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パニカル!  作者: タナカ
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コカトリス




「………なかなかスプラッタな光景だったな」


 先ほどのソル鳥とガルムの争いを思い出しながら、弱肉強食って実際に見ると怖いな〜、と

思いながら茂みから出た。


「怪獣島かよ、ここは」


 言ってもしょうがないことをぼやきながら、俺はざっと周囲を見渡した。

 ………といっても、周囲が薄暗い上に背丈の高い木々ばっかりで、ほとんど情報なんか得られなかったが。


「委員長にも、宝剣貸したままだしな………」


 今俺にあるのは、少量の携帯食料、ぼろぼろの剣、いつ使うんだという筆記用具、あとは『記憶の書』。


「あ………そうだ、記憶の書」


 これに何か書かれてあるかもしれない。

 俺はそう思って記憶の書を手にとって、中身を見るが…………



『           』



「………うぉ〜い」


 何も書かれていない、どころか今まで書かれていたことすら消えていた。


「なんでだ?」


 本を開けたまま少し呆然として、そしてすぐ1つの結論にいたった。


「魔力が来てないのか」


 『記憶の書』を作動させるための、筆記者の魔力。つまりは桃ちゃんや他の教師たちの魔力が、届いていないということだ。

 今俺がいるのは、桃ちゃんたちの魔力が届かない場所。それはつまり、自分がいる空間は桃ちゃんたちがいる空間とは別空間である、ということを意味した。


「一体、どうなってやがるんだ………」


 ここは先ほどまでいた、火星(?)ではない。

 ではどこだ?


「どこなんだろうな〜」


 何となく候補として考えられる異空間は知っているが、そこは考えうる中でも最悪の場所なので、できることなら考えたくなかった。 


「そもそも、なんでこんなところに?」


 俺たちの班が迫り来る追手から逃げ回っていた、あの時。

 急に感じた、異世界転移の際の感覚によく似たあの気持ち悪い感覚。


「誰かが異世界転移の呪文を使った………? にしては大規模な上に突然だった………」 


 あの転移呪文は、恐らく惑星全体に及ぶほどのものだった。

 あそこまでの規模の呪文を使おうとしたら、個人ではまず無理だ。唯一できるとしたら、学園側の協力が不可欠になるのだが………………


「学園が生徒たちを抜き打ちで異世界へ無作為転移? いくらなんでもありえんだろ」


 下手しなくてもこんなの生徒たちの命にかかわる。学園側がこんなことをするとは到底思えない。

 ………だが、正直それ以外にこうして俺たちを転移呪文で飛ばす方法が、思いつかない。

 つまり、なんでこうなったか原因がよくわからない。


「それと問題がもう1つ」


 それは、俺がこの危険な森の中に1人であるということだ。

 こうして味方とはぐれた1人になった時の対応は、基本的に雪山とかで遭難した時と同じだ。

 下手に動かず、体力の回復と生命維持に努める。それが最善だ。

 ………が、なんとな〜く、このまま待ってても桃ちゃんたちが救援に来てくれることはなさそうに思えた。

 つまり、体力が削られるのを承知の上で、この危険な森を徘徊し仲間を見つけなければならない、ということだ。

 …………結論。


「中々に絶望的な状況だ、ということがわかった」


 あー、自分で言ってて世話ないな〜。



 ドッゴオオオオオン!!!



「………あ?」


 突如、爆発音が森の中を響いた。

 それと共に、「いやー!! 来るなー!!」 という誰かの悲鳴が、微かに聞こえてくる。


「………やな予感」


 音のした方向を向きながら、俺は盛大にため息をついた。







***






 

 森を疾駆し、悲鳴の主、フレアの得意なアイツ(・・・)がいるところへ向かう。


「やだやだー! 来るなってばー!!」

「げ………」


 想像通り、半泣き状態で逃げている今井麻衣の姿がそこにいた。

 そして………もう1つ。非常に厄介な存在も。

 こうもりのような羽と鶏の身体、蛇の尾を持つといわれる怪物。

 バジリスクやメデューサと並ぶ、あの能力(・・・・)で有名なモンスター。

 てかなんであんなのに追いかけられてんだあのバカ。


「コオオオオ………」

「やべっ!!」


 躊躇してる場合じゃねー!!

 俺は足に力を込めると、一足飛びで今井に近づき………

 

 ドカッ!!


「うきゃあっ!!」


 今井の珍妙な悲鳴を聞きながら、近くの茂みに今井ごと突っ込んだ。


「ちょ、な、あっ………!!」

「息をするな!!」


 今井が俺を認識し声を上げるのと、俺が今井を叱咤するのと、それらと全く同時期に………


「カアアアアッ!!」


 巨大な『コカトリス』が、ヘドロのような色をした毒の息を吐き出した。

 あれを吸うと非常にマズイ。かなりマズイ。どうしようもなくマズイ。


「む、ぐぅ………!!」


 俺は今井を抱えると、息を止め、一気にその場から離脱した。







さあ、少しずつ緊迫してきますよー!

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