が薄くなっている。派閥は中立のはずだが、あのズーエンの様子はどう見ても第二王子はだ。一族内で内部分裂が起きているのかもしれないとサーシャは思いながら書類を戻し、次の書類をパラパラと覗くを繰り返した。


 書類の中に王子の愛人の名前も目についた。こちらは、身分変更により苗字が追加されている。

「エイミー・フランケンねー」

 扱い注意マークが小さく入っている。これは他の授業でもやらかしているのであろう。サーシャはあまり職員室に足を運んでなかったのを悔やんだ。

 職員たちの会話はマニアックな話か、指導に対するぶつかり合いが多い場所のためサーシャは早々に近づかなくなっていたのだが。

「これは面白い話が聞けてたかも。今後はちょこちょこ顔をだすか」

 そう思い直していたところで時間切れとなった。誰かが話しながらこちらに向かってきているのが聞こえ、サーシャはそれ以上の探索はやめて静かにその場を離れるとまたふらふらと歩き出した。


「こういう時の勘は大事ですね〜」

 歩きながらたどり着いたのは、研究会が行われている小部屋エリアだ。風通しを良くするために窓が開けられているおかげで会話が聞こえてきていた。

 独特の訛りのある声が二つ。タックスイナ国の訛りだ。残りの二人は、どうやら研究会に入っている様子にサーシャはこれで十人ちょうど揃ったと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ