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パニカル!  作者: タナカ
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それぞれの合否




「…………………」

 

 目を瞑り、意識を周囲に集中させてから、1分、2分……と時間が過ぎていく。

 空には雲1つないし時計もないから、時間の流れなどほとんどわからないが。

 ……俺にはめちゃくちゃ長く感じた。


「………あかん」


 ……俺は目を開けると、あっさり諦めた。

 物音が1つもしないのだ。

 空、白い家、土、地平線………ここに誰か住んでいてもおかしくないぐらいなのに。

 ……本気で1つも物音がしない。

 ………っていうか敵がいるはずなのに。殺気の1つもない。


「………ぎーぶあーっぷ」


 俺はごろん、と土の上に寝っ転がった。

 冷たくもなく熱くもない地面が、砂埃もあげずに俺の背中にあった。


「………………」


 ………ああ。空がどぶ川みたいな緑色で、不気味だ。


「………………ん?」


 あれ?

 しばらく見ていると、俺は空の異変に気づいた。

 ……………変だ。

 いや、空が緑色な時点でもともと変なのだが……… 

 何か緑色がさっきよりすっきりしてるというか………青空に近くなっているというか………


「………なんだ?」


 天変地異……? じゃないよな、もちろん。

 ここって、桃ちゃんが作り出した異世界空間らしいし。

 首をかしげていると、空はまた緑色に変わっていった。

 よくよく見ると、ただの緑色ではなく、たまに青になったりして微妙に変化している。


「………変な空間だ」


 ………んで?


「こっちが隙丸出しで寝ころんでたのに、な〜んで攻撃してこないかな」


 俺は身体を起こし周囲を見渡しながら、そう独りごちた。

 ……ま、これは実践じゃなくて鬼ごっこみたいなモノだから、敵が襲ってこなくても当たり前なのだが。

 が、ここまで隙をさらしているにもかかわらず、敵らしい気配が1つもないのは本気でおかしい。


「……本気でわけがわからん空間だ」


 視線の先には簡素な白い家があり、そこの入り口にはぼけ〜っと俺の偽物が突っ立っていた。


「………ま、いいや」


 人間諦めが肝心。

 もう手は出尽くしたし、相手が攻撃してこないんならぶっちゃけどうしようもない。


「ふぁ〜………」


 寝よ。

 そう結論づけると、俺は目を閉じて眠った。

 マジで。














 ――― 八巻枝理 SIDE ―――   


「………………!」


 見つけた!

 少しだけだけど、私以外の魔力の波動。

 私は地平線に向かって全速力で走る。

 そして、4つ目の白い家の…………………

 角!! 


「そこっ!」

「ヒィッ!」


 大きな家と家の間の小さな路地の中に隠れるようにして、小さく白い、透明人間が白い布を被っているようなひらひらした物体がそこにあった。

 ………こいつだ!


「覚悟!!」

「ピギャアアアア!!」


 布ごとばっさり切ると、白い何かは断末魔と共に幻のように消えていった。

 ………あれ?

 私、敵をちゃんと倒したんだよね?

 あまりにも呆気ないので、そう不安になってきた時だった。


「ご〜かく〜!」

「………!?」


 空から声がしたので驚いて上を見ると、


「うわっ!?」

「………? どうしたんですか?」


 ………桃ちゃんが、スクリーンに映り出されているかのようにどす黒い緑色の空にドアップで写っていた。


「………なんでもないです」


 最近非常識なことが多いし、もうつっこんだら負けかもしれないと思ってる。


「それにしてもすごいですね〜! 一番乗りですよ〜!」

 

 こちらの葛藤も知らず、桃ちゃんはご機嫌で私にそう告げた。

  











 ――― 今井麻衣 SIDE ―――


「うあ〜!!」


 私は何度やっても消えていく敵との葛藤に、ほとほと困り果てていた。


「………困った」


 魔力の質を見ろという桃ちゃんの発言も意味不明だし。

 ………これ、魔ーのヤツは当然楽にクリアしてるんだろうな。

 ちくしょ〜! 

 

「負けてたまるか〜!!」

 

 私は空元気100%でルミナスの剣をがむしゃらに振り回す。


「ヴィガムディセルミア!!」


 時折『フレア』を出しながら。

 ………そして、しばらく経っただろうか。


「ぜぇ………ぜぇ………!!」


 何で〜!?

 見つからな〜い!!


「ヴィガムディセルミアあああありゃああああ!!」


 気合いでそこら中に『フレア』を乱発させる。

 ………その時だった。


「ミギャッ!?」

「………?」


 何か妙な声が建物の隅の方でした。

 何だろうと思いながら、建物と建物の間の暗がりに行ってみると………


「ん………?」


 何コレ?

 白い布?

 

 よくわからないので適当にそれを拾おうとすると、それは私が触れる直前にふっと消えてしまった。


「………?」


 何だったの?

 

「合格〜!」

「………!?」


 からんからん、とハンドベルの音と共にどこからか、桃ちゃんの大声が聞こえた。










……珍しく、魔ー。途方に暮れてます。

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