それぞれの一瞬
――― 管理人 植松五郎 SIDE ―――
この異世界の中心、海中にある管理塔。
周囲は薄暗く、ガラス張り。ガラスの先には、綺麗な海の光景が広がっている。
そんな水族館のような場所で、俺は同僚たちとモニターを前に、カタカタとキーボードを操作していた。
「ガキどものお守りも大変だ」
「……全くだ」
隣にいる同僚、松戸の呟きに俺も同意する。
俺たちの仕事は、このコンピュータールームから、この異世界にある全ての電気施設や、生徒たちの監視などである。
この異世界はもうすでに人類の手によりほとんど調べ尽くされている。
そのため荒田学園など魔法使い見習いの生徒たちの研修用の世界として、今では活用されていた。
「あ……にしても1日中カタカタカタカタやってりゃ、肩こってしょうがねぇな」
「交代までまだ時間がある。それまで我慢しろって」
「たりー……」
松戸の愚痴を適当に聞き流している時だった。
ビリッ………
「………ん?」
何か、接触不良か何か、とにかく嫌な音がして、俺は思わず周囲を見渡した。
「なぁ……」
松戸に声をかける。
「なんだ?」
「変な音がしなかったか?」
「……いや」
松戸には聞こえなかったらしく、静かに首を振った。
ビィッ……ビリッ………
「………………聞こえるな」
「だろ?」
今度はちゃんと松戸にも聞こえたようだ。どこか配線がショートしているのかもしれない。だとしたら少し危険だ。
「点検してくる。念の為他のヤツらにも知らせとくわ」
「ん、頼んだ」
俺がそう言って腰をあげた瞬間。
ビシャアアアアン!!!
「「………!!」」
まるで雷が落ちたかのような轟音と共に、辺りの電気が切れいきなり真っ暗になった。
***
――― 西村桃子SIDE ―――
「………?」
玉座でふんぞり返り水晶球で戦局を見守っていた私は、水晶の色がわずかに曇ったことに、違和感を覚えた。
「一体何が………」
そう首を傾げていたちょうどその時。
キイイイン………!!
「………!!」
一瞬の静寂と同時に、視覚的なものではなく、空間的な変化が急激に起こった。
「ちょっ………!!」
ガタン! と玉座から思わず立ちあがる。
……なんで!!
慌てて周囲や水晶球を見渡すが、外見上はいつも通り。手がかりは見つけられない。
だが、微かだけれど確実に感じ取れる、最上級の異常事態が起こっていた。
なんでこんなことが! そもそもこういう力は管理塔で厳重に管理されてるはず………!!
「………くっ!!」
ぐらりとめまいがして、思わずその場にしゃがみこんだ。
少しずつ、空間改変のために感覚が侵されて行く。
私は覚悟を決めると、しゃがんだまま急いで宝剣『いっちゃんぬっちゃん』を取り出すと、それを十字に据えた。
「ソレイユサネスペルミナ………!!」
詠唱を始める。
間に合え………!!
世界が変わる、その前に。
***
「………!?」
違和感。その最初のきっかけは、ビリッ、という小さな電気の音だった。
森の中を追っ手から必死に逃走中だった俺たちは、その音に気づくのに数瞬遅れた。
「止まれ!!」
『………!!』
最初に気づいた俺が、急いで洋太とか他のヤツらに叫んで知らせる。
いきなり叫んで何事かと、慌てて歩を止める洋太たち。
俺はそれに構わず怒鳴った。
「どこでもいい!! 光が届かないところへ早く逃げ込め!!」
「光が届かない所って……」
洋太が聞き返そうとした瞬間。
キイイイイン……………!
突然、めまいと同時に景色がモノクロに変わった。
これから、少しシリアスな展開になります。




