さらにオオカミが………
突然出てきたドクロは殴って沈黙させたからいいとして。
「………さて」
ぼろぼろの布切れを着たドクロは、頬の骨が欠けてその場でぐったりしているのだが………
「………これ、ほっとくわけにもいかねぇよなあ」
学園の中にモンスターが出ることは、生徒がモンスターを召還したりすることがあるから、たまにある。
前のフラグ争奪戦の時の、姫野杏子が出したソル鳥がいい例だ。
が、こうして町中でモンスターに会うことは滅多にない。
あってはならないことである。
一般人がモンスターに会ったら、シャレではすまないからだ。
「………さて、どーするか」
ほっとくわけにもいかないし、だからといってどう処理していいかわからない。
………だったら、専門家に聞くのが1番だろう。
てなわけで、とりあえず桃ちゃんに連絡するか。
俺はボタンについている超小型携帯電話で桃ちゃんと連絡を取ろうとしたが………
ぷーっ、ぷーっ、ぷーっ………
「……あれ、出ないな」
通話中かな?
……ま、いっか。寮に帰れば野原さんがいるし。
俺は携帯をしまうと、カクリとなっているドクロを見下ろした。
とりあえずこいつを寮まで引きずって帰るか。
そう決めると、俺はドクロの頭をわしづかみにして、
ズリズリ………
そのまま引きずっていった。
………ドクロはやっぱり、軽かった。
パリィンッ!
「は………?」
学生寮の目の前の庭。
ドクロを引きずりながらそこにたどり着いた瞬間、いきなりガラスの破片が上から降ってきた。
ガバッ!
俺は迷わず持っていたドクロで、パラパラと降る破片の雨を受けきった。
が………
直後。
ドゴガッ!
「うおっ!」
ドクロに遮られて見えなかったが、いきなり重量のあるものが上から降ってきた。
それも2つ。
俺はいきなりのその重みにさすがに耐えられず、ぺしゃりとその場につぶれた。
地面とキスしたじゃねぇかこの野郎!
何が何だかわからんが………
俺はのしかかっている重い物体から這い出ると、ゆらりと立ち上がった。
「あれ?」
寮から、紺のブラウスにスカートという簡素な姿の今井が出てきた。
「………魔ー? アンタいつの間に」
「死ねや―――!」
「え………きゃ―――!」
もう一度死闘を繰り広げる俺だった。
どうやら今井たちもモンスターに襲われたらしく、2階でそいつらを窓までぶっ飛ばした時、ちょうど俺が下にいた、というだけのことだったらしい。
「………何だったんでしょうね?」
「さあ?」
庭の隅で目を回している狼男×2(さっき俺の上に降ってきたモンスター)とドクロを見ながら、俺と八巻は首を傾げた。
「………何よ、いきなり襲いかかってくるなんて、変態」
「ま、まあまあ………」
今井が野原さんの手当を受けながら思いっきり頬を膨らませているが、無視する。
その時、ボタンについている超小型携帯電話がぷるるる……と鳴りだした。
「はい?」
「あ、まーくんですか!」
電話に出ると、桃ちゃんの焦った声が聞こえた。
「俺ですけど……」
「襲われたりしてませんか!? 怪我ありませんか!? 大丈夫ですか!?」
「………変なモンスターに襲われましたが、怪我もせず適当に倒しましたよ。寮のみんなも無事です」
桃ちゃんの勢いに若干押されながらも、俺はそう答えた。
「そうですか………あー、よかった………」
電話口で、桃ちゃんがふぃ〜、っと息をはいた。
「……どうしたんですか?」
「実はですね。
私のクラスの生徒たちが次々に襲われてるんですよ!」
「………へー」
そりゃ大変だ。
「………反応薄いですね。まぁ予想はしてましたが。
とにかく!
洋太くん、佐藤くん、田沼くん、晴美ちゃんとか、私が知る限りでもすでに10人以上の人が襲われてるんです! 共通項は私のクラスの生徒、ってだけで!」
ガッテム! みたいな感じで声を強める桃ちゃん。
………ふむ。
だったら桃ちゃんへの逆恨み、みたいなものかな?
「学園で取り逃がした侵入者の仕業じゃないですか?」
「……私もそう思うんですが」
「捕まえた男は何かしゃべらなかったんですか?」
「………拷問にはかけましたよ」
拷問て、おい。
「ですがこの件に関しては本当に何も知らないみたいなんです。ですから今、とにかく生徒たちに片っ端から電話をかけて注意を呼びかけてるんですが………」
「ま、大丈夫じゃないですか?」
俺は気楽に答えた。
「襲ってきたモンスターの強さも大したことありませんでしたし、B組の連中は頑丈だからあれぐらいどってことないと思いますよ」
「だといいんですが………」
桃ちゃんはう〜ん、と唸った。
………オオカミ男VS今井、八巻のシーンは書くの面倒なので、というか書くまでもなく一瞬なので省略します。