カタカタ……
「………………」
………ここは、どこだろう。
暗い。月明かりも、ない。
真っ暗だ。
ほとんど何も見えない。
………そもそも、自分はなぜこんなところにいるのだろうか?
さわさわと、風と共に葉がこすれる音がする。
………森の中だろうか?
「………何だろ」
ぽつりと呟いた言葉が、風に乗って消えていく。
………………怖い。
なんだか、怖い。
ここにいてはいけない。
そう自分の中で危険信号が出ている。
行かなきゃ。
「………逃げなきゃ」
………けど、どこに?
ここがどこかもわからないのだ。
どう動けばいいのか、それすらわからない。
……途方にくれている、その時だった。
ガサッ………
「………!!」
夜中、道路にはまばらに車が行き来しているが、店はほとんどが閉まっており、基本的に周囲は暗い。
寮から出た俺は、そんな静かな道をゆっくり歩いていた。
………いってきます、か。
野原さんに言った言葉を思い出しながら、俺は少し頬を緩ませた。
「………意外と嬉しいもんだな」
ガラにもないと思いながら、俺は照れくさくなって頬をかいた。
「………そんなこと言う相手、いなかったからなぁ」
手を後ろに組むと、寒さに身を震わせた。
『あなたには、家族なんていないでしょ?』
いつぞやどこぞのクソ悪魔に言われたことを思い出す。
その通りだ。俺には家族がいない。
どこかにいるのかもしれないが、それすらわからない。
………俺には、家族というものの記憶がないからだ。
1番新しい記憶が、よくわからない森の中にぽつんと突っ立っているところだった。
あの時は10才ぐらいで、どうしてあの森にいたのか、あそこがどんな所なのか、そもそも自分は誰なのか。
何もわからなかったし、今もよくわからない。
とにかく桃ちゃんに助けてもらうまで、俺はあそこで生活した。
いや〜、よく生きていたものだと、今でも思う。
モンスターは出るわ何か周り暗すぎるわ無駄に広いわで、もう疲れること限りない場所だったからな。
もう1度体験しろと言われたら、間違いなく全力で拒否する。
………ま、だからどうしたと言われればそれまでの経験なわけだが。
「………さて」
まだ肌寒い夜の道を、俺は星空を見上げながら歩いた。
普通に自販機でジュース買うだけなので、適当に歩いて行きつけの自販機を見つける。
その前に立ち止まった。
「あー寒」
一応ウインドブレイカーを着てはいるが、それでも寒いものは寒い。
暖かいホットレモンでも飲もうかな〜、と思いながら俺はポケットから財布を取り出し、小銭を出そうとして………
………キィン
「………!」
耳鳴りと同時に、悪寒に襲われた。
………なんだ?
バッと周囲を見渡す。
………サァッ
一陣の風が吹く。
ケタケタケタケタ………
「………………」
不気味な笑い声が聞こえた。
………どこからだ?
周囲を注意深く見渡す。
「ケケケ………!」
「………!」
後ろから声が聞こえた。
すぐに後ろを振り向くが、そこには誰もいない。
そして前を向いた瞬間。
「………………」
「………………」
………ドクロと目があった。
カタカタカタ!
アゴをカクカクと動かすドクロ。
「…………で?」
「………………」
ドクロ、無言。
………ふむふむ。なるほど。
「殴られたいと」
「…………!!」
カタカタと必死でドクロは身体を動かしたが。
ゴスッ!
俺はそいつに向かって、容赦なく拳を振り上げた。
………どうでもいいですけど、今日めちゃくちゃ寒くないですか? 私は寒くてキーボードがうまく打てなくて困りました。