第33話 「でも、お高いんでしょう?」
魔王がこそこそと耳打ちしてくる。
「おい!友達補正じゃなかったのか!?ここまで美しいとは聞いてないぞ!」
「ちゃんと言ったわよ!」
「まさか我が魅了されるとは…」
「ふっふ~ん♪」
「お前のドヤ顔はムカつくな…」
「??」
いけない!エレンちゃんが置いてけぼりだわ!
「エレンちゃん。改めて、こちらがマオーさんよ。とは言っても、私も最近知り合ったのだけど…」
「名も名乗らずに申し訳ない。我の名はマオーと申します。以前にアーシャさんの部屋の掃除を頼まれまして、懇意にしてもらっています」
「確かに部屋が物凄く綺麗…。私も頼みたいくらいですわ」
「勿論!何時でも呼んで下さい!一瞬で綺麗にしますので!」
「でも、お高いんでしょう?」
「いえいえ、この部屋も無償で綺麗にしましたし。初回サービスと言うやつです!」
「まあ!では是非お願いしたいですわ!」
「今度、日にちを教えて下さい!他の予約を飛ばしてでもお伺い致します!」
「ふふっ♪ありがとうございます。今度、アーシャに伝えておきますわ」
魔王には「エレンちゃんが魔王だと分かってしまうと怖がるだろうから清掃業者を装ってくれ」とは言ってあるが、まるで本物の清掃業者みたいだ。
「あと、これはアーシャさんに差し上げる物だったのですが、アーシャさんは不要だと仰るので、是非受け取って頂きたい!あと今ならキャンペーン中ですので、こちらのネックレスも差し上げます!」
「…えっと。それなら、頂きますわ」
上手い!
エレンちゃんが高価な物の受け取りを遠慮するのを予測して、ただ今ならお得ですよ感を出して、どさくさに紛れて渡している。
魔王……一体何者?いや、魔王なんだけどね!
それに、エレンちゃんの押しの弱さも相変わらずだ…
「結婚しよう!!」×10回くらいで本当に結婚してしまう危うさがあるわ!
まあ、そう言う所がエレンちゃんの魅力の一つなんだけど。
「それではマオーさん。今日はありがとうございました。次回は何時になるか分かりませんが、お喚びしますので…」
私がそう声を掛けると、魔王は再度私に近付いてこそこそ話しだした。
「お前、狡いぞ!我もまだまだエレンさんとお話しがしたい!」
「そんなこと言っても、ここに残る理由が無くなったじゃない!」
「……そうだ!」
魔王は何か閃いたと言わんばかりにエレンちゃんに向き直る。
「我は知り合った方の願いを叶えるのを趣味にしておりまして…。ここでエレンさんと知り合ったのも何かの縁、何か願い事はありませんか?」
物は言い様ね…
「願い事ですか…?」
一瞬、エレンちゃんはきょとんとした顔になった。
物凄く可愛い…
そして、何かを思い出した様にハッとした後、私をチラチラ見てくる。
もしかしたら聞かれたら恥ずかしい内容なのかしら?
だが、人は誰でも願い事の一つくらいあるものだ。
モテたい、お金が欲しい、理想の体型になりたい、などなど…
エレンちゃん、大丈夫よ!例えどんな願い事でも、私も一緒になって叶えられるように頑張るわ!!
私の笑顔を見て安心したのか、エレンちゃんは意を決したように願い事を口にした。
「私の願い事は…」




