表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パニカル!  作者: タナカ
PR
69/98

つかの間の平穏





 4月もそろそろ終わりが近づいてきた。

 相変わらず俺たちは「ふぁいと〜!」と可愛い声で死刑執行を告げる桃ちゃんの指導の元、毎日毎日特訓をしてきたわけだが………


「………ここんとこ、な〜んか平和だよな〜」


 昼休みのざわざわと騒がしい、いつも通りの教室。

 俺、洋太、黒部、沢木(弟)と男共で囲んで弁当をつついてる時に、洋太がそう言った。 


「そうか?」


 俺はむぐむぐとエビフライをパクつきながら、そう生返事した。

 うむ。相変わらず野原さんのメシはうまい。


「そうだよ!」


 ダンッ! と洋太は机を叩いた。


「この前まで試合とか侵入者とかあんなにピリピリしてたのに! 何この平穏!」

「いいんじゃないッスか、隊長」


 ここ最近ずっとなぜか洋太を隊長と呼ぶ沢木が、カレーパンをかじりながら言った。


「モンスターに襲われるよりよっぽどマシだと思うッスけど?」

「…………………それに下手したら大怪我だけじゃすまない」


 沢木の意見に、握り飯を食べていた黒部がぼそりと追随した。


「そうだけど! そうなんだけど!」


 しかしなおも拳を振り上げ力説する洋太。


「なんちゅうかな! 不謹慎とわかっててもあえていいたい!」


 ガンッ! と今度は机の上に脚を乗せてまで洋太は力説した。


「平穏! つまんない!」

「机の上に脚を置くな」


 弁当の目の前に、お前の汚い足が見えるじゃないか。


「おわっ!」


 俺は軽く洋太の足をはらい上げる。

 すると、当然のごとくバランスを崩した洋太はそのまま後ろへ………


「おわっ! ちょっと隊長――!?」


 どんがらがっしゃーん! 

 洋太は後ろで食事していた男子連中まで巻き込んで、盛大にこけた。

 あーあ。


「………………なむあみだぶつ」

「うむ」


 ちーん。

 俺は黒部と一緒に洋太たちに黙祷をささげた。 














 午後、魔法薬学の時間である。

 理科室のような薄暗い空間である『魔法薬実験室』で、俺たちは普段どおりの授業を受けていた。


「うふふふふ………マ〜ンドラゴラの葉はですね! 貴重ですがひっじょ〜にエクセレントですよお!」


 ………と、教師の頭のネジが2,3本ぶっとんではいたが。

 ま、いつものことではある。


「うひゅひゅひゅ………いいですか。こうしてマンドラゴラの葉を混ぜるだけで、何の変哲もないネギがほぅら!」


 ぼぅん!


「見事食人植物にいいいいい!!」

「キシャアアアアアア!!」

「ちょ、先生! これ本気で危ないですって」

「アヒャヒャヒャヒャ!!」 

「先生――――!」


 ………てな感じであいも変わらずパニカルな授業ではあるのだが。


「………平和だ」


 キシャ〜! と身をくねらせ暴れ狂う食人植物。それを止めようとした八巻の阿鼻叫喚を聞きながら、俺はぼけ〜っと空を見た。


 ……ほんの少しだが洋太が叫んでいたことが、なんとなくわかるような気がする。

 洋太みたいに平穏つまんない、とかそんなことを言うつもりは毛頭ない。

 むしろ俺は騒がしいトラブルより静かな日常の方が断然好きだ。

 ………好きなのだが。

 ………なんだろう。

 

 一時期学園を騒がせた侵入者も、最初に学園に侵入した時以来1つもアクションを見せておらず、テロっぽい事件やトラブルも何もないまま………

 だんだんと学園は沈静化していた。

 桜は散り、外を見上げるとチュンチュンと雀の元気なさえずりが聞こえる。

 空は青く、春眠暁を覚えず、という(ことわざ)を思い切り実感させるような、ぽかぽかとした天気。

 セキュリティが強化されたらしく、たまに警備員が学園をうろついているのが見かけられるが………それを加えても。

 静かだ。

 平和なのはいいことなのだが………………


「………………不安だ」


 俺が呟いたその言葉は、4月末の済んだ空に溶けて消えていった。












 魔ーの漠然とした不安を余所(よそ)に、数日後には。

 4月末のクラス対抗模擬戦闘。

 籠城戦が始まろうとしている。 






うふふ……その通りだよ魔ー。

パニカルに平穏なんてあるわけないじゃないですか!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ