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パニカル!  作者: タナカ
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戦闘のための前準備


 荒田学園の学生寮前の道路。

 そこで学生姿の今井麻衣と俺、三河正志がいた。


「………………ヴィガムディセルミア!」


 今井が呪文を唱えるが、これといって魔法が起こったように見えない。


「………だから、魔力の練りが甘いんだって」

「なんで!?」


 A組との模擬戦の日、早朝。

 ソフト部の朝練もほったらかして、今井麻衣は初級火炎呪文『フレア』の練習をしていた。

 ………全くうまくいっていないが。


「なんかコツ分かってきたのに!? これでしょ!? このなんかあっついの! これが魔力でしょ!?」


 魔力を集中させ、かすかに光っている手のひらを必死に見せる。


「………まぁ、そうだが」


 1週間の努力の甲斐もあって、今井は手のひらに魔力を集中させることはできた。

 たかが1週間で中々の進歩だ。本当に努力した結果だ、というのはよく分かる。

 ………が。


「集まり具合が全然足らん。それじゃ魔法が完成する前に魔力が飛散する」

「うきゃあああああ!」


 混乱して妙な叫び声をあげた。


「ふわあああ………おふぁようございますぅ………」

「おお、桃ちゃん」


 道路を挟んで学生寮の正面に位置する桃ちゃんの家兼研究所から、寝ぼけたパジャマ姿の桃ちゃんが現れた。

 熊を模したパジャマだった。


「あふぅ………」


 桃ちゃんはぼーっとした視線で


「落ち着いてアタシ………集中」


 とぶつぶつ言いながら集中してるように見えて、まるで集中できてない今井を見据えた。

 そしてぽけーっとした顔で、にこーっと笑った。


「調子良さそうですねぇ……」

「は?」


 桃ちゃんの発言に思わず耳を疑った。


「いや、何言ってるんですか桃ちゃん。全然ダメでしょ、これ」 


 今も「うわあーん! 魔法が出ない――!」とか叫んでるし。


「そりゃあ、魔法を使うのは難しいですからねぇ………」

「いや、そうでしょうけど。だからなんで調子がいいって」

「ごはん〜………」


 あああ、桃ちゃんもう聞いてない。

 ぽけーっとした桃ちゃんは俺の発言を無視して、てくてくと焼き魚の匂いが漂う寮の中に入っていった。


「…………ディセルミア! ……………ポッとでもいいから出ようよ――!」


 ……………終わったな。今日の模擬戦。







***







 朝のHRの時だった。

 教壇の横で、朝方の寝ぼけた様子は微塵も感じさせず、桃ちゃんがいつも通り元気いっぱいに


「さあ! 今日も頑張っていきましょー!」


 と、地獄の訓練の始まりをつげた時に。

 いつもと違うことが起こった。


「あ、ですが……」


 と言うと桃ちゃんは今井の方を見た。


「麻衣ちゃん」

「はい!」


 いきなり名前を呼ばれ驚いて立ちあがる今井。


「ちょっと先生について来てくれますか〜?」

「はぁ………」


 わけが分からない、といった風に頭に?マークを山ほどつけて、今井は桃ちゃんの後についていった。


「ちょっと………」

「ん?」


 後ろから丸眼鏡を光らせた八巻枝理が肩をたたいてきた。


「麻衣ちゃんに何があったの?」


 まるで俺に原因があるかのような言い方をするな。


「知るか」


 俺はそれだけ言うと、肩をすくめた。







***







 午前10時少し前の運動場。

 1時間以上ひたすら走っておいて「準備運動終了〜!」という桃ちゃんの言葉に、B組生徒全員が冷や汗をたらしていた。

 今井は授業に出てこなかった。

 今ごろどこで何やってるんだか。


「みなさん、集合〜!」


 桃ちゃんの合図で、ふらふらになりながらも生徒たちが集まる。


「では、これからA組との模擬戦がありますので、体育館に移動します」 


 この学校では校舎は運動場の正面にあり、体育館は運動場の左手にあった。

 体育館に入ると、そこでは初級呪文の練習をしているA組の生徒たちがいた。

 凝集させた魔力の光がそこかしこで目立ち、見たことの無い光景に生徒たちから「うはぁ……」とため息が漏れた。


「おはようございます〜!」

「あ、どうもおはようございます」


 久々登場の森元教師が礼儀正しく頭を下げる。

 一応、桃ちゃんの方が先輩だという認識はあるらしい。

 しかし、その後にやりとさわやかそうに見えて自信満々ですって笑顔を向けた。

 ………………準備バッチシってところだな。

 そして、戦闘で傷ついた生徒の為に、補助科E組の生徒が体育館の隅で控えていた。


「西村先生、おはようございます」

「おはようございます、佐島先生!」


 白髪で元気がなく、優しいだけが取り柄のE組担任、佐島栄一郎が桃ちゃんのところに挨拶に来た。


「今日はお世話になります」

「いえ、こちらこそ」


 みたいなお約束の挨拶が桃ちゃん、森元教師、佐島教師の間で行われ、しばらくした後。 


「では、模擬戦を始めましょうか」

「そうですね〜」

「全員集合!」


 ハスキーな声が体育館に反響し、A組とE組の生徒たちがすぐに森元教師のところに集まった。

 ………B組とえらい違いだな。


「これより! A組対B組の模擬戦を始める!」

「よろしくお願いします〜!」


 どんな時でものんびりな桃ちゃんの声。


「それにあたって、体育館を模擬戦をするための形に切り替える! 準備はいいな!」

『『はい!』』


『……?』


 A組とE組の元気な返事とは対象的に、頭を傾げることしかできないB組。


「あ、皆さんは何もしなくて結構ですよ〜」

『………』


 桃ちゃんの言葉に、楽だけど何か悔しいって感じの顔をするB組生徒たち。  


「ソレイユ、サネスペルミナ(光の精霊ルミナよ)」


 桃ちゃんの呪文詠唱が始まる。それと同時にA,E組の生徒たちや先生たちが桃ちゃんに向かって杖を構えた。

 魔力の光が桃ちゃんに集まり、見えないぐらい光が集まる。

 そんな中で、ただ桃ちゃんの声が響く。


「インスリューマスペイオルスフラ、モーミリクラヌーヴォルスディセルミア! マーヴラシール、フォアクルバセラッシエトゥルナティユシャム………(我に空間を統べ、時の流れを操る力を与えたまえ! 我が意に従い、かつて戦士の集いし悠久に続く闘技への道を………)」


 そして桃ちゃんだけでなく、俺たちの周囲まで光に包まれる。


「え、ちょ! 何やこれ! 光ってる!」「なんだなんだ!?」「うひゃあ! こそばゆー!!」


 慣れないためかB組生徒たちの悲鳴があがる。


「うばああああああ!!」


 そして隣の洋太が一番うるさい。なんだうばあって。


「フレイア! (切り開け!)」


 詠唱が終わった瞬間、よりまぶしい閃光があがった。










模擬戦話、書ききれなくなったので次にまわします。

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