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パニカル!  作者: タナカ
72/98

桃ちゃん城!



 目を開くと、巨大な城壁が目の前にそびえ立っていた。


『………………』


 2−B生徒全員、唖然とする。

 BGMをつけるとするなら、これだろう。


 ぱぱらぱっぱぱ〜!


『でけー!』


 ウオオオオ! とうなり声のような大声と一緒に、何名かの生徒たちがそう叫び声をあげた。

 石造りの灰色の壁に三角屋根、そのてっぺんにはパタパタと赤い旗が風で揺れており、周囲は堀池で囲まれている。

 中世ヨーロッパ風の、荘厳な雰囲気が漂っていた。

 ………旗に2−B軍と書いてあるのがめっちゃシュールではあったが。

 そんな典型的な城塞を間近にして、俺たち2−B生徒たちはそろって開いた口がふさがらなかった。

 ………凄い。

 山ぐらいの高さと規模があるぞ、この城。


「ふふふふ……ここが我が2−B軍の本拠地。『桃ちゃん城』ですよ!」

「名前ださっ!」


 桃ちゃんが嬉しそうに言った言葉に、洋太が突っ込んだ。

 ………確かに。ネーミングはかなりイマイチだった。

 しかし桃ちゃんは洋太の声を華麗にスルーして、


「では皆さん。作戦会議をしますので、中に入ってくださいな」


 そう言うと、目の前の木橋を渡り始めた。


『………………』


 桃ちゃんの声にも返事できないほど、みな呆気にとられていた。

 













 城壁の中は、よく手入れされた立派な庭園になっていた。

 その真ん中には噴水があり、近づくと微かにこちらにまで水しぶきが飛んでくる。


「すげ〜……!」


 さっきからそればかり言っている洋太が、綺麗な噴水や女神のブロンズ像を見ながら呟いた。

 

「ヴェルサイユ宮殿みたいね」


 はぁ〜……と感嘆の息をつきながら、後方で八巻がそう言うのが聞こえた。

 

「ほんと! どこかの王さまが住んでそうね!」


 今井がわくわくしながらキャーキャー叫んでいる。

 俺もきょろきょろ辺りを見回しながら、ふと思い至った。


「ここ、いつ手入れしてるんですか?」

「手入れしてませんよ」

「……は?」


 俺が何気なく聞いた言葉に、桃ちゃんはこともなげにそう答えた。

 ………待て。


「じゃあなんでこんなに綺麗なんですか?」

「………全ては魔法です」


 かけてもない眼鏡を直すふりをしながら、桃ちゃんは堂々と言い放った。


「魔法で全てが解決するんです!」


 アハハハハ! と後方から魔王の笑い声が聞こえてくるような堂々っぷりだった。


「……さいですか」


 何か追求できないような雰囲気があったので、俺はそう言うだけに(とど)めた。


「へぇ〜、便利な魔法があるんですね〜!」


 後ろから密かに話を聞いていた八巻が、俺の真横からひょっこり顔を出した。

 ………空気も読まずに。


「どんな魔法なんですか?」


 ……興味津々な八巻だったが。


「あ〜………」


 桃ちゃんは若干言いにくそうに言葉を濁す。 


「………?」


 不思議そうに桃ちゃんをのぞき見る八巻。


「………八巻」


 お前、未だに桃ちゃんの性格を理解してないな。 

 俺はさりげなく話題を変えようと口を開いたところで………


「「「お帰りなさいませ、ご主人さま」」」


 ユニゾンする3重の声が、俺の言葉をかき消した。

 ………ご主人さま?

 違和感バリバリのその声がした方をふと見ると……


「「……はいっ!?」」


 城の入り口辺りに、3人のメイドと執事がいた(ちなみに男女比2:1)。

 驚いた俺と八巻の声が重なる。

 ……いや、お城なんだし従者の1人や2人、いて当然だとは思う。

 ………思うんだが。


「あ、お留守番ごくろうさま〜!」


 俺たちの驚きは余所に、桃ちゃんはとててて……と3人のもとに駆け寄る。


「留守中、変わりはなかったですか?」

「特に変わりはございません」


 若い執事の1人が桃ちゃんにそう行って頭を下げる。

 そしてメイドの方がこちらに来ると、スカートの裾を持って恭しく俺たちに頭を下げた。


「ようこそおいでくださいました。城内には皆さまの歓迎パーティーの準備が整っておりますので、どうぞご遠慮なくお入り下さい」

『………………』


 生徒全員、ごくりと息をのむ。

 さーあ、皆さんいってみよ〜!


『ありえね――――――!!』


 何度目か知らない、全員そろっての絶叫が広い庭に響いた。







………ノリで書いたら、なんか予想以上に凄い規模のお城になってしまいました。

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