夜の運動
サーシャとエリオットはここ最近のストレス発散と言うなの、邪教とのアジト潰しに精をだしていた。
「合法的に物を壊せるって最高よね」
「こぇー発言するなぁ?!」
サーシャは嬉々として杖を振り回し、物理で邪教徒をノックアウトしていった。その細腕でどうやって?! と思う暇もなく。法術を唱え、勢いよくみぞおちに決めていく。
「はぁー! もう本当! どうして、こう! 言葉が通じない輩がおおいのか!!!」
「話す前に、物理で倒してるけどな」
「あぁあ?」
「なんでもなーよ。あっちはあっちでこえーけど」
ダリはそういうと、ちらりと背後を見た。
周りを取り囲むように穢れてしまった犬達がいるのだが、それらを的確に撃ち殺していくのは、高台で銃を構えるエリオットだ。
打つスピードが尋常じゃないっとダリは心の中でつぶやきながら、連日のアジト潰しに付き合っていた。
「こういうのは、下っ端がやってもいいと思うんだけどなー」
ダリの言葉は二人には届かなかった。
一応地元の寺院騎士たちも行なっているというのに、という言葉を飲み込んだ。
*
そんな暴走気味の神使いの子守をしているダリと打って変わって、ルースは王宮の城内に忍び込んでいた。
(ふむ、王がいる場所は警備が厳重。第一王子は、外側から見ると、兵の数は少ないが……違う意味で面倒だな)
夜に紛れて、様子を伺う者が多い。
外側から行くのは、まずそうだと判断したルースは、まずは使用人部屋に忍び込み衣服を失敬した。そして上から服を着込むと、そのまま使用人通路を通って第一王子の居城へと向かった。
(厨房は、誰もいないが……この匂い薬草か)
ぐるりと見て回ると、薬になる葉と一緒に、毒にもなる葉も混じっていた。判断は難しいと思いながら、次の場所へと向かうと、途中使用人とすれ違った。軽く会釈をしながら通り過ぎる。
(同業者ですねー……何も仕掛けてこないと言うことは、向こうも探りを入れてるだけでしょうね〜)
ルースはそう判断しながら、思わず笑みを浮かべた、第一王子の居城はなんと不穏な気配の多いこと。
王子の部屋の前には流石に兵がいて入れそうにもない状態。だが、使用人通路から屋根裏に伝うと、王子の部屋の真上に来れた。
(流石にここは硬い木で作られていて穴は開いていないと……ふむ)
覗き穴でも誰かが作っているかと思っていたが、アテが外れ、ルースはしばし考えると場所を移動した。次は、あえて聖堂に向かったのだ。そこは誰の気配もなく。静寂に包まれていた。
「神慮めでたく 使命により お導きを」
ルースが祈りを捧げると、女神像の足元が淡く光った。ルースはそこに触れると、瞬時に違う場所へと転送されたのだった。本来は王家が使う、脱出用の通路を開示してもらえたのだ。
(やっぱり、王城はすごいですね。古代の秘術が残されていましたか)
そして脱出通路を登っていくと、王子の寝室にたどり着いた。隙間からの覗くと、人がいて無理そうだが、王子は見えた。
やせ細った青年は、小さく神への祈りを捧げる祝詞を紡いでいた。それを、ただ夜番の侍女がきいているのだ。
(ふむ……第一王子は星持ちか……侍女は、一般人ぽいがつけている腕輪は防御の魔法、と言うことは王子の護衛か)
今日はここまでにしておこうと、ルースは早々に撤退した。だが、途中で第二王子の宮の前を黒塗りの馬車が通り過ぎていくのを目撃してしまった。
(いかにもといった馬車だな……気になる)
ルースはとりあえず、馬車にこっそりと法術で印をつけてから距離をとってあとをつけた。だが、馬車はトンネルの途中で、上と下と道が折り重なる場所で姿を消したのだった。
上の道には誰もおらず。そしてトンネルの出入り口付近も気配はなくなっていた。
(印の気配は……郊外に行っている。今日はここまでにしといたほうがいいですね)




