第104話 弱気な魔王
自分の部屋でティファをボフボフして遊んでいると、クーンが猫を抱きかかえて怒鳴り込んで来た。
「アーシャ様!猫に化けてエレン様に可愛がって貰おうとした不届き魔王にゃん!懲らしめて下さいにゃん!」
「何してんのよ…」
「…少なくないダメージを負って動揺していたのかもしれん。アーシャ、我はもう疲れた……今後は猫として生きていきたい」
魔王が精神的に参っていた!
猫の姿から戻ろうともしない…
「そんなに辛い事があったのね。私に甘えても良いのよ?」
「ぷっ!」
「何かしら、クーン?」
「何でも無いにゃん」
「大丈夫よ!私のこの溢れ出る母性で癒してあげるわ!」
「にゃははは♪笑わせないでにゃん!アーシャ様から溢れ出ているのは母性じゃなくて狂気にゃん!甘えたら最後、待っているのは癒しじゃなくて絶望にゃん!!ひい~、お腹痛いにゃん♪」
「我も同意見だな!」
「…………」
コンコン!
「アーシャ、クーンさんが猫を連れて来なかった?…って居ないね」
「クーンなら猫と一緒に新しい星で暮らすそうよ」
「星って夜空に光ってる、あれ?」
「そう、あれ」
「別れの挨拶も出来なかったな…って!アーシャのお兄さんどうするの!?」
「クーンが愛想を尽かしたと伝えて頂戴」
「自分で伝えてよ!?」
「しょうがないわね。一度戻ってきてもらいましょうか」
「死ぬかと思ったにゃん!……死ぬかと思ったにゃん!!」
「はあ!はあ!はあ!我の結界が無ければ確実に死んでいたな…」
「あり得ないにゃん!この女は令嬢の皮を被った悪魔にゃん!いや!悪魔の方がまだ良識があるにゃん!!」
「あら?別の星が良かった?」
「ごめんなさいにゃん!!もう何も言わないから許して下さいにゃん!」
「生物が住むには厳しい星だったみたいね」
「魔王が結界を張ってくれなかったら一瞬で肺が焼かれてたにゃん!」
「クーン達が第一到達者ね!その星をクーン星と名付けましょう♪」
「どうでも良いにゃん!!!」
「…あれ?猫も一緒じゃなかったんですか?」
「ギクッ!!」
私とクーンがギャーギャー言い合っていると、エレンちゃんがおずおずと聞いてきた。
ギクッって口で言う人を初めて見たわ…
「そうですにゃん!この魔王が猫に化けたのがそもそもの原因にゃん!」
「我もどうかしていたのだ…。だが猫になって暮らしたいのだ!」
「マオーさんが猫だったんですね…。でも可愛らしかったですよ♪私が飼ってあげましょうか?」
「是非!!」
「……冗談なんですが」
「エレンさんに飼って頂けるなら、我はもう地位や名誉、金や力を全部捨てる覚悟です!!」
「あの…冗談……」
「知能も猫並みに下げますので、邪な気持ちもございません!あっ、でも我の視線を感じても猫の視線ですので!我が見ている訳ではありません。安心して下さ……」
シュン!
魔王が煩かったので強制送還した。




