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パニカル!  作者: タナカ
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解答編?




「……さて」


 湊が今井の部屋に言っている間に、俺も自分の部屋で考えを巡らせた。

 鍵を偽物とすり替えたのは誰か。

 単純に考えて、職員室にある鍵のすり替えができるのは教員ぐらいだ。

 ……ということは、犯人は教員の中にいるということだ。

 そして俺が目撃した犯人の身長が180cmぐらいだったことをふまえると。


「魔法薬学の久光か、魔法文学の是沢か、魔法法律学の梅田か、魔法社会学の川瀬………」


 ………あかん。該当する先生多すぎ。

 俺はベッドに寝っ転がって天井を見ながら考えた。

 ………あ、虫の死骸発見。

 ………じゃなくて、だ。

 もっと冷静になって考えてみよう。


「あの鍵が最後に使われたのは先週の金曜日、桃ちゃんが使ったので最後だ」


 そっから3日後の今日まで、あの鍵に触ったやつは恐らく犯人以外誰もいない。

 ……ということは。

 土日に職員室を使ったやつが怪しい?


「……極論な上に、それが誰かなんてわからんっつーの」   


 ………あかん。これもダメだ。

 だったら動機の線からせめてみるか。


「………だが犯人、何も盗ってなかったんだよな」


 あくまで監視カメラから見た結果、だが。

 ……いやいや。もしかしたら何か盗られていたと仮定して。


「久光は貴重な薬の材料が欲しいのかもしれないし、是沢ならあの中の書類で何か欲しいのがあったのかもしれないし………」


 ……考えれば考えるほど、思考が泥沼にはまってる気がする。


「………ストップ」


 動機の線で考えるのはやめよう。頭が痛くなりそうだ。

 ………ていうか手がかりが俺のうろ覚えの証言だけって少なくない?


 バンッ!


「おーい! まーやーん!」


 湊が勢いよくドアを開けた。 


「えかった〜! まいまいの部屋女の子っぽくてもすっごいえかった〜! 堪能したで〜! ぬいぐるみなんか出た日にはあれやん!? 思わず抱きついてもしゃーあらへんよな!?」


 恍惚とした表情で湊はそう言った。


「それに比べてまーやんはあかんなー。物が少ないやん、男ならエロ本の1つでも隠し持ってみい!」


 ぐるっと俺の部屋を見渡した後、湊はベッドの下を探り出した。

 ………当然、何も出てこない。


「くあー! つまらん! つまらなすぎや!」

「ほっとけ。お前のごちゃごちゃしてる部屋よりマシだ」

「ぶーぶー!」


 口をとがらせて不満げな表情の湊。


「てかお前、何しに今井の部屋に行ったんだよ」


 盗難事件についての今井の考えを聞くためじゃなかったのか?


「あ、そやそや」


 忘れとったー! と言いながら湊は腰に手を当てた。


「くっくっく、まーやん!」


 湊は自信満々でこう言い放った。


「犯人はこの学園の生徒の誰かや! そいつは巧妙なトリックを使(つこ)うて鍵をすり替えたんや!」


 ………教員じゃなくて、犯人生徒かよ。


「あのな。職員室には先生らがいるんだから、安易に鍵は盗めな………」


「ふっふっふ。甘いなまーやん。鉄壁の職員たちの監視にも、欠点があったんや!」


 どばーん! とやはり自信の崩れない湊。


「夜! 職員の人たちも夜中には帰るわな! その瞬間や! 職員室が無防備になるんは!」

「ああ……うん。その代わり職員室密室だがな」


 入れないだろうが。 


「ふふふっ、まーやん。こんな経験ないか?」


 無意味に哀愁を漂わせた様子で言う。


「閉店間際のデパート。買い物とかトイレとかでおろおろしとったらいつの間にか閉店時間過ぎてもーて、そしてふっと明かりが消えるんや………あれは恐怖やで」


 妙に実感がこもってるが………まさか、経験済みじゃないだろうな、湊。


「………とにかく! それと同じことをしたんや! 犯人はな! 失礼しまーすとか言いながら何気なく職員室に入った後! 先生たちが帰ってくるまで職員室内のどこかに隠れとったんや!」


 そして! 放課後になり先生たちが帰ると鍵を盗み、よく似た偽物とすり替えた犯人は窓から悠々と立ち去ったわけや! てな感じで犯人像を語る湊。


「ふぅむ。わかったよ湊くん。見事な推理だ」

「そやろ?」 


 迷探偵は得意顔だ。

 ………だが。


「けどな湊。お前は大きな勘違いをしているんだよ」

「へ………?」


 俺はベッドから立ち上がると、湊に向かってデコピンした。


「あだっ!」


 おでこを押さえ微妙に涙目になる湊。


「俺も少し考えたんだがな。『鍵をすり替えるのは教員しかできない』って前提があったから、俺は教員たち限定で容疑者をしぼってたんだ」

「え? ………ちゅーことは、あ………」


 気づいたらしい湊は、決まり悪そうに頬をかいた。


「つまり、ウチらの推理通りなら………」

「そう。お前らの推理通りなら、犯人は教員以外にも可能性がある、つまり容疑者が教員全員から、この学園にいる人全てに広がっちまったってことだよ」

「………あー」


 荒田学園の生徒は、大学も含めて2万人弱。

 ………2万人からどうやって探せと?


「あはは………ま、まあその、なんや………………謎は深まりました?」

「アホ」


 俺はそう言いながら、湊を部屋から蹴り出した。 

 ………けどま、よく考えたら職員室に放置されてる鍵なんてその気になれば誰でも盗めるわな。

 俺は湊を部屋から追い出した後、そう結論づけて推理を諦めた。


 かくして荒田学園密室サスペンス(?)は『全員犯行可能』という、どーやって犯人を絞り込めと? と叫びたくなる結果を残して終わった。








拍子抜けした人挙手 ( ̄▽ ̄)ノ

……まあ、現実はこんなものです。推理モノの犯人は、変にトリックとか使うから捕まるんだ!

………すみません、次回きっちり真相を書きます。(たぶん)

ところで。パニカル掲載50回記念です!

ですが、記念に何かイラストでも書くのは……ちょっち後になりそうです。最近ちょっと時間がないもので。

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