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転生神子(てんせいじんご)  作者: siro


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袖の下

「サーシャさん!! 貢物ですよ!!」


 そう言って、ニコニコ笑顔のダイが部屋に入ってくると、サーシャ達は雁首そろえて卓上の資料を睨んでいた。


「ん? ダイどうしました?」

「エリオットには話しかけてない……サーシャさん」


 ボソリとダイが不満を言えば、エリオットは笑顔のまま、ピクリと眉を動かし、肘でサーシャを突いた。


「ん? どうしました。あぁ、ダイ。あら素敵な箱。誰かからプレゼントですか?」


 サーシャからやっと反応をもらえてダイは嬉しそうに、先ほど貴族の令嬢から受け取ったと報告をしてきた。その内容を聞いて、サーシャはとある人物が頭の中で思い浮かんだが、その場では話さず、ついでにと頂いたお菓子を茶菓子がわりにして休憩となった。


 ご機嫌にダイはサーシャへ今までの報告をし、お菓子を数口食べると満足げに去って行った。きっと竜たちにも同じように報告をするのだろう。

 そしてこの場に、不愉快そうな表情を隠さないエリオットと、疲れたという顔をしたダリに挟まれてルースが苦笑し、ウェンは頭を抱えてい流状態が残った。サーシャは面白そうに男たちを見ながら残りのお菓子をつまんでいく。


「彼は少々おしゃべりなようですね」

 エリオットのトゲのある言葉に、ウェンは慌てて弁解した。


「私といるときは、そんなにおしゃべりではないんですよ。いつも竜のお世話を熱心にしていますし。それに日記を書くのが楽しいみたいでして」

「私の前ではいつもこうよ」

「そうなんですか!?」

「そう……だから日記を進めてみたのだけれど。人によって違うのかしら?」


 サーシャはため息をつきながら、高級なクッキーを口にした。バターと砂糖がたっぷりなクッキーは平民が食べるクッキーよりも何倍も高い。それこそ服を一式揃えられるくらいする値段だ。

 それだけの物を用意でき気軽に渡せるのは高位貴族のみ。そして神聖文字で書かれたお手紙付き。幸い、ダイは手紙には気づいていなかったが。


「困りましたねー最近ネズミが増えているというのに、彼は格好の餌になりえますよ」


 ルースの言葉にサーシャも小さくため息をついた。


「彼は優秀な竜の使い手ですよ。彼を外すとウェンの負担が増えちゃうし、寺院に手の空いてる竜の使い手はいないです」

「私が言って聞かせます」

「ありゃー言ってどうにかなるもんかー? あれだろ? サーシャのファンだと思うと喋りまくるんだろ」

「……サーシャのファンですか」

 ダリの言葉にエリオットがモノクルを外して目頭を揉み始めた。


「なんですか! その反応。結構私のファンは寺院にいたんですよぉ? エリオットさん?? あなたは顔でファンがいましたがぁ!」

「何も言ってないですよ。それに彼の日記で、かなりあなたの熱狂的なファンだということは存じていますよ」

「くっ……なんかムカつく言い方」

 殴るふりをするサーシャをルースが抑えた。


「まぁまぁ、サーシャさん抑えて。問題はどこかの貴族令嬢が接触してきたということですよ」

「あぁ、彼女なら平気でしょ。星持ちですし」

「誰だが検討がついていたんですね。」

「えぇ、こんな高級菓子用意できる貴族なんて限られてますからね」


 そう言いながら、手紙を出した。透し彫りで家紋が入っている紙でつくられている。


「なるほど。では、様子見ですかね……。ダイに接触する人には注意してください、ウェン」

「わかりました。気をつけておきます」

「なんだかキナ臭えーなー」

「やめてよ、ダリが言うと当たるんだから!」


 ダリのつぶやきにサーシャが苦情を言うと、ルースが苦笑しながらいった。


「サーシャさんのその反応が返ってくるとますます当たる率が高いですよね〜」 

「うそ!」

「そうなんですか?」

「そういやぁーそうだなぁー」


 驚くサーシャに対して、エリオットは半信半疑、ダリは身に覚えがあるようで顎を撫でながら考えた。そしてサーシャは頭を抱えて叫んだ。


「なんなんですか、もう。この国問題ありすぎじゃないですか?! だから私は孤児院から出たくなかったんですよー!」

「子供の相手は疲れるっていってたじゃねーか」

「確かに、疲れますよ。クソムカつくこともありますけど、素直ですからね! 大人と違って!! 癒しもしてくれるんですよ! 大人と違って!」

「あははは、そりゃーちげーねー」


 サーシャは昔いた孤児院を思い出しながら、手紙を開いた。内容は先日の補講授業に対してのお礼と、お茶会にご招待したいと言う話。だったが、紙に何かあることに気づいて透かし見ると。


「なるほど……」


 どう言うわけか、文字の上にマークが付いていた。そこだけを読むと、王子たちをお調べください。という文章になったのだ。


「どうしましたか?」

「きな臭さが倍増しました」

 エリオットに手紙を渡せば、サーシャと同じように手紙を透かし、文章に気づいた。


「達……ですか。派閥の感じはどうでしたっけ?」

「第一王子は前王妃の息子です。亡くなったため後ろ盾も弱く、病弱で表舞台にほとんど立っていませんね。亡くなるのは時間の問題だとか」


 エリオットの質問にルースがそう答えると、サーシャは悪い笑みを浮かべて聞いた。


「ふーん。ルース的に忍び込めそう?」

「どうでしょう? 貴族達が出入りするところは簡単でしたので、チャレンジすれば行けそうな気がしますね。ちなみに、第二王子は余裕でした」

「あら、流石ルース。じゃーよろしく」

「はい」


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