第83話 一目惚れの瞬間
クーンを連れて自宅へ戻った。
「お父さんと兄ちゃんは仕事かな?」
まだ夕方だったのでお母さんと美来しか居ない様だ。
「お帰り、お姉ちゃん!わっ!猫耳の人が居る!!」
「ただいま、美来。今日は猫獣人のクーンを連れて来たわ!」
「初めまして、私はクーンと申しますにゃん!エレン様の侍女をしていますにゃん!」
「元々は私付きの侍女だったんだけどね~」
「…アーシャ様の様な……崇高なお方に仕えるには私の実力が足りなかったですにゃん!」
「今の間は何?」
「何でもないですにゃん。アーシャ様は気にしすぎですにゃん!」
「何か険悪なんだけど!?…私は妹の美来です。宜しくお願いします!お母さ~ん!メイドさんが来た~!」
「綾のお客さん?あら、本当にメイドさんだわ!私は綾の母の真由美です。今日はゆっくりしていってね♪」
エレンちゃんと魔王のインパクトが強すぎたため、2人はもう既に慣れてきていた…
自己紹介も無事?に終わり、4人でティータイム。
「わ、私がやりますにゃん!」
「クーンさんはお客様なんだからゆっくりしててね」
普通は侍女が給仕されることは無いから落ち着かないのだろう。
私達が雑談していると、兄ちゃんが帰って来た。
「綾、また誰か連れて来てる…の……か」
兄ちゃんがクーンを見るなり固まってしまった。
「…兄の弘樹よ」
代わりに紹介しておいた。
「クーンと申しますにゃん。お邪魔していますにゃん」
その声に兄ちゃんはハッと我に返る。
「…………好きだ」
自分の兄の一目惚れの瞬間を目にしてしまった。
至極どうでも良いんだけど…
兄ちゃんに廊下に連れ出される。
「何なんだよ!俺にどうしろってんだよおおお!!」
「好きにすれば!?」
「クーンさん…。名前すら愛おしい。あの声で俺の名前なんて呼ばれたらどうなるんだ?死ぬのか?」
「知らないわよ!勝手に告白して玉砕すれば良いじゃない!!」
「そんな酷い事言うなよ!綾が間を取り持ってくれよ~!」
兄ちゃんが私にすがり付いて懇願してくる。
流石にキモいわね…
「分かったわよ!」
「本当か!?」
私はクーンを廊下に呼ぶ。
「クーン、私の兄ちゃんが貴女に一目惚れしたみたい。まあ、お互いの事を何も知らない訳だし、取り敢えずちょっと2人で話して頂戴」
「ちょっ!」
「…えっ!私に一目惚れですかにゃん?」
「そうよ、大方猫耳とか尻尾に惹かれたんでしょう」
「そう言えば、クーンさんに猫耳と尻尾が付いてるな…」
「えっ、今更?兄ちゃん、猫獣人だから興奮してたんじゃないの?」
「猫獣人!?」
「良かったにゃん。アーシャ様のお兄さんは普通の人みたいだにゃん!」
まあね、フラウは特殊過ぎるから…
「でも、兄ちゃん。クーンは巨乳じゃないけど大丈夫?」
「…俺は幼い頃の幻想はもう捨てる!クーンさんはクーンさんだし、それに凄く魅力的だ!!」
「そんな事言われたの始めてにゃん…」
あれ?なんかクーンの兄ちゃんを見る目がうるうるしてる。
「こいつが言った巨乳云々は置いておいて、改めて俺の彼女になってくれませんか!?」
兄ちゃんが頭を下げて右手を差し出した。
「嬉しいけど、貴方と私は住む世界が違うにゃん」
「クーンさんと一緒に居られるなら何処へでも行きます!貴女と共に人生を歩んでいきたい!!」
「ヒロキさん…。嬉しいですにゃん!こちらこそ宜しくお願いしますにゃん♪」
あれ?おかしいな。兄ちゃんがフラれてこの話は終わりの筈だったのに…
「お母さん!兄ちゃんが!!」
「あら、働きだした息子がずっと家に居るのも微妙だったから丁度良いわよ。クーンさん、息子を宜しくお願いしますね!」
「お義母さん、ありがとうございますにゃん♪」
「あら!お義母さんだなんて♪弘樹、孫が出来たら見せにきてね♪」
「………俺、帰って来なくて良いかな」
「………」
初の異世界カップルが誕生してしまった。
このままじゃ『異世界で始める同棲生活!~そして結婚へ~』が始まってしまうわ!!




