第84話 最悪の終焉
「ここが異世界か…って、魔王様!?」
「外の景色見たらもっと驚くと思うわ…って、何で居るのよ?」
屋敷の自分の部屋に戻ると魔王がソファーに座って本を読んでいた。
「ああ、おかえり。丁度暇だったのでな…。だがこの本の登場人物は何故男ばかりで距離が物凄く近いのだ?」
「おほほ、魔王ったら何を言っているの?本なんて持って無いじゃない!」
「!!何だと…!?まさか…時間を止めたのか……」
魔王がわなわなと震えている。
危なかったわ!ちゃんと隠しておかないとダメね。
「じゃあ、俺達は行くな!クーンさん、行きましょう!」
「ヒロキさん…。はいにゃん♪」
「………」
2人は手を恋人繋ぎして出ていった。
取り敢えず、兄ちゃんが学園寮のクーンの部屋に一緒に住む訳にもいかないので、私からの餞別としてクインハルト家所有の空家を極安家賃で貸してあげる事になった。
クーンはエレンちゃんの侍女の仕事もあるし、学園寮からかなり近い場所なので問題無いだろう。
「……今のはアーシャの兄君ではなかったか?」
「そうなの、クーンをあっちに連れて行ったら何故か付き合うことになっちゃって…」
「良いのかそれで…」
「何で私の周りばかり色恋沙汰に発展して…、私には春は来ないのかしら?」
私がチラッと魔王を方に目を向けると、魔王は既に居なかった…
いつの間に!?何か急用でも出来たのかしら?
≪魔王視点≫
危なかった!!
我の危機予知スキルが全力で働いたおかげで、今までで一番最速で魔法を行使出来たかも知れん。
勇者パーティーとの戦いでも不要だったスキルだが、我はこのスキルを覚えていた事に心から感謝した。
そう…我は最悪の終焉を回避出来たのだ!
「魔王様、お帰りなさいませ。お早いお戻りの様ですが…」
「リトルリアンか…。うむ、危うい所であった。やはり厄災には抗わず回避する方が懸命だな」
「?」
リトルリアンが首を傾げていたので、近くにあったその頭を撫でてやった。
急な安堵感からか、手が勝手に動いてしまった様だ。
「ま、魔王様!何を!?」
「不快であったか?すまぬな」
「い、いえ!急だったので驚いただけで……。むしろご褒美と言うか、ずっと撫でて貰いたいと言うか…」
リトルリアンが何かごにょごにょと言っていたが後の方は聞き取れなかった。
しかし、あのクーンがエレンさんの侍女兼護衛をすると言う話を聞いた時は安心したが、アーシャの兄君と付き合うとなると、エレンさんの身の安全に少々不安が残るな…
「リトルリアン!お前に重要な任務を与える!!」
「は、はい!」
「エレンさんの身の周りを警護し、彼女の身を守るのだ!」
「えっ?」
「直接で無くとも良い、我に即座に伝えられれば問題無い」
「か、畏まりました!」
これで一先ず安心であるな。
リトルリアンは不貞腐れていた…
何で自分の好きなお方の想い人の護衛などしなくてはいけないのかと。
そして、清掃業者マオーの部下を装ってエレンに接触する。
だが、その姿を一目見て確信した。
この方こそが魔王様の正妻に相応しい!!と…




