第103話 忍び寄る恐怖…
≪とある魔王視点≫
「た、助かったぞ!リトルリアン」
「遠見の水晶で見ていた甲斐がありましたわ♪」
「ふう、あのままだと危なかった…。召喚されないようにブロックしておかねばな!」
安心したのも束の間、我の頭の中に声が響く。
『ねえ、魔王。私は今、魔界の入り口に居るの…』
これはアーシャの声!?
「ま、不味いぞ!アーシャがここに向かって来ている!」
「そんな!?くっ!こうなったら!!魔王様!軍の使用許可を!」
「ダメだ!無駄死にはさせられん!!」
「そ、それでは魔王様の純潔が!!」
「いや、別に我は純潔では無いぞ?」
「えっ!?そ、そんな…」
リトルリアンが絶望した顔で立ち尽くしている。
ピクリとも動かない。何故かは分からぬがこの場ではもう役には立つまい。
『ねえ、魔王。私は今、魔王城の前に居るの…』
何だと!?早すぎる!!
『ねえ、魔王。私は今、魔王の部屋の前に居るの…』
ゴクリ……
「ねえ、魔王。私は今、魔王の後ろに居るの!!って、あれ?居ないわ!」
我は一瞬でベッドの下に転移した。
召喚もブロックしているから、探しようがあるまい。
アーシャは一通り部屋を見渡すと諦めて帰ったようだ。
「ふう、危ない所だったな…」
「何てね♪」
「ぎゃああああああああ!!!」
安心して気が緩んだ刹那、アーシャが無防備な我の肩を掴むと同時に耳元で囁いてきた。
我は情けない程の悲鳴を上げ、無意識に転移魔法を使っていた…
「はあ!はあ!はあ!」
もう嫌だ!我は魔王だぞ!!何故人間に恐怖しないとならんのだ!?
アーシャの精神攻撃によって体力が半分以上減っているのに気付く。
勇者パーティーとの戦闘でも3分の1減ったか分からない我の体力がだ!!
それにしてもここは何処だ?
余りの恐怖で、何処に転移するか定めずに使ってしまった。
いや、あの場合は仕方あるまい。
何やら建物の廊下である様だ。
目の前には質素な扉がある。
そのまま開けるのは失礼かと思い、一応ノックしてみた。
「は~い!どちら様ですか?」
この流れるような美しい旋律、穢れた心を癒す魔法のような声色の持ち主は……エレンさん!?
まさかエレンさんの部屋に来てしまうとは…
あわわわ!我はどうすれば!?心の準備が!!
ガチャ!
「あれ?誰も居ない」
「にゃ~ん…」
「…猫?」
「におゃ~ん♪」
「どうしたの~?迷子かな?クーンさん!猫が迷い込んだみたいなんですけど…」
「分かったにゃん!家が何処か聞いてみるにゃん!」
部屋の奥から猫人族のクーンが現れた!
そして、我を見て一言…
「あんた一体何してるにゃん……」




