第4話 何…だと…?
今日の三時限目は魔法演習だ。
皆で学園の中央演習場に移動する。
私は、休み時間に仲良くなった強制友達とお喋りしながら歩いている。
やっぱり学園生活はこうでなくっちゃね♪
強制友達の名前はエレンちゃん。農村に生まれたけど魔法の素質があったらしく、態々遠く離れたこの学園まで来たそうだ。
栗色の髪をおさげにして、紺色の目は大きくてパッチリした可愛い系の美少女だ。
私が有名ファッション誌の看板モデルとするならば、彼女はHEM48のセンターと言った所だろうか。
(因みにHEMはハースエデン魔法学園の事よ!)
しかも、休みの日はバイトをして、生活費の確保や実家への仕送りまでする近年稀に見る素晴らしい性格の少女だ。
「公爵領にまだそんな貧困に喘ぐ村があったなんて…、お父様に言って税を軽くして貰うわ!」
「い、いや。大丈夫だから!心配しなくて良いから!」
エレンちゃんは遠慮していたが、お父様には報告しておこう。
~その年の納税が6割から2割に減ったエレンの村の村長は何が起きたのか分からず、ただ困惑するのだった~
「今日はあの的に向かって魔法を当てる練習だ!自分の得意な魔法で構わん、此方で判断して採点する!」
授業開始と同時にそう宣言したのは元宮廷魔法士のルイ先生。
30歳で童貞という別の意味でも魔法使いになった強者である。
先生と目が合うと思いっきり睨まれた。
もしかして失礼な事を考えてたのがバレた?
私とエレンちゃんは適当な的を選んで距離をとる。
一つ一つの的は障壁魔法の仕切りによって区切られており、これなら他の人を巻き込む心配はなさそうだ。
そう言えば魔法ってどうやって使うのかしら?
普通転生って言ったら赤ちゃんの頃から魔力の量を増やす練習を始めて、ちょっと大きくなったら周りに驚かれるのがテンプレじゃないの!?
事前説明が無い成人転生は、拉致以外の何物でもないと、この時に気づいた…
そうだ!エレンちゃんに先にやって貰って、少しでも情報を得るのよ!
「エレンちゃん、お先にどうぞ」
「そ、そう?いつもは先生の忠告も無視して危険な魔法を打ちまくってたのに?」
早速、さっき睨まれた原因が判明した…
でもきっと大丈夫よ!アーシャは清く正しい人間に生まれ変わったのだから!
取り敢えず、私が魔法を使える事も分かったので、エレンちゃんを観察よ!
「そ、そんなに見つめられると緊張するな~」
そう言って、はにかむエレンちゃんに胸がキュンとなっていると、クラスメイトの男子がエレンちゃんをイヤらしい目で見ているのに気づく。
私の強制友達を守らねば!!
私は小さい石を拾って指弾で放ち、エレンちゃんを見ている男子の目をそれぞれ潰していく。
「目が、目がぁ~!」
「ぎゃあああ~!」
「痛い!助けてくれ~!!」
急に目を抑え苦しみだした男子生徒にルイ先生は困惑する。
魔法は使っていないのでルイ先生が気づかないのも無理はない。
まあ、2・3時間で治るくらいに手加減してあげたわ、感謝なさい!
気を取り直してエレンちゃんの魔法を見ようと振り返ると、既に魔法は的に命中していた。
何…だと…?