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パニカル!  作者: タナカ
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放課後作戦会議




 放課後。

 普段は皆が部活したり帰宅したりする時間帯だが、2−Bのほぼ全員が教室に残っていた。

 俺は珍しく教壇の上に立つと、何となく威厳が出そうな口調で


「今日集まってもらったのは他でも無い……」


 と静かに言った。


「俺たちがいかにしてA組に勝つか、その作戦を立てるためだ」


 静まりかえった教室に、俺の声が響く。

 真剣な視線が俺に当たって、なんか痛い気がする。


「A組に勝つには………」


 俺は威厳たっぷりに間をおき、そして全員を見渡した。


「どうしよう?」

『考えてなかったの(か)!?』


 うむ。


「とりあえずA組のことについて洋太に調べてもらったんだが……」


 俺は洋太に皆に説明するように目配せをする。

 洋太は「ラジャ!」と言うと、ポケットからメモ帳を取り出した。

 上野洋太。部活は新聞部である。


「A組のメンバーで要注意なのは2人いる。1人は五木春雄。別名ゴリオ!」


 洋太は自分が付けて流行らせた五木のニックネームを嬉々として言った。


「身長190cmもあるガタイの良いヤツだ。柔道部に所属していて、基礎体力は恐らくこの学園一! しかもかなり短気で、なぜか俺と会うといつも怒ってばかりだ!」


 そりゃゴリオなんて名前つけられたら怒るだろう。


「正直頭は悪いが、宝剣を携えたヤツのパワーはまさに野獣! 戦闘訓練の授業ではパートナーを片手であしらってたとかいう噂もある!」


 そして……! と言いながら洋太はメモ帳をめくった。


「ゴリオ以上に要注意なのが沢木雹(さわきひょう)! なんと龍二の双子の姉らしい!」


 名前を出された龍二は「そうなんだよなぁ……不幸にも」とか呟いてマジでへこんでいた。


「龍二からの情報によると、沢木雹は親戚筋にあたる(とどろき)という道場に通い、若くして師範代をつとめており、当然強い! しかもこれはかなり信憑性の高い話なのだが……………魔法もすでに上級者並に使えるらしい」


 ………えー、大丈夫かB組生徒(初心者)。


「常に無言、無表情、無反応で、弟の龍二も笑ったとこは見たこと無いそうだ! 俺も遠めに見たことあるが、美人だったな! も、すっごい美人だったな!」


 関係無いこと話し始めた。


「しかも! 龍二から手に入れた極秘の! び、びっくりバスト情報が! なんと3サイズは上からはちあたぁっ!」


 洋太の言葉の途中で八巻枝理の筆箱が飛んだ。


「はいはいセクハラ情報流さない」


 さすがに委員長気質だ。反応が早い。

 八巻の無機質な四角い筆箱は中々の威力だったらしく、洋太はもんどりうって倒れた。


「ま、つーわけだ」


 俺は洋太のかわりに教卓の上で話し始める。


「沢木雹は論外だ。まず勝てない。だが五木春雄に対しては、こいつが初級魔法を使ってくる可能性は極めて低い。ゆえに万が一誰かが何らかの魔法を覚えて立ち向かえば、まぐれで勝てるかもしれん」 


 だが……と俺は1拍おいて全員を見渡した。


「初級の魔法でも習得するのに普通1ヶ月はかかる。しかもみっちり訓練をやって、の話だ。しかも大抵桃ちゃんの訓練の後は、身体能力の強化のためにほぼ全員が魔力ぎれになってるだろうな。つまりは……」


 皆、いやーな顔になっている。


「どうあがこうが勝機ほぼ無し。あがくだけ無駄」

『うわ……』


 はっきり言うなよ……との呟きがそこら中からもれた。

 仕方ないだろう。現実はちゃんと教えないと。


「とりあえず、初級火炎魔法『フレア』の習得方法を教えとくが………………できたら奇跡」


 全員、俺の言葉に目に見えてうろたえ始める。


「奇跡て……」「やっぱ諦めるしか………」「いや、けどなぁ………」「桃ちゃんがなぁ……」「桃ちゃんじゃなくあんな見てて腹立つガイの授業を受けるぐらいなら!俺は死ぬ気で!」「やれるか?」「ごめん、俺根性ないから」「現代っ子なめるなー!」「奇跡は起きないからこそ奇跡」「競馬もパチンコも宝くじもしょせん当たらない……」「終わりだー!」


 ざわざわと騒ぐB組の連中をあえて無視して、俺は教壇の上で『フレア』のやり方を教え始めた。

 






***







 荒田学園、放課後のグラウンド。

 そこそこ広いそのグラウンドでは、かきぃん! と乾いた音と一緒に、ソフト部が「しまっていこー!」みたいな黄色い掛け声をあげていた。


 うむ、癒されるねぇ。

 若いもんはええのぅ……みたいなじいちゃんみたいな気持ちでいたら


 ピッチャーがいきなり暴投を投げてきた。


「おいおい」


 打席とは90度ほど違う場所にいた俺に向かって、ぐおおおお! とボールが飛んできていた。

 俺は急いでそのボールを避けようとしたが、後ろは教室のガラス窓だったことに気づき、思いなおす。


 パシィッ!


 宝剣の肉体強化能力を使って、俺は推定100kmぐらいのボールを受け止めた。

 顔面間近。あぶねー。


「めんごめんご!」


 まるで悪びれていない様子で、暴投を投げた張本人、今井麻衣がこちらにやってきた。


「あぶねーな。どんな暴投だ?」

「まぁ、わざとだしね」

「わざとかい」

「ちょっとアンタに用があってね」

「断る」

「とりあえず後30分ぐらいで終わるから、部活が終わるまで待ってて」

「いや、断るって」

「待っててくれたら……」


 そう言うと今井は懐からバッ! と携帯電話(ボールペン型)を取り出した。


「本邦初公開! マッキー(八巻)の生着替え画像をプレゼンただだだあああ!」


 いつの間にか後ろにいた八巻に頭をぐりぐりされる今井。


「いーつの間にそんなもの撮っちゃってるのかなー? 麻衣ちゃんは?」

「ごめいだだだだついああああああ!」


 今井の悲痛な叫びがグラウンドに響いた。







***







 今井を待つつもりは毛ほども無かったし事実そのまま帰っていたら、遠くから「すいません頭痛いので早引きします―――!」との叫び声が聞こえ、1分もしないうちに、今井が息を切らせながらこちらにやって来た。


「はぁ……はぁ……本気で帰ること………無いじゃない」

「本気で帰るに決まってるだろ」


 何を当たり前のことを。


「レディを待とうという優しさは………………………無いよね、魔ーには」

「なんだその憐れみに満ちた笑顔は」


 何か悲しくなるだろ?


「まぁいいわ。あんたに頼みたいことはね。魔法を教えて欲しいの」

「は?」


 俺は聞き間違いかと思って聞き返す。


「だから、さっき魔ーが教えてたでしょ。『フレア』の魔法。よくわからなかったから、あれをもう一1度教えてって言ってるの」

「………もしかして、本当に1週間でフレアを覚えるつもりか?」

「そうよ。文句あるの?」

「いや。悪いこと言わんからやめとけって」

「やってみなきゃ分からないでしょ?」

「無理だよ。お前そんなに才能ないから」

「……………!」


 一瞬、傷ついたような、悲しそうな顔を見せる。


「な、なんでアンタにそんなことが分かるのよ」

「今まで桃ちゃんの訓練を受けて、どうだった?」

「苦しかったけど、最後までやりとげてるわよ、アタシは」

「それはご立派だが、じゃあ最初の頃と比べてどうだ?」


 俺は険しい顔をしている今井を見据えた。


「だんだん苦しくなって来てるんじゃないのか?」

「……………」


 顔を伏せる。何も言わないが、表情が物語っていた。


「桃ちゃんの訓練の量は確かに無茶苦茶だが、それでも基本的な練習量は最初の頃から変わってない。なのに日が続くにつれ苦しくなって来てるってことは、それだけお前の魔力が回復できてないってことだ」


 魔法使いとして必須の才能とは、とか言えばきりがないが、あえて言うならば魔力の総量と回復力だ。

 今井にはこの二つとも並くらいしかない。


「アタシの魔法使いとしての素質が、大したことないっていうの?」

「悪いってほどじゃないがな。見たところお前の才能は平均ぐらいだろう。だが、短期間で『フレア』を覚えるまでは至らない。無駄な努力はするな」

「…………………………」


 しばらく、沈黙の時間が流れる。

 まあ今井には少々きついだろうが、現実を知るのも大切だし。


「………おあいにくさま」

「あ?」


 見ると、今井は開き直ったような表情をしていた。


「アタシの才能がどれだけあるか、それはアタシが決めることよ!」

「いや、だからな……」 

「アンタに決め付けられるいわれはないわね!」

「………空元気」

「あっはっは! 聞こえないなー!」


 さっきより大またで、俺の前を歩いた。


「………夢だから」

「夢?」

「アタシはね!」


 くるりとこちらに振りかえると、胸一杯に空気を吸い込んだ。


「世界一の魔法使いになるんだからああああああ!」

「………!」   


 な、なんつー馬鹿でかい声だ。

 茜色に染まる空に、今井の声がこだまする。

 今井は妙にすっきりした顔を見していた。


「さあさあ、そうと分かれば麻衣ちゃんに魔法を教えなさいな! 可及的速やかに! 意義は認めないよ!」

「……………………」 


 無理だと思うが。

 ………………ま、いっか。

 教えるだけならそんなに面倒じゃないし。


「ふぅ………いいか。まずは手のひらに魔力を集中させろ」

「ふむふむ………………どうやって?」

「おい………」


 頭痛がしてきた。


「桃ちゃんとの特訓で感じなかったか? 体力の限界が来たって感じたときに、身体の底から涌き出てくる力みたいなものを」

「あー、そういえばあったような、なかったような」

「………まぁとりあえず、それが魔力だ。その力の流れを意識して手のひらに集めるんだ」

「ほうほう………」


 目を瞑って、パッと見集中しているように見える今井。

 だが………


「………………どう、集まってる?」

「むしろ拡散してる」

「ええええ!」

「もっと落ち着け。テンパりすぎだ」


 まぁ、そう簡単に魔力のコントロールができれば苦労はしないが。


「魔力のコントロールは、残念なことに人によってどうコントロールするかは異なる」


 俺は目を閉じて集中している今井に言った。


「何度か死にかけて、魔力を感じて、そこから少しずつその流れを掴み支配するようにするしかない。ガンバレ」

「………………へちゃああ」


 意味不明なうめき声をあげながら、それでも何回でもトライしようとする今井だった。







***







 それから1週間は、いつも通り………地獄だった。

 たまに補助科E組の飯田千恵や保健医山本修平(♂)が来て回復呪文をかけてくれたが、回復呪文で体力は回復できても、魔力は自然に回復されるのを待つしかない。

 今井も相変わらず魔力コントロールのコツが掴めず、あたふたしていた。

 …………B組生徒の中で何人が『フレア』の習得に挑戦できたんだろうな。

 そして4月も中旬に入り、桜も散りだしたころ。 


 授業そっちのけで2年A組とB組の模擬戦が始まる。










予定していたストーリーから段々ズレてきました。どう修正しようか、頭を悩ませてます。

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