かしまし大絶叫
薄暗い森の中。
焚き火の勢いもだんだん下火になり、そろそろ寝ようかと、そんな雰囲気になって来た場に、
「「「聞いて聞いて聞いて―――!!!」」」
水浴びから帰ってきた中居、土田、鈴木のかしまし娘たちが、帰ってくるなり興奮した様子でしゃべり倒した。
「水浴びしてたら!」「いきなり湖底からネッシーが!!」「剣をも弾き返す皮膚を持つその怪物に」「果敢に立ち向かうもなすすべもなく!」「もうダメだー! って思った瞬間!」「金髪の美少年拳士がさっそうと現れたのだ!」
「…………」
全員、無言。
心なしか、かくんと首が横に倒れているかもしれない。
寝袋の準備をしていた俺は無言でかしまし娘たちを見据えると、ぱんぱん、と手を打ちながら言ってやった。
「はいうそー」
「ほんとだって!!」
あんぎゃー!! と叫ぶかしましガールズ筆頭、中居。
………が。
「第一誰だよ、その美少年拳士って? 漫画じゃないんだぞ? ネ●まのパクりか?」
「いやいやそれがマジなんだって!」
「………あーはいはい。わかったわかった。信じる信じる」
「うっわ! 何そのわがままな子供を諭すお兄さん的対応!?」
だってほとんどその通りだし。
見ろ。洋太たち男性陣なんかお前ら無視して寝袋に入ってるぞ。
「マッキー! 麻衣ちゃん! 君たちは信じてくれるよね!?」
すがるような視線で八巻らを見る中居だったが………
「………ごめん、さすがに私もその話は信憑性低いと思う」
「まっきいいいいいい!!!」
あーうるさ。
「………まーそう聞こえてもしょうがないとは思うけど」
「おかげで助かったのと、これもらったのは事実なんだよね」
中居以外のかしましガール、土田と鈴木が胸元から青や黄色のペンダントを取りだした。
「………? 何それ?」
今井が2人の持っているペンダントを覗き見る。
「もらったの」
「ねー」
「………ああ。拾ったわけな」
「「うわぉう! 端から信じてもらえない!!」」
だって、わざわざ見ず知らずのお前らにそんなの渡す輩がいるわけないじゃん。
「でも、綺麗だねー!」
今井も曲がりなりにも女、ということか。眼を輝かせながらペンダントを見た。
「でしょでしょ!?」
中居、ここぞとばかりに騒ぎ出す。
「実はこれ、ものすごい力があったりして?」
「あれだよ! もしかしたらピンチの時にこれがぱーっと光って、私たちを守ってくれるとか!」
「………ねぇな」
「「「一刀両断?!」」」
………しょうがねーだろ。
俺は3人が持っているペンダントをちら見しながら言った。
「それ、確かに多少の力は持ってるみてーだが………」
「だが?」
「………どーやって使うかわからねーだろ?」
「あ………」
この手のマジックアイテムは、精巧な機械と同じだ。
使い方、特に効力発動のための呪文がわからないと、ぶっちゃけどうしようもない。
「けど、ピンチになったら自然に効力を発揮してくれるんじゃ………」
「……………」
「え、ちょ、ま……なんで拳を振りかぶって………いやあああああ!!!」
ゲシッ!!
俺は無言で中居の頭を殴る。
が………
「………いったぁ〜」
「はい、助けてくれなかった」
涙目になっている中居を無視して、俺はそう言った。
「けどま、アクセサリーにはなるんじゃない? それに身につけてれば、そのウチ偶然にも効力を発揮するかもしれないし」
八巻が苦笑しながらそう言う。
「そっか! まだまだ捨てたもんじゃないよね!!」
「………逆に変な呪いの力とかが発揮される可能性もあるけどな」
「はうっ!?」
ショックでもんどりうつ中居。
………忙しいヤツ。
「けどさー!」
「かっこよかったよねー! あの子!」
「だ、だよね! もう神秘的っていうかさ!」
きゃいきゃい騒いでいるかしまし娘たち。そしてまた復活する中居。
「あんな綺麗な美少年始めてみたよー!」
「ほんとー! 本に出てくる人みたいだったー!」
「………美少年、ねぇ」
つまらなそうに呟く八巻。
「興味なさそうだね、マッキー」
「マッキー言うな。でも、そうね。いくら美少年っていっても、単なるガキじゃない」
「「「ノオオオオ!!!」」」
かしましガールズ、大絶叫。
「あれはガキという範囲を越えていたよ!!」
「そうだよそうだよ! 子供っぽい顔に憂いを帯びたあの顔はガキってのを軽く超越してたよ!」
「見た目は子供なのに頭脳は大人!!」
「その名は……うきゃっ!!」
「勝手に某人気漫画のセリフ取るな」
ぱかん! と俺のハタキが3人に命中した。
かしまし娘のペンダント。
実は後で大活躍する………かも?




