表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パニカル!  作者: タナカ
78/98

異界の森




 ギィッ………


 宝物庫への錆びた扉を開け、再び中へと入る。

 視界に飛びこんできたものを見て、俺は思わず感嘆の息を漏らした。


「………おいおい」


 漂ってくる匂いから、ろくな所ではないと予想はしていたが………


「はっはっは! 驚くのも無理は無いよ。俺たちは腐界の底ごぶぅっ!?」


 ……洋太の『風の谷のナ●シカ』的かなり危険なギャグはスルー推奨。

 だが、あのアニメを思い出しても無理ないような、そんな場所だった。

 ここの天井は大聖堂のように途方もなく高く、そのため扉の下にはさらに階下へと降りるための階段がある。

 そして天井から生えている巨大な木々の幹、にょろにょろと自立稼動する蔦、ふわふわと飛びながら光る胞子、やたら皮の固そうで大きなトンボ、などなど。

 ………心なしか、川まで流れている気がするんだが?   


「………ここはどこの樹海だ?」

「さあ? てかなんで城の地下にこんなものがあるんっスかね?」


 俺の呟きに、龍二が苦笑で返した。


「……引き返すっスか」

「そんなわけいかないだろ?」


 ド真面目な委員長が龍二の言葉を否定するが……


「だが、こん中にいい武器があるとも思えないぞ?」


 俺は目の前の森を指差しながら言った。


「行けばいいじゃん。ここまで来たんだし?」


 早々に復活した洋太が委員長の言葉を肯定する。


「………………賛成」


 そして沼田がぼそっと洋太に賛同した。

 3対2。


「行こう?」

「………へいへい」


 ………ちっ。

 俺は委員長の言葉に渋々従って、森の中へと入っていった。







***







 ――― 以下、森の中に入ってから30分間のダイジェスト ―――


 がさがさ……


【洋太】「ぎゃー!! キモい! キモすぎるウジャウジャが―――!」

【魔】「……こりゃまた巨大なダンゴムシだな?」

【委員長】「はぁっ!!」


 ザシュッ!(委員長がモンスターを切る音)


 ………………


 キュルキュルキュル


【洋太】「くっ! 来るな〜! 俺なんか食べてもおいしくないぞ〜!!」

【龍二】「……あ〜、ハエトリグサみたいっスね、これ。大丈夫っスよ? これ触らなければそんなに凶暴じゃないみたいっスから」


 ………………


 ぎゅむ!!


【何か巨大なサイ(?)】「アンギャーー!!」

【洋太】「ひいいいいい!!! すんませんすんません貴方様の尻尾を踏みつけるつもりはなかったんですうううう!!」

【沼田】「……………結界の中にいるんだから、襲われてもあの程度のモンスターなら平気だ」


 ………………

 






***







 ………とまぁそんなこんなで。


「なに盛大に足を引っ張ってくれてるんだ、お前は」


 ぼかっ!


「あだっ! ……ううっ、こええよぉ………」


 洋太が半泣き状態になっている以外は、まぁ順調に歩を進めていた。


「気合でどうにかカバーしろ」

「薄情者おおお!!」  


 知るか馬鹿。


「……けど、ないねぇ、アイテム」


 きょろきょろと周囲を見渡しながら、委員長がそう言った。


「結構歩いているような気がするんだけど……」

「そこら辺の草花じゃダメなんっスか? 例えばこれとか、うまそうっスけど?」


 そう言いながら、龍二が近くにあった真っ赤な果物らしきもの(りんごか何か?)を掲げた。


「………それ、食ったら腹壊すぞ?」

「えっ!? マジっスか!?」

「ああ」


 大昔に経験済みだからな。名前は知らんが。


「………………これはどうだ?」


 沼田が紫に斑点模様と、いかにも毒々しいキノコを手に取っていた。


「……幻覚症状、及び下痢。………てか見てわからんか?」


 明らかに毒キノコだろ、それ?


「………そうか」


 待て。なぜ大事そうにしまう? 


「……ていうか、よく知ってるね」


 委員長が持ってきたらしい『図解! 異世界動植物辞典』をちらちらと見ながら、驚いた顔で俺を見ていた。


「………まぁな」


 俺はそう言って言葉を濁した。

 ……正直、あんまり語りたい経験でもないからな。


「………………?」


 その時だった。


 ゴゴゴゴゴ!


「「「「「………!?」」」」」


 突然に大きな揺れ(震度6ぐらい?)が起こった。

 ………地震か?

 少しすると、揺れは収まった。

 が、俺たちはしばらく身体を強張らせ周囲の様子をうかがっていると、


 ひゅうううん………


「………ん?」


 急に胸元が光り出した。


「あ………『記憶の書』だ」


 委員長がそう呟きながら、バッグの小型ポケットから手帳を取り出した。

 俺も胸元から記憶の書とやらを取り出す。

 青くメモ帳ぐらいの大きさしかない本、その中心から真っ白な光が出ていた。


 パラッ……


 小首を傾げていると、本が自然に開く。

 そしてそこにはこう書いてあった。




『第1,2,3班、『トリックスター』と接触、戦闘』

『第4,5、6班、『プテラロイド』と接触、戦線離脱』

 



「…………?」


 トリックスターにプテラロイド?

 何ソレ?


「……何だろうね、これ?」


 委員長が文字を見ながら分けわからないという風に聞いてくる。


「………『プテラロイド』の方は知らんが、『トリックスター』なら聞いたことあるぞ?」

「……知ってるのか?」


 ……さすがは腐っても新聞部。


「ほら、委員長が前に戦っただろう?」

「へ?」


 洋太の意外な言葉に、委員長が素っ頓狂な声を出した。


「模擬戦の時にいただろ? A組の『宮内林檎』。あいつの2つ名だよ」








宮内林檎、模擬戦の時に委員長に瞬殺された女の子なのですが……

覚えてる人いますか? いてくれたらとても嬉しいですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ