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パニカル!  作者: タナカ
88/98

ヴェリク



「………………」


 本当に光などほとんどない、真っ暗な森の中。


「………どうする?」


 あの後特訓して洋太が『フレア』をちゃんと使いこなせるようになる………わけもなく。

 結局火がつかないままの薪を目の前にして、俺たちは途方にくれていた。


「………………いいんだいいんだ、俺なんて」


 薄暗闇の視界の隅で、洋太が丸まってなんか言ってる気がするが、全力で無視する。


「とにかく、この寒いのをどうにかしたい〜!」


 タオルに(くる)まりぶるぶる震える中居。自慢の八重歯も寒さが原因かは知らんが、ひっこんでる。 


「メタボー! オラに力を分けてくれー!」


 脂肪が暖かそう〜、とか、かなり失礼なことを叫びながら沼田に近づく中居(アホ)


「………………」


 だが全然気にした様子もなく無口の沼田。さすがだ。


「とにかく、どうするっスか?」


 とんがり頭の龍二が手をこすりあわせ、はーはー白い息をはきながら言った。


「手はない………」


 静かにそうつげる。

 俺の言葉にみながびくっと身体をすくませる。


「………こともない」

「「「ややこしいわっ!!」」」


 洋太、龍二、中居の3人に一斉につっこまれた。

 うっさい。いいだろ少しぐらい遊んでも?


「とにかく、防御魔法が不完全っぽいから、それをどうにかする」

「どうやってっスか?」

「………カン?」

「無理っスよぉ!!」


 いやまぁ、冗談だけど。

 …………説明するのめんどいんだよなぁ、これ。


「俺らにかかっているらしい防御魔法……これ、どんな種類の魔法だかしってるか?」

「種類っスか?」


 はて、と首を傾げる龍二。


「……そもそも魔法ってどんな種類があるの?」


 中居まで首を傾げてやがる。

 ………1年の時に習っただろうが。

 俺はため息をつきながら、指を2本立てる。


「魔法の種類は、主に2つ。

 1つは、攻撃専門の魔法、俗に言う黒魔法。

 もう1つは、防御、補助専門の白魔法だな」


 黒魔法はかけた相手へのマイナス作用を、白魔法はかけた相手へのプラス作用を及ぼすと思えばいい。

 もちろん、これ以外にも魔法の分類はしようと思えばいろいろある。だがそこら辺は説明するとややこしくなるので省略する。


「「へー……」」


 ふむふむと頷く2人。

 だからなぜ初めて知りました、みたいな顔をする………この鳥頭どもめ。


「てことは防御魔法は白魔法、ってことでいいの?」

「一般的にはそれで合ってる」

「一般的には?」


 丸い眼をさらに丸くする中居。


「そう。他のクラスは知らんが、桃ちゃんがかけた俺らに対する防御魔法は、白魔法ではなく、黒魔法だ。

 なぜなら………これは俺たちの能力をアップさせるための魔法じゃないからだ」

「「………はい?」」


 ???とひたすら頭を抱える龍二と中居。


「けど、防寒対策や衝撃吸収とか、明らかに俺たちの身体能力をアップさせるものだと思うっスけど………」

「『ヴェリク』って言ってな」


 俺はそう言いながら、あーどう説明するか、とぽりぽり頭をかいた。


「ああ、あのセンコーどもがよく使う閃光?」


 中居、誰がシャレを言えといった?

 だがまぁ、それのことだ。


「………『周囲にいる敵、及び環境をこちら向きのものにする』

 とまぁそういう便利な作用を持つ魔法があるわけだ」


 ヴェリクは希少な光系呪文の1つで、使用者、及び周囲の人間の意識をはっきりさせる作用がある。

 が、実はこれ。この魔法の一端にすぎない。

 本当の作用は、使用者が一時的に対象者の魔力を奪い、それを操ること。


「ボットウイルスみたいなもんっスか?」

「まぁそうだな」


 ボットウイルスとは、対象者のパソコンを遠隔操作できるウイルスのことだ。気がついたらやられてました、ってところもよく似ている。


「最強じゃん、それ!」


 俺の説明に、中居が大声で驚く。


「相手を操れるなんて……何そのやりたい放題魔法!?」


 何嬉しそうにしてやがる。使う気満万だな、中居。

 けど、まあ。


「が、やはりこれにも欠点がある」 


 たしかに中居の言うとおり、他者の魔力を操れるんならこれ以上ない最強の魔法だが。 

 この魔法の、明快にして単純な欠点。


「使用者の魔力より対象者の魔力が上回った場合は、作用しないんだ」


 つまりは格上相手には使えないってこと。


「それともう1つ。複雑で無理のあることは、やっぱできないってこと」


 相手を操れるといっても、相手を思い通りに操れるとか、そんなチートな力はない。

 せいぜい眠っている相手を起こすとか、相手の攻撃力をそれとなく和らげる、とか。

 まぁその程度しかできないわけだ。


「………な〜んだ。大したことできないじゃん」

「当たり前だ」


 お前は何を想像してたんだよ。


「だが対象はそれこそ無限に広がる。例え桃ちゃんや魔物相手でも例外ではないし、『場』に対して行うこともできる。

 また………ヴェリクの対象者にまたヴェリクを使わせることも、可能だ」

「「あ………」」


 さて、説明がかなり長くなったが。


「俺らに使われてるのが、それだ。

 桃ちゃんはヴェリクをかけて、俺たちは無意識に周囲の場に対しヴェリクを使う。

 そうやって俺たち自身が場を改変するようにしむけてるんだよ」

「え、え〜と………私たちにかけられてるのがヴェリクで、そのヴェリクはさらに周囲にヴェリクを………あれ? あれれ?」


 なにやら混乱しだした中居。

 ……これ以上説明するのも面倒くさいから、簡単に結論だけ言うか。


「たぶん今はそのヴェリクが弱まってるか、周囲の魔力が強すぎてきかないかどっちかだろう。

 だから俺たちはかけられているヴェリクを、魔力を込めてより強めればいい」

「だけど………それこそどーやってっスか?」


 龍二が不思議そうに聞いてきた。

 無理もない。自分にかけられた魔法を、打ち消すのではなく強めるのだ。


「風邪を治そうとするのではなく、逆に悪化させようとしているのと同じだろ?

 だったら、そんな場合はどうする?」

「寝ずにゲームっスか?」「お菓子をたべる〜!」「仮病!!」


 とかいつのまにか復活している洋太も含めて、3者3様のアホ意見だったが。


「………風邪なら寒いところ、つまり風邪にとって有利な場所に行くこと。

 ヴェリクの場合、これは相手の魔力を利用する魔法だから、魔力の充満しているところへ行く、もしくは自分自信の魔力を強めればいい」






『ヴェリク』

実は初登場の呪文ではなく、大昔に桃ちゃんが使ったことがあります。

追記:すみません。今回はなんか書くのが難しくて、投稿した後30分間で山のように中身を改変してしまいました。orz

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