第3話 …何か後ろめたい事でもあったのかしら?
朝から本当に大変だった…
今は学園に行くための馬車の中だ。
そうよ!気持ちを切り替えていきましょう!
いつもはフラウ君と一緒に行くみたいなんだけど、なんかもうね…彼の憔悴具合が酷かったので家で休んで貰う事にした。
イケメンなのは素晴らしいけど、まだセバスチャン的な完璧な執事ではないみたいね。
御者の人から着きましたと声をかけられたので外に出る。
勿論私は公爵令嬢なので、護衛の人も馬に乗ったまま馬車の周りを固めている。目立つのなんのって!
周囲に居る学生が畏怖を込めた視線で見てくる。
不意に目が合ったりすると、物凄い勢いで目を逸らされた。
やはり公爵令嬢ともなると畏れられるものなのかしら?
門を通りながら我が学舎を見上げる。
学園の名前はハースエデン魔法学園。何百年も昔に時の大賢者が建てた学園らしく、魔法の高みを目指す者なら身分に関係無く迎え入れる変わった学園だ。
外観や規模は圧倒的の一言。
古い建物の筈だが、大賢者が施した状態維持魔法で全く風化すること無く、新築の様に綺麗だ。
建物も5階建てになっており、1000人を収用出来る大広間やコロッセオを彷彿とさせる闘技場も内包しているめちゃくちゃ具合だ。
以上が、怯えるフラウ君から聞き出した学園の情報でした。
だって普通の転生なら元のアーシャの知識や記憶を持っていると思うじゃない!
全くそんなもの無かったんだから悪魔憑きに間違えられてもしょうがないと思うわ!
いや、転生する事自体が普通じゃないわね…
軽く現実逃避をしていると、自分の教室の前に着いた。
やっぱり第一印象は大事よね!
身だしなみは問題無いし、後はこの美貌で微笑んで挨拶すればきっとみんなと仲良くなれるわ!
私は勢いよく扉を開ける。
「皆様!ごきげんよう!!気持ちの良い朝ね!」
私が元気よく挨拶すると、教室内は静まりかえった。
な、何なのこの反応!?
はっ、もしかしてちょっと曇り空だったから気持ちの良い朝とは言えなかったかしら。
私からしたら全員が初対面になるので、この雰囲気の原因を聞くに聞けず、とぼとぼと自分の席に着く。
すると周りからひそひそ話が聞こえ始めた。
何?もしかして私っていじめられてたの?
だが私は、いじめっ子を逆にボコボコにする図太い神経の持ち主なので、一言忠告しておこう。
「今、ひそひそ話をしている者の顔は覚えたわ。私の全身全霊をもって仕返しするから楽しみにしていなさい♪」
私のその言葉を聞き、ある者は泣き崩れ、またある者は教室から逃げ出し、賢明な者は私に謝ってきた。
いじめなんてしてたらロクな大人にはならないから、若い内から誰かがちゃんと教育してあげないとね。
やっぱり、良いことをした後は気分が良いわ。
その後、授業開始時に教室内が全くの無音だったため、担当先生はびっくりしていた。
逃げ出したクラスメイトはそのまま行方不明になった。
…何か後ろめたい事でもあったのかしら?