それぞれの危機
――― 委員長SIDE ―――
「うわっ!!」
……まさか、本当に天井までジャンプできるとは思わなかった。
今ならオリンピックの棒高跳びの記録すら、余裕で抜くことが出きる。
……まぁ、あらゆるスポーツ大会では宝剣の使用は禁じられてるんだけど。
ぶわっと視界が開ける。
「きゃっ!!」
最初に目に入ったのは森の木々。聞こえるのは誰かの驚きの声。
そして次に、そのそばで大きな熊と向き合っている八巻さんが見えた。
僕は後ろに丈夫な木があるのを確認すると、それを思いきり蹴り上げた。
「はっ!!」
ドンッ!!
瞬時に熊の懐に移動する。
「ガアアアアア!!!」
熊の巨大な爪が頭上に迫るが………
「………!!」
ヒュッ!!
それより一瞬早く、僕の剣が熊のわき腹に迫った。
***
「………………大丈夫かな、アイツ」
沼田が委員長が飛び立った方向を見ながら(片手にフィギュアを持ってたが)、心配そうに呟いた。
「大丈夫だろ」
俺はこともなげにそう答えた。
少し大げさかもしれないが、あの光った状態の委員長は、言うなれば最強モード。
パワーだけなら、いつぞやのA組のパワーファイター、ゴリオの10倍近くはあるだろう。
………ただ、あれの唯一にして最大の欠点は、長続きしないことだ。
10分が限度だろうな、あれ維持するの。
ま、それでも熊を倒すぐらいの時間は十分にある。
だから大丈夫………なはず。
「ところでさ〜」
茶髪の今風(……多分)少女、中居がだるそ〜に手をぶらんぶらんさせながら聞いてきた。
「………ここ、ほんと〜に武器庫だったのかな?」
中居が周囲を見渡しながら、う〜んと唸った。
俺たちの周囲は言うなればこんな感じだ。
暗木木木木木木木木木木木木暗
周り真っ暗、無駄に大きな木の幹と草ばっかり。
しかも無駄に広い。地下倉庫、というよりほら、最近ニュースとかで話題になってるだろう? 地下空洞、だっけ? あれだと言われた方がしっくりくる。
唯一、ふわふわ浮いてるホタルみたいな光が、視界をどうにか薄暗く保ってくれているが………
「光が恋しいっス……」
龍二が真っ暗な空を見ながら、そう呟いた。
「……さすがにここまで手がかりがないとなぁ」
洋太が天井を見上げながらぼやいた。
「……………ま、その内なんか見つかるだろ」
俺はそう言って、がさがさ草をかきわけながら進む。
「あ………うまそうなキノコ発見」
洋太がふらふらと真っ赤なキノコを手に取るが………
「……それ、かなりマズイぞ? 唐辛子みたいな味がする」
昔食べて火を吹いた思い出があるからな。
「ちくしょ―――!!!」
持っていたキノコを叩きつけながら、洋太は叫んだ。
***
――― 黒部一郎SIDE ―――
海沿いに走りつづけた結果、俺たち5班はようやく森を抜けだしていた。
………が。
「きゃー! 何これ何これこっち来るなー!!」
「………くっ!」
俺たちは土と岩ばかりの巨大な山岳地帯を必死で逃げつづけていた。
「ピギャアアアアア!!!」
およそ動物とは思えないような甲高い声をあげ、天空から巨大なモンスターが嘴をこちらに突き出して、迫る。
………何だあれは?
体長は恐らく10m以上。大きな剥き出しの羽、立派に反り立ったトサカ、鋭い嘴。
いつか図鑑で見たことがある、有名な恐竜。
『プテラノドン』
………にしてはいろいろ文句をつけたい場所がある。
翼は2つではなく4つ。自分の顔以上に大きい巨大すぎる嘴。
………そして何より信じがたいのが。
「……………なんで翼があんなに尖ってるんだ」
触ったらスパッと切れそうだ。あれでは翼というより刃物だ。
「ひぃっ……ひぃっ……」
いくら肉体強化されているとはいえ、そろそろみな苦しそうだ。
……逃げるのも限界が近い。
だが、俺たちはまだ魔法が使えない。初級魔法ですら。
つまり、飛んでいるモンスターに対して反撃する術がない。逃げるしか手がないのだ。
………八方塞だ。
「………ちっ」
俺は顔をしかめ、小さく舌打ちした。
……今、ちょうど時間があるので新たな長編の執筆を頑張ってます。とりあえず賞に応募して、落ちたらここに載せようかな、と不届きながら考えてます。あんまり本編が進まないかもしれませんが、そうなったらすみません。