第101話 執せか③
「ここは森か?」
気付くと木々が生い茂る薄暗い森の中に居た。
何も情報が無いので、取り敢えず歩き始めた。
獣道を掻き分けて前に進む。
ほんの数時間前までアーニャと戯れていた筈なんだけどな…
やはり人生は何が起こるか分からないものだ。
今のお嬢様と出会ってから、よりそう思う様になった。
暫く歩くと木々の密集具合が疎らになってきた。
馬車などが通る道に出れば、進む方角も決まるのだが…
「きゃああああ!!!」
その時、何処からか女性の悲鳴が聞こえてきた!
近いな!私は声がした方に全力で走る。
すぐに木々が生えていない広めの場所に出た。
目の前には豪華な馬車と既に生き絶えているゴブリンが数体。
薄汚い格好の者達が馬車の扉を破ろうとしていた。
盗賊か?ゴブリンと盗賊に同時に襲われるなんて不運が重なっているな。
「誰かは存じあげませんが、助けて下さい!」
第三者の存在を感じ取ったのだろう。馬車の中から女性が懇願してきた。
超覚醒した私にとって盗賊は敵では無かった。
しかも女神から渡された仰々しい装飾がされた剣も持っていたので盗賊数人を瞬殺だ。
俺は馬車の扉に近付き中の人に声を掛ける。
「もう大丈夫だ。外には私しか居ない」
「あ、ありがとうございます!さぞ名のあるゴブリンの方なのですね!」
扉が恐る恐る開く。
中から出て来たのは、真っ白いドレスに宝石をちりばめたティアラを着けたゴブリンだった…
ゴブリンだった…
ゴブリンだった………
「…はっ!ゆ、夢か…。」
悪い夢を見ていた様だ。
何で急にこんな夢を?
「目を覚まされたのですね!急に倒れられたのでびっくりしました!」
「ああ、すまない」
声を掛けられたので其方を向くと、やはり先程のゴブリンが…
悪い夢では無かったようだ。
だが先程のインパクトは無いので平静を保っていられた。
「何故、人間の言葉が解る?」
「?私は普通に話しておりますが?貴方様がゴブリンの言葉を話している様に思います」
「??」
私はいつの間にかゴブリン語を覚えていた様だ。
一体いつの間に?
まさか!お嬢様はゴブリンだった!?
てっきり悪魔だと思っていたが、魔物のゴブリンだったとは…
上手く人間に擬態したものだ。
今度会ったときに正体をばらすのが楽しみになってきたぞ!
「……それで、お前は何者だ?いや、名は何と言う?」
「は、はい!私はフーレ・キィステンと申します!貴方様のお名前は?」
「私はフラウだ。それより聞きたい事が沢山ある。答えてくれるか?」
「はい、何なりと♪」
フーレが言うには、この世界にはゴブリンの国が何ヵ国かあり、人間や亜人は魔物扱いだそうだ。
魔族の国も存在するそうで、魔王は人間らしい。
「フラウ様はとても人間とは思えません。こんなに話しやすくて、優しいなんて…」
「まあ。これも乗り掛かった船だ。フーレをちゃんと送り届けるまで守ってやるよ!」
「フラウ様♪」
そして、私とフーレの旅が始まった。
私は御者の経験もあるので、馬車を引いて街を目指す。
フーレの住む王都までは馬車で1週間ほどかかるらしく、それまでは2人きりだ。
途中で、魔物と言う名の人間を撃退したり、食糧が切れたので狩りをしたりして道中を過ごした。
色んな事をフーレと2人でやっている内に、フーレと親しくなった。
顔はゴブリン顔だが、良く見ると愛嬌がある顔をしている。
何より彼女は性格が良い!おしとやかで我が儘など言った事がない。私を尊重し、影から支える器量の持ち主だった。
今まで会ってきた高貴な令嬢は全員一癖も二癖もあり、基本的に我が儘である。お嬢様がその典型的な例だ。
そんな素敵な女性と常に2人で居たので、彼女に好意を抱くのに時間は掛からなかった。
夕日が沈む途中の橙色に染まった空の下、街道沿いにある大きな木の下でフーレと向かい合う。
「フーレ、私は貴女と過ごしていく内に大きく心を動かされた。種族が違うことは分かっているが、どうか真剣に考えて欲しい。私はフーレの事が………」
そして、浮遊感に襲われた。
「…好きだ!」
「な、何!喚んで早々告白なんて大胆な事をするのね!やっぱり私の魅力にメロメロだった?返事は用が終わってからで良いかしら、ほらあそこの荷物に手が届かないのよ。取って頂戴!」
「………この!人間の皮を被ったゴブリンがああああ!!!お前の中身はゴブリン以下だああああ!!!」
半殺しにされた…




