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パニカル!  作者: タナカ
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籠城戦当日の朝



 

 森の中をひたすら逃げていた。

 必死に走りながら身を隠せるような大きな茂みを見つけると、そこに身を隠す。 


「はぁっ……はぁっ………」


 身体をぎりぎりまで緊張させ、心臓を破れそうなほどバクバクさせながら地面に身体を伏せる。


「ハッ……ハッ……ハッ……」


 自分とはまるで違う、動物的な息づかいが遠くから微かに聞こえてきた。

 ………来るな来るな来るな!

 ひたすらそのことを願いながら身を伏せ、ぶるぶる震えていた。

 ………見つかれば、終わりだ。

 食われる!

 貧血を起こしそうなほどのプレッシャーにくらくらしながらも、それでもぎりぎり意識を保っていた。


 ………何が何だかわからなかった。

 でも、死にたくない。

 嫌だ。

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い……………

 呪詛のように頭の中を恐怖が駆けめぐる。

 ………が。


 ガサ……


「………っ!」

 

 











「……………」


 見上げると、自室の無機質な天井が見えた。

 ………朝か。

 がりがりと頭をかきながら身体を起こすと、くらっとわずかに視界がブレた。


「………あれ」


 目は覚めているのだが、どうにも頭が重かった。

 ………風邪かな?


 気分の悪さを引きずりながら自室から居間に、ふらふらと歩いて行く。 

 階段を降りると、コーヒーの良い匂いが鼻腔をくすぐった。


「あら、まーくん。おはよう」


 猫柄のエプロンをつけた新妻みたいな野原さんが、コーヒーポット片手に挨拶してきた。

 ちょうど入れたばかりらしく、居間にはサラダやコーンスープの他に、ほかほかと湯気をたてたコーヒーが置いてある。


「おはようございます」


 少しほっとしながらも、俺は居間のテーブルにつく。

 周囲を見渡すと、居間には俺と野原さんしかいなかった。

 時間は8時過ぎ。 どうやら他の住人(今井、八巻、桃ちゃん)は、もう学校に行っているらしい。

 帰宅部の俺は、登校するまではまだ30分ほど時間が余っている。


「……………(ずずず)」


 俺はコーヒーに口をつけながら、ちらりと新聞を流し読みする。

 倒産とか不況とか衆院選とか相変わらずな文字が踊っていたが、政治的に大きな問題は起こっていても、犯罪とかそういった社会的出来事は大したことが起こってなかった。

 ………つまりは、いつも通りの紙面だった。


「はい」


 新聞から目線を外すと、野原さんがトーストを持ってきてくれていた。


「すみません」

「いえいえ」


 俺はトーストにバターを塗ると、はぐはぐと少しずつ食べ出す。


「月末の籠城戦、今日なんだって?」

「ええ」


 話しかけながら、野原さんは俺と対面に位置する席に座った。家事も一息ついたらしく、片手にはコーヒーを持っていた。


「どう? 他のクラスに勝つ自信はある?」

「う〜ん………」


 どうだろう?

 2年A組は勝ったことがあるから大丈夫だとして、問題は他のクラス。D組には化け物のエルがいるし、C、E組は実力すらまだわからない。

 ……というか籠城戦がどういうものかもわからないのだから、対策の立てようがない。

 てなわけで。


「よくわかりません」


 と正直に言っておいた。


「ふふっ、そうよね」

   

 野原さんは面白そうにこちらを見ながら、ちょっとだけコーヒーに口をつけた。


「初めてだもんね。どうすればいいかもわからない………か」

「野原さんの頃はどうだったんですか?」

「………そうねぇ」


 野原さんは自分の学生時代を思い起こしているかのように、手の平にあごを乗せるとう〜ん、と考え出した。


「籠城戦の結果いかんで、成績が決定するってことだったからね。みんなで頑張って作戦立てて、どうにか相手の城を落とそうといろいろやった覚えはあるけど………」


 野原さんはぽりぽりとこめかみの辺りをかくと、アハハ、とごまかすように笑い出した。


「ウチのクラスはあまり強くなかったからね。いっつも負けてて、大体終わったら先生に怒鳴られてたわ。『何やっとるんだー!』って」

「………なるほど」


 大変だったんだなぁ、と聞きながらしみじみ思った。


「………けど」

「………ん?」

「みんな一生懸命だったけど、怪我することはなかったわね」

「あ、そうなんですか?」


 俺が聞き返すと、野原さんは、うん、と何でもないように頷いた。


「みんなには防御魔法がかかってたし、それにこの戦いは生徒たちを倒すことより各クラスの城の奥にいる大将を倒すことが先だったから」

「へー……」


 ………だったら、今回は楽できそうだな。

 

「ま、それでも頑張ってね。あんまり成績悪かったら、桃ちゃんかわいそうだから」

「わかりました」


 ……ま、桃ちゃんが泣かない程度に頑張りますか。









いよっしゃー! ラストアクション籠城戦勃発!

……まだほんのさわりですが。

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