「申し訳ありませんがホモ以外はお帰り下さいませ」と、言われたので帰ろうとしたら「貴方はホモなのですからお帰り頂かなくても結構です」と言われました。正直ホモだけと帰りたいです……。
のほほんとした田舎の中学で過ごした生徒会の記憶を引きずりながら、俺は気軽にその席へと着いた。
「えー、それでは皆様お集まりのようですので、定刻より僅かに早いですが始めさせて頂きます」
眼鏡の奥に光る鋭い瞳をより尖らせ、生徒会長らしき男が口を開いた。それまで吞気にしていた俺に、少しだけ緊張感が走った。何故なら中学の生徒会なら「どんれ、やっぺした」が始まりの挨拶だったからだ…………。
「申し訳ありませんがホモ以外はお帰り下さいませ」
生徒会長が発した言葉に、皆が「は?」と言わんばかりの顔で生徒会長を見つめる。三年生が引退した今、新たな生徒会の発足の第一歩で、まさかホモ以外は云々かんぬんが出るとは誰もが予想だにしなかったからだ。
「アホくさ、俺抜けるわ」
坊主頭の野球部が席を立つ。
「どうぞホモ以外はお帰り下さいませ」
生徒会長はそれを流し目で見送り、次々と見切りをつけたかのように、人が消えてゆく。
俺もその流れに混ざり席を立つ。
──ガッ
しかしそれを許さぬ者が居た。
「貴方はホモなのですから、お帰り頂かなくても結構です」
生徒会長に腕を掴まれ、俺は好奇の目に晒されることとなった。こ、これじゃ俺がまるでホモ扱いじゃないか……!!
その間にも次々と他のメンバーが消えていき、ついに残ったのは俺と生徒会長と、大和撫子風の女子とギャル風の女子だけだった。
「君たち……」
「私は御ほもですので……」
「アタシ? 当然ホモだぜ」
何を言っているのか分からない。何故女子がホモなのか…………その疑問に、俺はある答えを閃いた。
(もしや、ホモとは何かの隠語なのでは……!?)
どう見てもおしとやかでホモの品性を微塵も持ち合わせていない女子と、制服の上からでもあからさまに主張をしている乳がデカくて、遊び慣れていそうなホモとは対局にある女が『ホモ』という言葉を使うからには、それなりの意味があるはず……!!
俺はちっちゃい脳みそでその何かを必死に考えた。
「では、残った我々だけで会議を始めるとしましょう」
生徒会長が言葉を発するなり、制服の上着を脱ぎ始めた。
生徒会長の体は意外にも引き締まっており、程良い筋肉は好感が持てるほどに輝きを放っていた。
「気になりますか?」
「筋トレでもしているのですか?」
その答えに生徒会長は首を振った。
「ホモを少し囓った程度さ」
またホモだ。やはりホモとは何かの暗喩。この高校の生徒会では代々そうやって、裏で何かやって来たのであろう。
「君もホモなんだろ?」
「……はい」
よく分からないままに、俺は返事をした。
大和撫子風の女子が「勉強になります」と、ノートを取り出し何かを書き始める。
「ならば君も脱ぎたまえよ。ココにはホモしか居ないのだからね……」
よく分からない指示を出される。ホモが未だに何の事だかさっぱりたが、脱ぐ理由が分からない。
「ははぁん? さては君、ペーパーホモですね?」
「?」
「初めてとは、これはこれは初々しい人が現れたじゃあありませんか。実に好ましい限りです」
そう言ってズボンまで脱いだ生徒会長は既にパンイチである。一体ホモとは何なのか……俺の小さな脳みそでは、未だにその答えが出ない。
横目で大和撫子風の女子が書いているノートを覗き見した。すると筋肉を30%増しにされた生徒会長が目を潤ませた俺と全裸同士で絡み合っている画が、惜しげも無く描かれていたのであった!!
「!?」
そしてギャル風の女子と描かれた画について「尊い」だの「素晴らしい」だの「ウホッ」だの騒ぎ始めたのだ。
「あちらはあちらで盛り上がっているようだね」
「え、ええ……」
ジリジリとにじみ寄る生徒会長の顔にはただならぬ気迫が満ちていた。
「さあ、私に身を委ねなさい」
生徒会長が手を広げる。大和撫子風の女子がペンを握り描く姿勢を見せる。ギャル風の女子はスマホを此方へと向けている。
間違いない。
生徒会長は──
──ただのホモだ!!!!
「失礼致しました!!」
──ダッ!
俺は走り出し扉に手を掛けた! しかし扉は固く閉ざされビクともしない!!
「無駄です。ホモタイムなのですから……終わるまで開きませんよ?」
「な、ななな……!?」
生徒会長の魔の手が俺の手を掴む。大和撫子風の女がペンを走らせる。ギャル風の女がフラッシュで写真を撮りまくる……!!
「止めてくれ……止めろ……止め…………アッーーーー!!!!」
俺はその日、新たなる道に目覚めさせられた。そして生徒会副会長として、敏腕ホモを振るう事となった。