第92話 魔物の巣 帰宅②
お母さんの体の周りに黒い霧が発生した。
これは呪いだわ!!
私は黒い霧をむんずと掴んで魔力を使って語りかける。
『あなたは何の呪いなの?』
『えっ!これって私に話しかけてるの?』
『そうよ!大人しくしなさい。このまま握り潰す事も出来るからね』
『…ば、化物』
『誰が化物よ!さあ、質問に答えなさい!』
『わ、私は、若返りの呪い(弱)です。お願いです!殺さないで!!』
若返りか…、お母さんは喜びそうだけど。
きっとメリットばかりでは無いだろう。長い月日で鍛えあげた体や反復して覚えた体の動きなどは失ってしまうだろうし、子供や赤ん坊に戻ればそれこそ命の危険が発生する。
確かに怖い呪いだわ!
『どれくらい若返るのかしら?』
『に、人族で言うと20年程です!』
『じゃあ良いわ。そのまま呪って頂戴』
『あっ、はい……何だったんだろう?』
お母さんなら20代後半くらいまで戻るかしら?
昔、お母さんに歳を聞いたら無言でお小遣いを減らされてしまったので、実際の年齢を知らないのも無理はないのだ!
「お母さん、若返りの呪いだって!」
「ほ、本当に?…き、来たわ!私の時代が来たのよ!!」
私が呪いを解放すると、黒い霧がお母さんの体に入っていった。
すると、お母さんの顔が少しずつ若返っていく。
見慣れていた顔が変化していくのは結構怖いわね…
そして、暫くして変化がおさまった。
美来が気を利かせて手鏡を持ってきていた。
「はい、お母さん。お母さんの若い頃ってこんな感じなんだね」
お母さんは恐る恐る顔の前に手鏡を持っていった。
「…まさか本当に若返るなんて!こ、これならパート先の鈴木くんと…。綾、美来、ごめんね。私は今から一人の女に戻るわ!!」
お母さんが不穏な発言をして、家を飛び出して行きそうだったので背後から手刀を食らわせて昏倒させた。
「……危ない所だったわね」
主に鈴木くんが!
その後、目を覚ましたお母さんに家族に迷惑をかけない事を約束させた。
たぶん、放っておいたら離婚調停まっしぐらである…
若返り自体は「凄いコスメを使ってる」で誤魔化せるだろう。
最近は肌がピチピチの40代は珍しくないからね。
「ほ、本当に真由美なのか?確かにこの頃が一番可愛げがあったが。…あっ!!」
帰ってきたお父さんが本人を前に自爆していた…
色々あったが、葛木家は今日も平和よ!!




