第5話 さて、どうしましょう!
さて、どうしましょう!
全く魔法の発動の仕方が分からないわ。
魔力の練り方はおろか、詠唱が必要なのかすら分からない。
「たは~♪魔法の使い方忘れちゃったから教えてくれない?」と聞きたいが、絶対に不審がられるだろう。
既に若干の手遅れ感はあるが、自分から進んで怪しまれにいくなんてただの変態だ。
転生初日の件?あれは夢だったのよ…
それに今の私は公爵令嬢なんだから、こんな困難くらい澄まし顔で切り抜けてみせるわ!
先ずは呼吸を整えて、おへその下辺りにある丹田と言う所に力を入れる。目を瞑って魔力が体内をグルグル回るイメージだけを意識して他は何も考えずに無心になる。
おお!何だか体がポカポカしてきたわ!
にわか知識でも何とかなるものね!
周りが騒がしい気もするが、魔法はイメージが大事って誰かが言っていた気がするから、ここで止める訳にはいかない。
イメージ…、イメージ…。
頑張ってイメージしていると、不意にフラウ君の顔が頭に浮かんだ。彼のあの怯えた仔犬の様な表情が鮮明に思い出される。
もうそうなると他には何も浮かんでこない。このまま行くしかないわね!
今よ!!
右腕に全神経を集中させ、目をカッ!と見開き、魔力であろうポカポカを解き放った!
「あ~ん♪」
するとそこには大きく口を開けて餌を求める雛鳥の様な寝間着姿のフラウ君が現れた。
「あ、あれ?キャサリン?」
フラウ君は餌が口に入れられない事に不思議がって、目を開けて周りを見渡す。そして目の前にいる私と目が合った!
「あ、あく…お嬢様が何故此処に?」
「此処は学園よ…」
「えっ?私はお屋敷に居た筈…」
まさか私が学園に行っている間に、私付きの執事と侍女が乳繰り合っていたなんて…
私はショックを隠しきれなかった。
やはりイケメンには彼女が居る説は正しかったのね…
略奪愛やネトラレが大嫌いな私は潔く去る事にするわ。
「先生、魔法の発動に失敗してしまいました。調子が悪いので保健室で休んできます」
「…お、おお。それより今のは召喚魔法…なのか?」
先生の言葉は耳に入って来なかった。
フラフラと歩く私にエレンちゃんが肩を貸してくれた。
やはり持つべきものは親友ね!
エレンちゃんが家族の事を心配しなくて済むように、エレンちゃんの村を全面的に支援するようにお父様にお願いしなくちゃ。
~その後、村の周りに城壁に匹敵するほどの堅固な壁が設置され、公爵家の騎士団一個中隊が配属された。
流通や居住環境が次々と整備され、村が街へと変貌する様を村長は黙って見ていることしか出来なかった…~
「エレンちゃん、今度の休みに遊びに行かない?あっ、やっぱりバイト入ってるかな?」
「ううん、何か実家から仕送りはもう要らないって言われちゃって、バイトの日数も減らしたから大丈夫だよ」
「本当?やったー♪楽しみだわ!」