洋太抹殺!!
暗く不気味な森の中、ぽつりと光る街頭のような小さな明かりが俺たちにとって唯一の導となっていた。
「…………さて」
寒くてもう魔力温存とか考えてられねー! ということで。
俺たちは洋太の出したバレーボール大のフレアを取り囲んで、暖を取っていた。
「これ、どれくらいもつの?」
この場で1番寒そうにしている中居りりかが、不細工にも鼻水たらしながら聞いた。
「たぶん、あと30分ぐらいかな?」
あーさみー、とぶるぶる震えながら、洋太はそう言った。
少し前のできごと。
あれから、俺と沼田で他の木々や木の葉を持ってきて火で燃えるかどうかひたすら試したが、火がつくどころか焦げつく様子さえ見せなかった。
さすがは異世界の植物、といったところか。
「上野フレアの根性が足りないからだよ!」
「隊長、見そこなったっス!」
「ひでぇ!!」
とまぁ、3人のどうでもいいコントはあったが。
てなわけで、今に至る。
「それで、魔ー?」
どうにかならね〜? と困り顔で聞いてくる洋太に、俺はため息をつきながら指を2本立てた。
「方法は2つ。1つは、危険覚悟でこの森をひたすらさまよって、燃えそうな木を探すこと」
少し危険だが、まぁしょうがない案とは言える。
「「「寒いからヤ!」」」
「……あっそ」
だが、3人の大声で瞬時に却下された。
こんな時でもわがままなのな、お前ら。
「もう1つは洋太」
「ん?」
俺はびしっと洋太を指差した。
「お前のフレアの出力をアップさせて、持ってきた木々に火がつくかどうか、もう1度チャレンジ」
「「それだ!」」
「ちょ……それって俺の負担が一方的に多いのでは……」
洋太がおろおろとする中、中居と龍二は2人でヒートアップする。
「頑張れ上野!」
「負けるな隊長!」
「お前ら結託してんじゃねぇ!!」
先ほどの意気消沈っぷりはどこへやら、きゃーきゃー言いながら走りまわる3人。ガキみたいだ。
「……てか中居に龍二。何を他人事みたいに言っている?」
アホかお前ら。
「「「は?」」」
中居と龍二、ついでに洋太までもがぴたりと足を止めると、ぽかんと口を開けた。
「お前らと、ついでに俺と沼田もだが……洋太に魔力を送りこむためにみんな協力することになるぞ?」
「えーと………」
俺の言ったことがよくわからなかったのか、ぽりぽりと頬をかきながら中居は聞いた。
「他人に魔力を送りこむのって、どうすればいいの?」
「慣れれば意外と簡単だぞ?」
俺はぽうっと手のひらに魔力を集中させ、魔力光を作り出す。
「この状態なら、もうお前らもできるだろ?」
「……まぁ」
洋太、中居、龍二、沼田が順順に魔力光を手のひらに発生させる。
「よし。後はそれを洋太の、身体の部分ならどこでもいいから触れさせる、そうすれば自動で
送りこまれる」
「へー、簡単じゃん」
中居は「ラッキー!」と笑いながら魔力光を発生させた状態の右手で、洋太の肩を掴むと……
バチィッ!!
……あ、失敗した。
「のわっ!」
「きゃっ!」
いきなり2人の間に静電気のようなものが発生した。
「な、何これ……?」
「人それぞれ、得意な魔法の系列、というのがある」
例えば洋太は火が得意で、八巻は風が得意、という風にだ。
「中居の得意な魔法系列は火じゃないんだろう。洋太の魔力とは種類が違う。だから反発した」
「ひどいっ!! 上野は私を拒絶するのね!!」
「なぜそうなる!?」
とまぁ、洋太と中居のコントは置いといて。
あの後沼田や龍二も試したが、2人とも魔法系列が洋太と異なるらしく、うまくいかなかった。
「……しゃーないか」
俺はため息をつきながら洋太の肩に手を置くと………
ほわっ……
「「「「お………」」」」
今度はうまくいった。洋太は僅かに光に包まれると、「おおおお!」と声をあげた。
「なんかすげー! 力が溢れてるみてーだ!」
だろうな。
「よーし! 行くぞー!」
洋太は手をぶんぶん振り回しながら「ヴィガムディセルミア―――!!」と再びフレアを唱え………
グボァッ!!
俺たちを包み込むほどの、特大の火球が周囲に発生した。
***
「「「「「………………」」」」」
残ったのは頭をちりちりにさせ無言で黙り込む俺たちと………
逆に無傷の薪。
「てへり」
「「「「………!!」」」」
「ちょ、ま、せめて何か言って……ぎゃあああああ!!!」
洋太抹殺のお知らせ。www