空から何か……
―――中居りりか SIDE ―――
ちわっす。中居りりかだよん!
天下の文芸部所属! 『おしゃべり部員』のカリスマリーダーとはアタシのことだ!!
何、誰かわからない? そんな不届きなあなたは今すぐ『籠城戦スタート!』の後半部分を見るべし!
「くぉら〜! 何をぼさっとしてるのりりか!!」
「あ〜んマッキーこわ〜い♪」
「猫なで声だすなマッキー言うなそもそも今ふざけている場合かぁああああ!!」
うん、ごもっとも。
私たちB組第1班は、開始早々30分で苦戦を強いられていた。
「グワアアアアア!!」
木々と草花が生い茂る森の中でモンスターに追いかけられ、私とマッキーはひたすら逃げる。
「ええいなんでこんなモンスターがいるのよ!!」
「ふふふ、あま〜いなマッキーは。私たちが放課後に部室でお菓子を食べるのと同じよーに! 森の中に熊さんがいるのは、至極当然のことではないかー!!」
「意味わかんないから!! あと部活中に菓子食うな!!」
………そう。私たちを追いかけているのは、巨大な熊。
英語で言うとベアー!
周囲の木々をなぎ倒し、ただひたすら私たち目掛けて突進してくる。
「ヴェナール、ウィンディ!!」
マッキーが振り向きざまに時々『ウィンド』を熊に向かって発射しているが………
「ガッ!!」
パァン!!
「マッキーまたはじかれた!」
「ああん! なんでよもう!!」
そう。
並のモンスターならけちらすはずのマッキーのカマイタチを、あの熊はこともあろうに弾いてくるのだ。
「強いわねあの熊! 訓練か何かされてるんじゃないの!?」
「うふふふ……同じ呪文は2度通用しないといういい例だね。また1つ賢くなったよ!」
「ええい! アホ言ってる暇があったら何か対策を考えろー!」
ボカリと走りながら頭を叩いてくるマッキー。
けど甘いね、マッキーは。
その対策がさっぱり浮かばないから、もうふざけるしかやることないんだよ。
「ってあれ? そう言えば麻衣ちゃんや他の2人は?」
「はっはっはー! 今頃気づいたか! 麻衣ちゃん、めーちゃんおよび理緒たちとは絶賛離れ離れ中だよー!」
今頃あの不思議な声の主にトラップ地獄を味わわされているんじゃなかろうか?
「なにー?!」
さらに走りながら頭を抱えるマッキー。
「まぁまぁマッキー。人間諦めが肝心だよ」
「だからもう少し真面目に対策をかんが………………!!」
「……………?」
マッキーの言葉が突然止まる。
「止まって!!」
「へ………?」
私がマッキーの言葉に従うより数瞬早く。
私の足場がなくなった。
「あ………」
崖だ。
先ほどの地震のせいか元々か、いきなり巨大な亀裂が現れたのだ。
まず………!
足元の草に隠れてて、気づかな………!!
「りりか―――!」
視界がぐるりと反転する。
マッキーの叫び声が徐々に小さくなっていくのを感じながら。
私は深刻な死の予感に目を瞑った。
***
「………光だ」
委員長の呟きに、俺たちは一斉にその視線の先を見た。
地下であるせいか周囲は暗く、ぽつぽつと光るホタルのような光が唯一の道しるべとなっていた。
………が、そんなお先真っ暗な時に現れた、空からの一筋の光。
「おお!」
洋太の嬉しそうな声を皮切りに、俺たちは誘蛾灯に集まる蛾のように、一目散にその光のもとへと走った。
距離にして数kmほど。『ルミナスの剣』で肉体強化された俺たちは、1分とたたずに光のもとへつくことができた。
「光だ―――!!」
プラトーン! みたいなポーズをしながら、洋太は全身で光を浴びる。
砂漠でオアシスを見つけた時みたいだった。
「………ん?」
その時。
洋太の見つめる視線の先に、光を遮る小さな黒い点が見えた。
「………げ!!」
バッ!!
危険を察知し、俺と委員長、沼田に龍二は即座にその場を離れる。
「………へ?」
だが洋太だけは、その反応が遅れた。
その点は徐々に大きくなっていき、洋太に向かってまっすぐに迫ってくる。
「や、ば………!」
ようやく自分の状況を気づいた洋太は、すぐにでも逃げようとした。
が、偶然足場が砂地で悪かったとか、変なポーズしていたせいで気づくのが遅れたとか、いろいろな偶然が重なり………
ズゴォン!!!
「へぶぅっ!!」
空から降ってきた何かは、沼田の結界をぶち破り、俺たちがフォローする暇もなく洋太にぶち辺り……。
………洋太はつぶれたカエルになった。
「………………もう少し、マシな例えを……………」
なんか聞こえてきたが、無視。
中居りりか。
ちょい役のはずなのに、なぜか私の中でめっちゃ魅力的に見える……