第25話 「魔物だ!気を付けろ!!」
先を歩く私にルイ先生が付いてくる。
その間隔は5mくらい。
…遠いわ!!
先程の怪行動は、幻覚キノコのせいにしておいた。
授業で習った事が役に立ったが、先生の疑心を払拭する事は出来なかったようだ。
「先生!並んで歩いてお話ししませんか!?」
「いや!やはりこれも授業の一環だ!生徒の特別扱いは止めておこう!」
先生の言い分は最もだが、流石に話し相手も居ないのはつまらないわ!
その時、少し離れた所に冒険者の人が一人で歩いていたので、近付いて声をかけてみた。
「ねえ、冒険者様!先生が構ってくれないので、話し相手になって下さいませんか?」
「!!き、君は?…おかしいな?『気配遮断』してるのに」
「あら、失礼!私はアーシャ・クインハルトと申します。貴方様のお名前も聞かせて頂けると嬉しいですわ」
「僕は、王都で冒険者をやってるAランクパーティー『閃光のフリーズランス』で斥候役をやってるカミュだ!」
「まあ!Aランクパーティーなんて凄いですわ!是非、カミュ様のお話しを聞いてみたいです!」
「そ、そうかな?僕達も最初は…」
上手くいったわね。
これで『ぼっち』の謗りを受けずに済むわ!
「魔物だ!気を付けろ!!」
カミュ君の話を半分以上聞き流して歩いていると、背後で先生が大声をあげた。
驚いて振り向くと、人型モンスターの代表である緑色のゴブリンと先生が対峙していた。
「アーシャ!危ないから下がれ!」
先生の言葉に胸キュンしていたが、此処でゴブリンを殺したらグロテスクなものを見ないといけなくなる事に気付く。
「先生!お待ち下さい!」
「何だ!離れていろ!危ないぞ!」
「最初から敵対心を持って接しては、あのゴブリンも怖がって襲い掛かってくるのは当然ですわ。穏やかな心で彼を受け入れるのです!」
「何を言って…」
私はそう言って悠然とゴブリンに近付いていく。
カミュ君が隙を伺って殺ろうとしているが、そうはさせないわよ!
「さあ、私は貴方に危害は加えないわ!私と友達になりましょう!」
私は手を広げ、菩薩の様な表情で彼を見つめた。
「グギャアア!」
ゴブリンが右手に持った汚れた鉈を振り降ろしてきた。
鉈を指で受け止めて、そのままゴブリンを抱き締める。
…物凄く臭いわ!!
「アーシャ!!」
「大丈夫です。話せばきっと分かってくれます!」
「ねえ、貴方。このままさば折りされるのと、私に従うのとどっちが良いかしら?」
抱き締める腕の力を強める。
勿論言葉は通じていないだろうが、歴然とした力の差を見せつければ少しは大人しくなるだろう。
「グギャ!?ググ…」
ちょっと弱ってきたわね。
だが、彼を解放すると、すかさず噛みつこうとしてきた。
私は彼の頭をアイアンクローで鷲掴みにして、更に語りかける。
「やんちゃなのは良いけど、程々にしましょうね♪」
「グギャアアーー!!!」
少しずつ力を入れていくと、彼はぶら下がったまま大人しくなった。
私が項垂れた彼の手を引くと、黙って付いてきた。
「彼と友達になりましたわ!」
「………」
「………」
2人とも無言だった…




