5月13日 ある御者見習いの手記
●Δαίσιος ιγ'
今日はすごい日だった。
キリエッスキリーが通う学園にまさかの変質者が乱入するなんて! 警備兵の首は飛んだな。
しかもそいつ、裸な上に刃物を振り回していてやばかった。
しかも女子生徒が多いカフェで暴れまわり、逃げ惑う生徒達を追いかけ回して中庭にまで移動したとか、でもそこに現れたのは! サーシャさん!!
今日も肩までに綺麗に切りそろえられた淡い髪の毛は日差しに反射してキラキラと宝石のように美しく、淡い茶色の瞳は神秘的な玉のよう。
今日も女神のように神秘的なサーシャさん。美しいです。
手にはいつも持っておられる、神使いの人しか所持できない金とルビーとダイヤが足られた法具の杖を持って、小首を傾げる姿はまるで神殿に飾られた大地の女神のようです!!
あ、話が脱線した。
そう、今日も麗しいサーシャさんが「神慮の導くままに」とリンと透き通る声と共に杖を振りかぶり、変質者の股間に杖の先端に付けられた大きな玉がクリティカルヒットし、変質者を吹っ飛ばしてしまった。
とても素敵です! かっこいいです。
「貴方達、何を内股になってボサッと立っているのです、さっさと縄を持ってきて、あの侵入者を縛りなさい」
男子生徒達に杖を向けてサーシャさんがいつも通りのトーンで話しかける姿も凛々しくて思わず見とれてしまいます。それなのに、そいつらは股間に手を当てて動きもしない! まったくだらし無いですね。何を学園で習ったのか!
「ほら、早く」
と急かされるなんて羨ましい。サーシャさんは美しいでのお怒りの顔も綺麗です。
「まったく今時の若い男はダメですね。女子生徒を助けもしないで。みなさん大丈夫ですか?」
と女子生徒に向ける笑顔の眩しさ!!
「「は、はい。サーシャ副教授」」
「なら良かった」
ニッコリ微笑むサーシャさんやっぱり麗しいです。さらりと流れる綺麗な髪。
僕と目があうといつもの優しいふんわりとした笑顔です。
「よくありません」
と言ってそれを壊したのは、生真面目な神使いのエリオット!! モノクルをつけた、ムカつくほど男前な人でいつもサーシャさんと一緒にいる……、まぁ神聖学の教授でサーシャさんが補助職員だから仕方ないんですけど。
しかも身長が高いとか、僕だってあと数年すれば兄と同じくらい背が高くなるはず。だいたい、一緒に任命されたからと言ってサーシャさんにあれこれ指図するのは許せないです。
やっと騎竜の御者見習いになって、ウェン兄さんの所に来れたのに! 寺院にいた頃からずっとサーシャさんを追いかけてたんですよ。寺院は男女は別々の区画で生活して柵越しにしかその姿を見れなかったのに!
サーシャさんが神使いに任命されて、キリエッスキリーの学園についたと聞いてどんなに焦ったか!
だいたい護衛騎士があのガサツなダリとかありえないですよ! オーガみたいな見た目と中身も最低なやつめ。
百歩譲ってルースさんは、まぁなんか影薄いしいいか。
だいたい、サーシャさんが俗世に関わるなんて……(以下続く)