早朝のパニックアタック!
チュンチュン………
「………………」
………異世界にもすずめっているのなー。
そんな変な感慨を抱きながら、俺は朝靄の中で自然と目が覚めた。
「〜〜〜!!」
ぱきぱき………
俺は関節を鳴らしながら大きく伸びをすると、ふと隣を見る。
そこには芋虫のように寝袋に入った洋太たち男性陣と、今井たち女性陣が………ってあれ?
「………八巻がいない」
八巻の寝袋だけ、空になっていた。
不審に思いながら周囲をきょろきょろ見まわしてみるが、あの眼がね娘の姿は見えない。
「散歩にでも行ったのか?」
………ま、どうでもいっか。
寝ぼけ眼で、ごそごそと俺のバッグ(学校指定の味気ないヤツ)の中身を確認する。
携帯食料、筆記具等最低限度の生活必需品に、昨日拾った変な剣、それに『記憶の書』とかいう青い本がぽろっと出てきた。
『1、8班、野営。2〜7班、一時的に城に集合』
『A、D、E組、一時的な同盟』
『C組は、領地が数多くのモンスターに囲まれているため未だに防戦一方』
と新たに3行の言葉が記されていた。
「………ま、おおむね予想通りか」
そしてふと焚き火を見ると、くすぶっているだけでほとんど燃え尽きていた。
「………八巻を探すついでに薪でも拾うか」
そう呟くと、俺は寝袋から起きあがった。
「………………」
「むにゃ………はんばーぐぅ………」
その時、女子陣の中でも一際呑気に寝てる女、今井の阿呆な寝言が聞こえた。
今井の顔を覗き見ると、大口開けて涎を垂らしてと、色気ないことこの上ない様子だった。
「…………………」
本気で顔に落書きしてやろうかと思った。
***
「こんなとこか」
洋太たちとは少し離れた森の中で、1山の薪を見つめ、それを束にして持ちあげると、腰をあげた。
「………静かだな」
俺が小さい頃にいた、こことは違う他の森は、朝だろうが夜だろうがひたすらぎらぎらと獣たちの殺気が漂っていたものだ。
「………ま、じゃなきゃ生徒たちの模擬戦の場所なんかにしない、か」
この世界には、モンスターもいる、そこそこ過酷な環境の場所もある。
……だが、生死に関係するような過酷な状況にはならない。
昨日、寮から出る時に野原さんが、危ないことはなかった、というようなことを言っていたが、まさにその通りだろう。
ここは、さほど危険ではない。
「…………ふぁ」
ほっとしたような少し残念なような、そんな気分を味わいながら、響太はあくびをし………。
そのまま、固まった。
「え…………」
木々を抜け、突然目の前に広がったのは、大きな湖と誰かのシルエット。
偶然、本当に偶然もいいところで視線のぶつかった相手と、しばし見詰め合う。
「あ…………」
相手も予想外だったのか、手もとの布きれを手に取ったまま、硬直している。
髪はほどいてるし、眼がねはしてない。その上素っ裸だから本当にソイツかしばし迷ったが………
「あー………」
「き…………」
最悪なことに、間違いなかった。
ナンダコノベタナハプニングハ?
「きゃああああああ!!!!」
「おわっとぉ!」
手もとの石を思いっきり投げつけられ、俺は慌ててその場を逃げ出した。
***
その後集合場所に帰ると、ぞろぞろと洋太たちも起き出していた。
「………? 魔ー。お前その頭のでっかいたんこぶどうした?」
「………別に」
避けられなかったんだよ、1つだけな。
………一方。
「………? マッキーどうしたの?」
「………別に」
若干ふてくされながらも帰ってきた八巻は、今井に心配されながらも、てきぱきと朝食の準備(昨日のうちに取った果物や携帯食料)をしていく。
そして質素な朝食を取った後。
「はい! 全員集合!」
怒ってはいてもさすがは八巻。この場のまとめ役として、何をしようかとふらふらしてた全員に号令をかけた。
「『記憶の書』からの情報によると、唯一敵陣に攻め込んでるのは私たちの班だけ。だから少し危険だけど、これからA組に攻め入るわよ!」
「………そっか、ま、ガンバレ」
両手を合わせ「南無阿弥陀仏」と唱える俺。
「何で他人事の反応なんだ? 魔ー?」
洋太が不思議そうに聞いてきたが……
「昨日言わなかったか? 俺らは一旦城に戻る」
「「「「え〜!」」」」
こら男共。なぜ今更嫌そうな顔をする。
「せっかく女の子の班と一緒になったのに!!」
「ここまで来といて引き返すのはなんかもったいない気がするっス!!」
「ん〜、1班だけをそのままA組陣地に突撃させるのは、ちょっと………」
洋太、龍二、委員長がそれぞれ不満たらたらで言う。
んー………………
「………まー別に、それでもいいか」
「「やった―――!!」」
どうせやられるだろうがな。
A組が他の組と同盟組んでるのを忘れたのか。
この同盟、実はかなり厄介なことだった。
A組戦術科、D組魔術科、E組補助科が組み、A、D組の守りが堅くなれば、必然的にE組の生徒たちは自陣を守る必要性がほとんどなくなる。
なぜなら、星型大陸の天辺にあるAと、下辺西側にあるE組の陣地に、西側の端にあるD組の領地が挟まれているためだ。
その余ったE組の人員がA及びD組の守りに加わり、彼らの守りが堅くなる。
しかもD組と隣接しているC組魔術科は、自軍領地にいるモンスターたちとの攻防に手一杯なため、D組に攻め込む余裕がない。
………つまりは、ほとんどの生徒がA組の防備に使われている、と見て間違いないのだ。
………どーするつもりだ、コイツら。
狂喜乱舞している洋太と龍二を俺は呆れ眼で見守った。
***
「いいですか! 最初に狙うのはB組ですわ!!」
A組陣地の荒野で。
A、D、E組の60人近い生徒たちが、エル主導で集まっていた。
「にっくき彼らを真っ先に叩き落し、それからC組陣地に攻撃をしかけます!
皆の者!! 背水の覚悟で挑みなさい!!」
『おおおおお―――!!!』
『A組の防備が固くなっているかもしれない』という魔ーの予想は悪い方向に外れ、彼らはB組へ総攻撃の準備を組みたてていた。
更新遅れましたすいませんごめんなさいもうしません〜!! たぶん………
いや、実は前日に徹夜しまして。ちょっと仮眠……とか思って寝て起きたら、いつの間にか翌日に………!! うぐおああああ!!