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パニカル!  作者: タナカ
63/98

桃ちゃんガッテム!

 

 翌日、朝のHRの時間帯の2−B教室。

 席に静かに座っている2−B全生徒に向かって、教壇の前で(背が届かないので台座を使って、だが)桃ちゃんが厳かに告げた。


「………みなさんも知っての通り、昨晩、我が2−B生徒たちを狙ったテロ行為が行われました」


 ………テロ? 

 言い過ぎでは?

 とか言う命知らずは、この場にはいなかった。


「みなさんがモンスターたちに襲われたのです!

 幸い彼らもそれほど強くなく、何名かの軽傷者が出た、という程度ですんだのですが………ですが!」


 バンッ! と教壇を叩く桃ちゃん。

 ……おー、こりゃ怖い。

 徹夜明けだろうに、元気だな桃ちゃん。


「………桃ちゃん、かなりキてるな」

「だな」


 後ろから洋太が話しかけて来たので、こっそり同意しといた。


「これは我が2−Bへの明らかな宣戦布告です!」


 拳を天高く握りしめ吠える桃ちゃん。


「屈してなるものですか! みなさん! あのような卑劣な者に後れをとらないよう、訓練もビシバシやるので覚悟してくださいね!」

『お、お〜………』


 今でも一杯一杯な生徒たちが、元気なさげに答えた。


「………ところで西村先生」

「なんですか? 枝理ちゃん」


 度胸の良い八巻が、手をあげて質問した。


「犯人の目星はついてるんですか?」

「………………」


 沈黙する桃ちゃん。


「それらしき犯人は捕まえて、一応尋問しているのですが………」


 それらしき犯人……昨日俺が捕まえた侵入者のことだな。


「………何も知らないみたいですし、それ以上の犯人の手がかりは今のところありません。正直に言って、ゼロに近い状態です」


 で・す・か・ら! と桃ちゃんは声を張り上げた。


「いつあんな敵が現れてもいいように! 特訓です! みなさん!」

『………………』


 もはや声もあがらなくなった2−B生徒たちだった。













「本当に並じゃなかった………………がくっ」

「………まー確かに」


 午前中のグラウンドには、2−B生徒たちの屍が山のようにあった。 

 今は特訓と特訓の合間の休憩時間である。

 生徒たちはいつもなら水を飲みに行ったりするのだが、今日はその元気もなくみな地面に突っ伏してだらりとしていた。


「気合いの入れ方が半端なかったからな」

「………まぁ、けど仕方ないのかもね。この特訓してないと、昨日のモンスターたちにも勝てなかっただろうし」


 壁に寄りかかったまま、息切れしている委員長がそう言った。


「そういや、委員長のところはどんなモンスターが来たんだ?」

「カマイタチ、ってヤツだったのかな。イタチの姿をしていてね、風の攻撃をしてきた」


 ………捕まえたらすごく便利そうなモンスターだな。

 かわいいし。


「………ちなみに、そいつ倒した後どうしたんだ?」

「……? 西村先生が引き取ってくれたよ? 先生、1人1人の生徒の家に訪問してくれていたみたいでね」

「へー……」


 んなことしてたのか。マメだな、桃ちゃん。


「………ちょっと待ってください」


 汗を拭いていた桃ちゃんが、こちらの話を聞きつけてやってきた。


「それ、本当ですか、委員長」

「………? 本当です、というか西村先生がしてくれたんじゃないんですか」

「………………私はそんなことしてませんよ」

「「はいっ?」」


 俺と委員長の声が重なる。


「私はあの後学園での後処理に追われてましたから、みなさんの安否は電話で確認するのみに止めていました。まーくんにも昨日は電話しましたよね?」

「ええ」

「委員長にも電話したはずですが……」

「あ、はい。………さっき訪問したのに安否確認してくるのは少し変かな、とは思ったのですが………」 


 委員長が戸惑いながらそういうと、桃ちゃんが下を向いて考え出した。


「ちょっとみなさん! 集合してください!」


 桃ちゃんのかけ声で、思い思いに休憩していた生徒たちが集まる。

 集合して座り込んだ生徒たちを前に、桃ちゃんが緊迫した表情で言った。


「みなさんにお聞きしますが、昨日私が家を訪問した、という方はどれほどいらっしゃいますか?」


 桃ちゃんがそう聞くと、なんとびっくり。

 俺、今井、八巻以外のほとんどの生徒たちが手を挙げた。


「………………してやられました」


 桃ちゃんはうつむき両拳を握りしめる。


 ゴゴゴゴゴゴゴ………


『………………』


 その姿、まさに鬼神のごとし。


「……モンスターの回収が目的でしょうね。人の姿を無断で使うとは………

 みなさん!」


『はいっ!』


 桃ちゃんの大声に、生徒たちがはじかれたように声をあげた。


「予定変更です!」






やっぱり強くなるには修行が必要ですよね! 少年漫画じゃないんですけど!


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