第8話 あいつ馬鹿なの!?
「王族を気絶させるなんてヤバイわね」
「ど、どどど、どうしよう!?」
気絶した殿下を復活させるべく、エレンちゃんが回復魔法を使った。
まだ、回復魔法は覚えたてで効果は余り無いらしいのだが、私がその様子をじっと見ていると「そんなに見られたら照れる…」と、はにかむエレンちゃん。
「ここは…天国か…?」
エレンちゃんに膝枕されていた殿下は目を覚ました瞬間、彼女のはにかむ顔を見て、また逝ってしまわれた…
その後は普通のお茶会になったが、緊張が解けたエレンちゃんが笑顔になる回数が増え、殿下が意識を飛ばす回数も増えた。
この国の将来がとても心配だ…
聞けば、殿下も魔法学園の同学年らしいのだが、別のクラスであまり授業も出席していないらしい。王族としての仕事や行事もあるから仕方がないのだろう。
だが、今後は時間を積極的に作り真面目に授業を受けるそうだ。
「やはり自分も学生である以上、本分を忘れてはなるまい。同じ学友同士なのだ、今後は他の生徒とも親睦を深めていこうと思う」
何が学生の本分よ!ただエレンちゃんに会いたいだけでしょうが!
さりげなく身分など気にしない風を装ってエレンちゃんの好感度を上げようとしてるし…
それより、最早名前すら出てこないエリミア嬢が不憫すぎる…
もし出会ったら優しく接してあげよう。
幸い今日の所は大人しく引き下がるみたいだが、また暴走しないように釘を刺しておこう。
「殿下、差し出がましいようですが申し上げますと、エレンは高貴な身分の方とのやりとりに慣れておりませんので、くれぐれも二人きりで会う機会などを作らず、必ず私を介して下さいますようお願い致します。もしこれを破れば二度とエレンと会うことは出来なくなるとお考え下さいませ」
「あ、ああ、分かった…」
顔を近付けて凄んで言ったので、効果はあったようだ。
勿論、エレンちゃんも殿下を好きになったらちゃんと身を引くけどね。
帰り道、エレンちゃんに今日の事を謝る。
「エレンちゃん、ごめんなさい!私のせいで変なのに気に入られてしまったわ」
「殿下を変なの扱いはダメだよ…。逆に私なんかを気に入って貰えて嬉しかったし。それに殿下に意見してたアーシャはカッコ良かったよ♪」
なにこの天使…。やはりあんな奴には渡せないわ!!
「それにお土産も貰っちゃったし♪」
エレンちゃんの手には小さい箱が握られている。
「これは、態々城までご足労頂いた詫びだ。気にせず受け取ってくれ」
殿下が別れ際にそう言ってエレンちゃんの手にスッと箱を握らせた。
性格に難有りだが、その一挙手一投足は様になっているのがムカついた。
「開けてみても良いかな?」
「エレンちゃんが貰った物だし、良いんじゃない」
エレンちゃんが恐る恐る箱を開けると……色とりどりの宝石が詰まっていた!
あいつ馬鹿なの!?